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コメント、ありがとうございます!
アイザックの顔しばらく直視出来ないな...。
私は半ばマークに支えられるような体勢で自室に戻って来た。
「それじゃ、僕はエイデンのところに戻るから」
「ああ、すまなかったな」
部屋に入ると、マリュンがテーブルに突っ伏して死んでいた。
そっか、あんたもあのヅラが空を舞う光景を見たんだね。
面白いのはコーディで、返事をしない(出来ない)マリュンに必死で呼びかけていた。
大丈夫だよ、そいつ笑ってるだけだから。
「コーディ」
「あっ!坊っちゃん!マ、マリアンナ様が...!」
「落ち着け、お前は茶でもいれておけ」
「は、はいっ!」
慌てて行動し始めるコーディ。私はマリュンのそばに行き、肩を叩いた。
「大丈夫か、マリュン?」
「...あれ、テレビですの?実は上でカツラを吊るしているとか、ありますわよね」
「ないから、そんなの」
だからコーディのいる前でそういうこと言わないで。確かに前世ドッキリで見たことあるような気もするけど。
「はあ...まともに先生の顔を見れませんわ(絶対笑うし)」
「まあな、あれは凄かった(思い出し笑い注意だね)」
「というか、元々あんなカツラ、被っていなかったんでしょう?(あいつゲームでも禿担当だったのか?)」
「そうだな、おそらく何らかのストレスだろう(何ハゲ担当って、んな訳ないでしょ。笑うから止めて)」
コーディが紅茶をいれて私達が座るテーブルに置こうとする。だがそう簡単にいかないということを、私は知っている。
コーディが躓いて紅茶のカップをひっくり返す前に、私は二つのカップを取り上げた。
「ほら、マリュン」
「ケイチーが下さるなんて...(何でお前が渡すんだよ?)」
「君に私以外の男を触れさせる訳にはいかないだろう?(コーディはぽんこつだから仕方ないの)」
「ははは、流石坊っちゃん、独占欲がお強い!」
あんたは黙っててコーディ。
「予想外のことばかりですわね...(ゲームとはやっぱ違うんだな)」
「あまりおかしなことにならないといいが(アリスが変なことにならないでほしいね)」
「ケイチーは素敵ですもの、先程もときめきましたものね(お前チャラいしな、さっきのもキザだったし)」
さっきのってのはマリュンの頬にキスしたことだと思うけど、思い出させないでくれる?ちょっと、何笑ってんの。
「そろそろおいとま致しますわ、ベティも戻って来る頃でしょうし(ベティちゃんと一緒にいたいんだ俺は!)」
「そうか、それではな」
マリュンは部屋から出て行った。あれ、そういえばここ男子寮だよね?あんたよく一人で来る気になったね。
「仲が良いのが一番ですね!」
まあ、そうかもね。
あ、ごめんコーディ。マリュンあんたがいれた紅茶ちょっとしか飲んでないわ。
入学式の次の日。
授業が始まる前の、朝の時間、私は既に教室にいた。
マリュンはエリザベスと一緒にもう少しあとに来るだろうし、エイデンとマークはアイザックに呼ばれてる(多分一番身分の高いエイデンにアリスを受け入れてほしいんだと思う。マークは付き添いだ)。
誰もいない教室、自分の席で持ち物の整理をしていると、唐突にドアが開いた。
「おはようございます!って、あれ?」
教室に私しかいないことに驚いたのか、瞬きを繰り返すのは、アリス。
これは答えるしかないか...。
「ああ、おはようアリス嬢」
「ケインさん、おはようございます。この時間って、皆さんまだ来ないんですか?」
「そうみたいだね」
「何だ...張り切って早起きしたのになあ...」
しゅんとなるアリス。が、すぐに首を振った。
「あ、ごめんなさい!ケインさんがいますよね!」
「ああ」
んー...やっぱビッチには見えないね。普通にいい子に見える。警戒はしなくていいよね。
「あ、そうだ、ケインさんって...」
アリスが何かを言いかけた、その時。
「ケイン・ウィリアクト!勝負だ!」
物凄い勢いで、アリスが入って来たドアとは違うドアから、奴が顔を見せた。
やっぱり来たね。
攻略対象にして自称私のライバル、堅物というより脳筋騎士団長の息子、ルイス先輩。




