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29.5 アリス

コメント、ありがとうございます!


アリスのお話。本編15、17~22、25のアリス視点があります。

やっぱり長くなってしまいました。

 私は幼い時からお告げが聞こえます。

 誰がそうしているのかは分からない。でも、お告げは一度たりとも私を裏切ることはなかったの。

 お告げは、何かの行動をする直前の度に聞こえることもあれば、何日も聞こえないこともある。お告げが聞こえる時は大抵頭に微かに痛みが走って、頭の奥から誰か(女の人っぽい)の声が聞こえる。

 私は、物心つく前から、お告げの通りに行動してきました。だから、今ではお告げのない生活なんて、耐えられないと思う。

 それ程に、私はお告げに頼っている。



 私は周りの大人から天才だと持て囃されて育った。

 私は服屋の一人娘として生まれた。両親はごく普通の人間だった。ある時私は、両親も読めないような字を何の迷いもなく読んだ。お告げの通りに読んだだけだったんだけど、両親はそれに驚愕した。

 お告げのことは誰にも言っていない。自分だけの秘密なんて、誰しもが抱えているのだから。

 十四歳になった時、ある場所と時間を示すお告げが聞こえ、そこに向かった。そこには立派な服を着た男性がいた。男性が困っている問題を私は解決した。これもお告げの言う通りに動いた結果だ。

 男性は私に感心したようだった。その数日後、家に知らせが届いた。私が、貴族や王族ばかりが入る学園に、入学しろという内容だった。男性は学園の偉い人だった。実は、お告げによって既に、私が学園に入学するということは知っていた。

 両親はまるで自分のことのように喜び、は、しなかった。一人庶民な私が入って、大丈夫なのかと心配した。

 だけどもう一人、庶民なのに学園に入学する男の子(魔法使いで、第二王子エイデン様の右腕と呼ばれてる子だ)がいると知って、安心したみたいだった。

 そうして、私はお告げの通り、学園に入学することになった。

 それも当然といえば当然。お告げによると私がこの世界の主人公なのだから。私が読んできた物語でも、主人公はどんな敵が現れても、最後には勝つ。いわば主人公のために世界があるのです。私は主人公、この世界は私のためのものなの。



《その人を背中を押すのです、さあ早く!!》

 これまでにないお告げの荒ぶりようにちょっと怖がりつつ、私はその人(マーク君という)の背中を押した。

 その人は躓き、エイデン様に助けてもらっていた。

 今度はお告げも落ち着いて、私はケインという茶髪の人に向けて転ぶように言われた。

「全く、君みたいに可愛い人が転んで土に汚れてしまうなんて、勿体ない。受け止められて良かった」

 赤面しちゃった。貴族ってすごい...。

 自己紹介の後、慌ててその人の前から走り去る。

 その時、お告げがあった。

《あの人は、あなたのことが好きです》

 お告げは間違わない。そっか、あの人、私のこと好きなんだ!



「マリアンナさんのお庭には、サクラがあるんですか!?」

 マリアンナさんと、エイデン様、それとエリザベスさんの会話に割って入る。ちょっと怖いけど、お告げに間違いはない。

 エイデン様が私に答えてくれる。かっこいい...!

 私が過去にあった話をすると、エイデン様はエリザベスさんと話し始めた。仲良さそうですね。

《あの人は、あなたのことが好きです》

 あの人...エイデン様。第二王子に、私が好かれてる?

 私、そんなにモテるんだ!びっくり。でも、信じられないということはない。だってお告げは絶対だから。

「エイデン様は、その方と仲が良いんですね...!」

 ごめんなさいエリザベスさん。エイデン様は私が好きなんです。だからエリザベスさんはエイデン様とは結ばれませんよ。でも正直、略奪愛とかちょっと燃えます。頑張って。

 そんなこと考えてたら、ケインさんがマリアンナさんのほっぺに...きゃーーー!

 ケインさんに何か言われたけど、ごめんなさい聞いてませんでした。でも、将来私ケインさんにあんな素敵なことされるんだよね、顔が赤くなっちゃう!



《あの人は、あなたのことが好きです。好かれている人達には、平等に相手をしましょう》

 マーク君もなんだ。どうしよう、平等か...でも、大丈夫。だって私はお告げの通りに行動すればいいだけだから。

 と、ケインさんがやって来て、マーク君を連れて行った。マーク君に嫉妬しちゃったんですね。

「こんな所で何してるんだ、アリス」

 アイザック先生だ。

《あの人は、あなたのことが好きです》

 ええ?そんな、四人目?困っちゃう。

 先生のカツラが飛んでいってしまったけど、これはもしかして私を試してる?私が気遣いをちゃんと出来る人間かどうか?

 よし、急いで拾いにいこう!



 朝、皆に頑張って平等にしようと張り切って教室に行くと、ケインさんだけがいた。

「あ、そうだ、ケインさんって...」

 私のこと好きですよね?と確かめようとした時、ケインさんの名前を叫びながら教室に入って来たのが、赤い髪の先輩。ルイス先輩というらしい。

《あの人は、あなたのことが好きです》

 まただ。

 私、五人もの人から好かれてる!どうしよう、でもやっぱりお告げの通りにしないと。皆平等に。

 あれ、ケインさんとルイス先輩が何か喧嘩してる?もしかして、私を取り合って?ルイス先輩の勢いがすごい!

「この人のことどう思う?」

 ケインさんに聞かれ、私はまごつきながら正直に答える。

「えっと...ですね。ちょっと、怖い、かな...」

 だってルイス先輩がケインさんに怪我をさせそうな勢いなんだもの。私が原因で怪我なんてしてほしくない。

 私の発言を受けて、ルイス先輩は落ち着いてくれた。良かった...。



 その後、私はお告げに指定された場所時間欠かすことなく行った。私を好きな五人が、それぞれまるで計画されてたみたいにそこにいる。そこで私はそれぞれと会話などを楽しんだ。勿論私が何を言うのかもお告げ通りだ。

 ただ、ケインさんが時々意地悪なことを言うようになった。好意の裏返しなんだけど、ちょっと辛いかも。涙が出そうになることが結構あった。

 例えば、

「そんなことも知らないのか...今まで何をしてきたのかな?」

「何故私が君に関わる必要が?」

「ああ、私は君のことは好きではないぞ」

 など。

 辛いけど、ケインさんは素直じゃないだけ。頑張れ、私。





 友達が出来た。

 ジェイダっていう、違うクラスの女の子。

 この女の子は、真面目で、私のすることに色々言ってくる。

 でも、私を心配してくれる、優しい人。

 何だか、ジェイダさんと一緒にいる時の方が、私を好きな五人といる時よりも、楽しい気がする。

 だけどお告げに逆らうなんて、ありえない。そんなことをして、お告げが聞こえなくなったら私はどう生活すればいいか分からなくなってしまう。

 ほら、またお告げがあった。

 休み時間の教室で、マーク君と話せだって。

 私は、今日もお告げに従う。

アリスは今お告げに従って行動しているので、腹黒い訳ではありません。基本、よく知らない人から嫌味を言われても自分の中で良い方向に変化させて受け止める、自分の身の周りで起こることは全て主人公たる自分に都合のいいことだと信じている子です。


???「私はあと二回変身を残している」

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