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コメント、ありがとうございます!
私って、もしかして運が悪いのかな。
そう思うのも仕方ない。だって、二日連続同じ場所時間でアリスが女の子に詰め寄られてるところに遭遇してるんだから。
昨日のジェイダと違うのは、アリスに詰め寄っているのは五、六人の同じクラスの女の子達だということ。
アリスも女の子達も、まだ私に気付いてない。
よし、帰ろうそうしよう。
くるりと方向転換した時、女の子達の、リーダーっぽい子(私ん家より格が高い侯爵家の娘だ。名前はメアリー)が冷ややかに言った。
「平民ごときが、エイデン様に近付くなんて、おこがましいにも程があるわ」
「そうよ!エイデン様に相応しいのは、こちらにおられるメアリー様なんだから!」
「貴女なんかがエイデン様と同じ教室にいることがまず腹立たしいわ!」
一気に喋り始めた。うん、女子って怖い。
「でも、エリザベスさんもエイデン様といつも一緒にいますよね?」
「......」
えっ、何。何か急に女の子達が黙り込んだんだけど。
「...あの伯爵家の令嬢にも、知らしめなければね。エイデン様に相応しいのは、私だということを」
リーダーの女の子が、薄く笑って告げた時だった。
「そう、では是非お願いします」
エ、エリザベス、何でここに?
階段上からの突然のエリザベスの登場に、女の子達がざわつく。
エリザベスはゆっくりと階段を降りてきた。
すっごい余裕、というか気品に満ちているというか。
「あ、貴女...まさか盗み聞きをしていたの!?」
リーダー・メアリーの動揺した様子を見て、エリザベスはにっこりと笑った。
「人聞きの悪いことを仰らないでください。私は自分の名前が聞こえたから来ただけですから」
「...いえ、そうね。いい機会だわ」
リーダーはエリザベスを睨むように見つめる。
「貴女、エイデン様の何なのですの?」
「何、ですか」
「何故伯爵家の貴女が、エイデン様に気安く接しているのかしら?マリアンナ様ならともかく、貴女はエイデン様に相応しくないわ」
「そうよそうよ!」と周りの女の子達が囃し立てる。
メアリーリーダーはうっすらと笑った。マリュンより悪役令嬢っぽい顔だね。
でも、エリザベスも黙ってない。
「ではお聞きしますけれど。一人のアリスさんを五人で苛めるようなお人が、エイデン様に相応しいと思っていらっしゃるのですか?」
「なっ...い、苛めてなんて...」
「端から見たら、そうとしか思えませんよ?」
うん、それは確かにそうだね。
「ええっ、私苛められてたんだ!」
アリス、あんたは黙ってな。
「それにメアリー様、貴女、この間公爵家のご子息にお誘いをしていましたよね?あと、他の方にもお声をかけていらしたとか?」
「なななななっ、何故それを!?」
一瞬にして青ざめるメアリーダー。この公爵家ってのはマリュンとは違う家のことだね。
「別の男性と関係を持とうとするような女性を、エイデン様がお選びになるでしょうか?」
メアリーダーは答えられない。
「...確かに、私は運が良かっただけです。マリアンナと友達になった結果、エイデン様との繋がりを得たのですから。でも、たとえエイデン様と長く時間を共にしたとしても、エイデン様が私をどう思われるかなど、私が操作出来る筈がありませんから...最終的に、エイデン様が誰をお選びになるかは、まだ決まっていません」
いや、大分決まってると思うよ。
「...もう、いいですわっ!!」
メアリーダーは今度は真っ赤になって言うと、取り巻きの女の子達と共に去って行った。
メアリーダー達の足音が完全に聞こえなくなった後、エリザベスは少しふらついて、顔を伏せた。
「エリザベス嬢!?」
慌てて私はエリザベスに駆け寄る。「わあ、ケインさん!」ってアリスが言ってるけど答える暇がない。
エリザベスは、深く深く息を吐いた。
「...き、緊張、した...」
やがてエリザベスは顔を上げる。いつもの無表情だった。
「ケイン様、いたんですか...」
「ああ、いや、今、来たんだ」
流石に盗み聞きしてたとは言いにくい。
「...私、頑張ったんですよ...エイデン様には、いい人を見つけて幸せになっていただきたいですから...」
「そう、か...お疲れ、エリザベス嬢(そしてエイデンマジ頑張れ、エリザベスの中であんた全く意識されてないよ)」
「...ありがとう、ございます」
エリザベスはちょっと微笑んだ。さっきのにっこり作り物笑顔とは違う、本物だね。
あんなエリザベスは初めて見たけど、すごかった。まさかエリザベスがあんなにグイグイいくとはね...。
初めて会った時のエリザベスとは違う、成長したってことなんだろうね。
成長、私もしてんのかな?
少なくともマリュンはしてないんだけどね。
「公爵家のご子息にお誘いをしていましたよね?」
お誘いといっても、「貴方のような方と婚約させていただきたいですわね(ちらちら)」みたいなものなのですが、何人もの男性にそういうことを言う人は好まれないようです。




