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入学から一週間が経った。
アリスがフラグを立てまくっている。
エイデンから始まり(エイデンはアリスにそんなに興味ないみたいだけど)、マーク、私、ルイス、アイザックと、攻略対象共のフラグを次々に建築している。ノアとはまだ会ってないみたいだけど。
アリスももしかして転生者なんじゃないかと疑う程だ。だってイベントが起きる場所時間逃すことなくそこにいるんだから。
私もフラグ回避に努めたけど、どう頑張ってもイベントは起きた。まだ一週間だけど、私はアリスに関わらないことを諦めた。開き直って、アリスに嫌われるように行動することにした。
が、アリスは異常に諦めが悪かった。私がアリスを遠回しに罵っても、アリスは涙目になりつつ私に関わろうとした。
駄目だこれ。
「あ、ケインさん!」
「...やあ、アリス嬢」
「あの、顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」
「...ああ、大丈夫だ(あんたのせいでもあるんだけどね)」
何でここにいんのアリス、あんたさっきまでアイザックの手伝いをしてたじゃん。
放課後、アリスに廊下で会った私は疲れていた。
ああ、もうやだなあ。アリス、何で私に関わるの?私には婚約者がいるのに。私に期待しないでよ、私が恋愛なんて出来る訳ないでしょ。
「ケインさん、気分が良くないなら、保健室に...」
「...そうさせてもらう」
「私も付き添います!」
お願い止めて。私はあんたと関わりたくないんだ。あんたはいつも私に「ケインさんは、素敵な人です!」って言うけど、それってゲームでケインが人からの愛を求めてたからそう言うの?あんた、転生者なの?
「アリス嬢、君が私に付き合うことなどない。君は君のしたいことをしていればいい」
「これが今私がしたいことです!具合の悪いケインさんを放っておくなんて、出来ません!」
それは、何なの?普通に親切心から?それとも、
「だって、ケインさんが行く途中で倒れたりしたら、嫌だから」
「...何故だ?」
「えっ?何故って...」
きょとんとしている、アリス。
「ケインさんは私のものなんですから、当然ですよ」
は?
「ケインさん、もう隠さなくてもいいんですよ。ケインさんは、私のことが好きなんですから」
何言ってんの、こいつ。
「だから、私がケインさんを心配するのは、当たり前...」
「ケイチー!」
いつも聞いてる声がした。
「何かありましたの?顔色が悪いですわ!心配ですから保健室に行きましょう!婚約者である私が付き添いますわ!」
...あー、もう。何であんたはそう、いい時に助けてくれるのかな。ありがとね、マリュン。
「そういう訳で、アリスさん、失礼しますわ」
「...ケインさんは私が好きなのに、どうしてそんな無駄な努力が出来るんですか?」
そう尋ねたアリスには、マリュンへの嫌悪は一切なく、ただただ疑問に思っているみたいだった。
「無駄な努力ですって?おかしなことを言うのね。私はケイチーの婚約者ですわよ?」
「はあ、でもケインさんは私が好きなんですよ?」
「貴女こそ、何故そんな勘違いが出来るの?(ヒロインちゃん、ケイチーは止めとけって。こいつすけこましだぞ)」
おいマリュン。
「勘違いじゃありませんよ」
「何故そう言い切れるのかしら?(何か理由あんのか?)」
「だって、この世界は私を中心に回ってますから」
え。
「「ぶふっ!?」」
吹いた。
どうしてそうなった。
太陽?アリスあんた、太陽なの?
「...面白いことを言うのね(ヒロインちゃん...悪いが俺にとっての太陽はオリヴィア姉さんだぜ)」
あ、やっぱりマリュンも太陽みたいだと思った?
ごめんアリス、笑いが止まらないわ。こんなの笑っちゃうよ。
「ケ、ケインさん...?何でそんなに笑ってるんですか?」
真剣に問いかけるアリスが、悪いけどおかしくてたまらなかった。
あー、こんなに笑ったのアイザックのヅラが空を飛んだ時以来だよ。
さっきまで頭痛かったけど、もう大丈夫。だって、アリス、こんなに面白いんだもん。
ごめんねアリス、あんたには悪いけど、私、あんたで楽しませてもらうよ。
マリュンが前世でよく言ってたみたいに、人生楽しまなきゃ損だもんね。




