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 食堂で、私とマリュンは一緒に昼食をとっていた。

 といってもエイデンとマーク、エリザベスも近くにいるから結局は五人で食べてるんだけどね。

 午後からも授業があるけど、昼休みが異常に長いから慌てる必要はない。

 そういう訳で、私は美味しい食事をゆっくりと堪能している。

 マリュンは、よく食べる。学園で食べるすなわち母親の目を気にしなくて済む、と宣言し、毎日たくさん食べている。それで太らないのっておかしいよね。聞いてみたらいっぱい動いているから平気だと真顔で言われた。あんた運動なんてしてないでしょうが。

 他の生徒に見られて恥ずかしくないのか聞いたら、空いた皿は私のところへ押しやって知らん顔してるからバレてないってまた真顔で言われた。別にいいけど真顔で言われると何か腹立つね。



 今日もマリュンの食べっぷりを身ながら食事を済ませていると、食堂の入り口の方から聞き覚えのある大きな声がした。

「聞きましたわよ!」

 食堂に入って来たのは、アリスと、そのアリスに何やら説教をしているジェイダだった。

「アリスさん!貴女またエイデン様にしつこくなさっていたとか!何回言えば理解してくれるのですか!」

「でも、私、皆に平等に接しているつもりだよ?」

「み、皆?」

「うん、エイデン様にマーク君にケインさんにルイス先輩にアイザック先生!」

「なっ...あ、貴女、それは止めた方がよろしいのではなくて?何人もの男性とお近づきになろうとするのは良くないと思うわよ」

「ええー、そうかなあ?」

 ちょっと、あんたら。注目集めてるよ、大丈夫?攻略対象共(マリュンの弟ノアを除く。まだ会ってないみたいだね)の名前を普通に挙げるアリスに女の子達の視線が刺さってるよ。

 ていうか、二人で食事の相談し始めたんだけど、アリスとジェイダは仲良くなったのかな?

 アリスのストッパーがいるのは心強いね。アリスがジェイダの話をちゃんと聞いてるか疑問だけど。

「アリスさんもジェイダさんも、可愛らしいですわね(ヒロインちゃんもジェイダちゃんも可愛いよなあ)」

「何だ、マリュン、ジェイダ嬢のことを知っていたのか(あんたジェイダと面識あったの?)」

「ええ、昔とあるパーティーで知り合いましたの(ジェイダちゃんは怖い話とかが苦手なんだぜ!)」

 何かこいつ、可愛い女の子の顔と名前とプロフィール網羅してる気がする。怖い。この前もこいつがメアリー(エリザベスに言い負けてた子だ)を見た時、「メアリーさんは素敵ですわね(メアリーちゃんはメンタル超強いんだよな!)」って言ってたし。怖い。

「あ!」

 ん?

 あっ、アリスが私達に気付いた。こっちに来る。その後をジェイダが慌てて追いかけてきた。

「エイデン様!マーク君、ケインさん!ご一緒させてください!」

 そうきたか。

「ちょっと、アリスさん!」

 ぎょっとしてジェイダがアリスの肩を叩き、焦ってマリュンを見た。

「マリアンナ様、申し訳ございません!」

「...私は構いませんわよ?(ヒロインちゃんとジェイダちゃん、カモン!)」

「えっ、でっ、ですが!」

「ベティはどう?(ベティちゃんが嫌なら俺は断るぞ)」

 馬鹿、この流れでエリザベスが断われる訳ないでしょうが。

「...違うよ、マリアンナ」

「えっ?(ベティちゃん...?)」

「私に聞く前に...ね」

「あ(忘れてたわ)」

 マリュンはエイデンに視線を向けた。そうだ、まだエイデンが返事してないわ。ジェイダはまずエイデンと話すべきだったかも。

「悪いが、アリス嬢。私はもう済ませたのでな」

 あっさり言うと、エイデンは席を立った。気まずそうな顔のマークもそれに続く。

 ここで私も続けばいいんだけど、残念ながらマリュンが食べ終わってないんだよね。

 結局、アリスとジェイダは別の席で食べることにして、エリザベスと私はマリュンの食事の終わりを待った。



 アリスは転生者なのかいまいち分かんないんだけど、どちらにしても私のすることは変わらない。

 私がマリュンの同意を得ずに婚約破棄なんてする訳ないから、アリスがどれだけ私を攻略しようとしても、私はアリスをからかって対処する。それだけだ。

 マリュン、大丈夫だと思うけど、あんたがアリスに攻略されちゃ駄目...うん、多分駄目だと思う。駄目だからね。

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