19
放課後。
学園の生徒は大抵誰かしらとのんびりする。それが友達同士だったり、婚約者に狙っている人を誘うだったりするけど、どっちにしても私には関わりないことだ。
私は疲れていた。
初日はイベントが必ずあるとは分かっていたけど、やっぱ人前であんな醜態を晒すのは恥ずかしい。
男子寮にぐったりしながら向かい、私は自室に帰って来た。
部屋の中には、私の世話をするために家から連れて来た従者がいる。
名前はコーディ、髪の毛は深い緑色で、目の色は灰色。
こいつを一言で言うと、ぽんこつ。何でこいつを連れて来たかというと、前世の私の弟の、小さい頃に似てるから(前世では私には弟と妹が一人ずついた)。
「はっ!お勤めご苦労様です、坊っちゃん!」
「...ああ」
うん、こんな感じ。何お勤めって、私は出所でもしたのかな?
「お客様がいらっしゃっています!」
は?
「ごきげんよう、ケイチー(やっほー)」
あんた何で男子寮に、私の部屋にいるの?マリュン。
マリュンは部屋の真ん中に置かれたテーブルとイスに堂々と座っている。
あれ、おかしいな。あんたてっきりエリザベスと一緒にいるもんだと思ってたけど。
「エリザベス嬢はどうした?」
「......」
あ、地雷踏んだ。
「...エイデェェェン...様」
コーディがいるからか、様を付けるマリュン。いやでも取って付けたようなとはこのことだね。
「そうか、それなら仕方ないな(だからって何で私の部屋に来るの)」
「暇だし...」
おいこら口に出すな。怪しまれるでしょ。
「...ああ、そういえば、この部屋からは中庭が見えるのね」
マリュンは立ち上がり、窓から外を見た。どしたの急に。
「見て、ケイチー。あんなところに馬と鹿が...」
ちょっと、コーディがいるのにエイデンをディスるんじゃない。
「その隣には美少女がいるわ...」
ああ、エリザベスね。
「あとは...ヤンデレと主人公...」
何?
マークとアリスが中庭で一緒に?
もしかしてイベント?だとしてもごめんねマーク、私はもう今日は疲れたから関わらないよ。きっとマークならアリスとも上手く付き合えるよ。
「困ったように私...ケイチーの部屋をガン見しているわ」
...もおおおおお。
「...ちょっと行ってくる」
「私も行きますわ」
「君は待っていてくれ(さっきアリスに関わらせないために私がどれだけ...)」
「...分かりましたわ(ちぇー)」
「あ!ケイン!」
マーク、あんたねえ...。
「ごめん、僕、ケインと約束があったから...」
そそくさとこっちに寄ってくるマーク。
アリスが名残惜しそうに見てくる。
「ごめん、ケイン...」
「...お前な、私を口実に使うなよ」
「でもあの子、すごいグイグイくるし...確かに同じ庶民同士だけど、あんなに詰め寄られると怖いというか...」
まあ理解は出来るけどさ。
「エイデンは?」
「...最初は、エイデンとエリザベスさんと一緒に僕もいたんだ。でも、アリスさんが来て...」
気まずそうに目をそらすマーク。
エイデンを探すと、中庭の桜の木近くでエリザベスと一緒にいた。あそこは平和だね。
アリスはどうしたかな...あ?
あれ、は...。
「あ、あの人...」
うん、そうだねマーク。あいつは...。
「こんな所で何してるんだ、アリス」
ドS教師、ハゲたアイザックだ。
前世、森崎智秋の弟は智秋が高校生の時に(本編0の時)、絶賛反抗期中だったという設定があります。弟は中三。何故か親よりも姉に対して反抗期を発動。智秋びっくりしつつからかいながら対処。
ちなみに、智秋に乙女ゲー「僕の恋を叶えて」を勧めたのは中一の妹だったりします。




