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俺の弟ノアは、顔は可愛いくせに言うことが結構きつい。「マリアンナ姉さんがケインさんと婚約して良かった!これでマリアンナ姉さんの未来は安泰だね!」とか。お前それ俺がケイチーと婚約しなかったら俺の未来は安泰じゃねえってことだよな?オリヴィア姉さんに対しては甘いのに、俺に対してはひどいんだこいつは。
そもそもこいつオリヴィア姉さんを神聖視してるしな。オリヴィア姉さんの使った布きれを自分の部屋に大事に取っておいているのを知った時は流石に俺もビビった。
だがまあ、悪い奴ではないし、貴族としての言動も心得ている。
そのノアが、だ。
ヒロインちゃんに対して、ガチで引いている。
「あ!マリアンナ姉さん!」
俺に気付いたノアは、ぱあっと顔を明るくした。こういうところはオリヴィア姉さんに似て可愛いのになぁ...。
「え!?マリアンナさんの弟さんだったの!?」
ヒロインちゃんは驚いている。そりゃあ、俺とノアは似てないもんな。俺は金髪だけどノアは銀髪だし。ケイチーに聞いたところによると、ゲームのノアが唯一嫌っているのがこの俺で、俺の話をする時だけは険しい顔になるらしい。それ以外は可愛くて癒されるそうだ。
現実のノアは癒し系じゃねえんだけどな...。俺をそこまで嫌ってはいないと思うし。
「ノア、貴方一体何をしているの?(何かあったん?)」
「前に言ったでしょ、ボク、時々学園に来るって」
「...え、ええ、そうだったわね(そんなん言ってたっけか...?)」
「...絶対忘れてたでしょ。別にいいけどさ」
ノアは軽くため息を吐いた。いや違うんすよ、ど忘れしただけなんすよマジで。
「教員室に行こうとしたんだけど、迷って...この人に会ったの」
ノアはヒロインちゃんをちら見して、耳打ちしてきた。
「この人何なの?勢いが凄いんだけど、怖いよ。姉さんの友達なの?」
友達...うーん、どうだろな。
「クラスが一緒なのよ」
「ああ...」
何故か納得したようにノアは頷き、ヒロインちゃんに向かい合う。
「じゃあボク、マリアンナ姉さんに案内してもらうので。どうもありがとうございました」
「え?私も付き合うよ?」
「何でだよ」
だからノアお前ツッコミのキレはいいけど先輩の女の子相手にそれは。
「だって、頼まれたことは最後までやり遂げないと!」
「頼んでないよ!最初は確かに頼んだかもしれないけど今はもう姉さんがいるからいいんですありがとうございました!!」
「でも...」
「でもじゃない!さよなら!行くよ姉さん!」
「え、ええ...(じゃ、じゃあまたなヒロインちゃん!)」
名残惜しそうなヒロインちゃんを置いて、俺とノアは中庭近くの渡り廊下を離れた。
...俺の運動途中だったのに。また後で頑張ろう。
「あの人って、貴族じゃないよね?」
「ええ、特別枠の生徒よ」
「...来年あの人が先輩になるの...嫌だなあ...」
歩きながらどんよりしているノア。そこまでかよ。
「だってあの人さ...ボクの顔を見た途端にこっちに走って来たんだよ?怖いよ...」
あー...まあそれはしょうがない。だってお前美少年だし。
そうこうしてるうちに、教員室が見えてきた。
「ノア、教員室に着いたわよ」
「ああ、ありがとうねマリアンナ姉さん」
「...ねえ、ノア」
「何?」
「オリヴィアお姉様と...お父様、お母様は変わりないかしら?」
「うん、皆元気だよ。オリヴィア姉様は色々忙しいし。ただ母様は姉さんがいなくて寂しそうだけどね。この前の食事の時なんか「マリアンナ、ちゃんと量を考えて食べるのよ...あっ」って言っててさ」
「帰ります」
「ちょっマリアンナ姉さん!?」
「今すぐ家に帰るわ。そしてお母様を見て和むの!!オリヴィアお姉様を見て癒されるのよ!!」
「待って姉さん落ち着いて!」
そんな話聞いて落ち着いていられるかよ!!俺は帰る!マイホームに帰るんだーー!!
教員室の前で騒いだ俺達は、無事に、出てきた教師からなだめられ、落ち着きを取り戻した。
俺は長期の休みに入ったら何を差し置いてもすぐに家に帰ることを決意した。




