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 入学式から一ヶ月が経った。

 私は毎日授業を真面目に受けつつ、放課後はマリュンと駄弁ったり、エイデン、マークと話したり、ルイスに付きまとわれたり、アリスをからかったり、従者のコーディを観察したりしている。充実してると思う。

 そもそも放課後は大多数の生徒が婚約者を決めるための交流に使っている訳で、既にマリュンがいる私は基本暇なのだ。

 今日はマリュン達がそれぞれ予定があったので(マリュンはエリザベスとちょっとしたお茶会、エイデン、マークはルイスに捕まっている、アリスは知らない)、私は図書室に向かっていた。漫画とかないのがねー、残念。

 適当に何を物色しようかと考えていると、唐突に大きな声がした。何事?

「貴女みたいな人がいると迷惑だって何故分からないの!」

「そ、そんな...わ、私、何かしたでしょうか」

「百歩譲って礼節がなっていないのは見逃すわ、でも婚約者がいらっしゃる御仁や殿下に対しての距離が近すぎます!」

 アリスと、誰だっけあの子。

 ほとんど人通りのない階段の近くに、二人の女の子がいた。

 アリスは今にも泣きそうな顔をしている。もう一人の女の子は私に背を向けてるから顔が見えない。

 困ったなあ、図書室に行くにはこの階段を使うのが近道なんだけど。仕方ない、戻って別のルートを...。

「あ!ケインさん!」

 うわバレた。

 アリスの叫びにもう一人の女の子が振り返り、私と目が合った。

「ケ、ケイン・ウィリアクト、様...」

 女の子は顔を真っ赤にする。

 眼鏡をかけた、薄い緑色の髪に、オレンジっぽいつり目の、女の子。

「あの、ケインさん、私がいると迷惑ですか?」

「なっ、面と向かって迷惑だと言う人がどこにいますか!そんな聞き方ばかりしているから、勘違いするのよ!」

 どうやら女の子は相当真面目らしい。

 そうだ、この女の子、前に何かのパーティーで会ったことがある。

 確か、ジェイダという名前だった。

 伯爵家(エリザベスより格は下だったと思う)の娘だったかな?

 私と同い年だった筈だから、この子は私とは違うクラスなんだろうね。

「ケイン様、お騒がせしてしまい申し訳ございません」

「いや、構わないが、一体何を話していたのかな?」

「...この人に、生活態度を改めていただきたくて...」

 ジェイダはばつが悪そうにアリスに視線を送った。

「そうか、それで、アリス嬢。君は納得したのか?」

「えっ?わ、私ですか?私、何か悪いことしましたっけ?」

 きょとんとしているアリス。それはちょっとまずいよ。

「あ、貴女は一体何を聞いていたのですか!婚約者のいらっしゃるケイン様に対してもそうですが、エイデン様に対しても馴れ馴れし過ぎるのです!節度をわきまえなさい!」

 案の定、ジェイダはヒートアップした。

「それって、私が庶民だから駄目ってことですか...?」

 悲しそうなアリスに、ジェイダは首を振る。

「いいえ!身分関係なく、貴女の行動は目に余ります!エイデン様は第二王子であらせられるのですから、貴女のように気軽過ぎるのは良くないのよ!」

「...はあ」

 アリスは首をかしげる。あんた理解してる?

「でも、マーク君も庶民ですよ?」

「マーク様は男性でしょう!貴女は女性なのだから、むやみやたらに男性に接するのは良く思われないのです!」

 何か風紀委員みたいだね。前世の学校では風紀委員会なんてなかったけどさ。

「分かりましたか?今後、注意して生活してくださいね!」

「...はあ、分かりました」

 気のない返事だねアリス。

 アリスはぺこっと頭を下げると、ゆっくり歩き去っていった。

「...お見苦しいところを、失礼致しました、ケイン様」

「いや。君は真面目なんだね」

「ええ、まあ...融通がきかないから、面倒だとよく言われるのですけれどね」

 自嘲気味のジェイダ。

 でも、この子ゲームのルイスみたいだね。

「私はそんな性格の君が、魅力的だと思うが」

「なっ...ケイン様!婚約者のいらっしゃる身で、そのようなことを仰ってはいけません!」

「ああ、すまない。そうだな」

 ジェイダは赤い顔で抗議してくる。ごめん、チャラ男スキル発動してしまったわ。

 でも良かったねジェイダ。ここにいるのがマリュンだったらあんた確実に目をつけられてたよ。だってあんた顔整ってるからね。



 その後、何度となくアリスはジェイダに呼び出されることになるのだった。もうアリスはどうしようもないと思うな。

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