1 マリアンナ・ルーシム
潤視点になります。軽い下ネタがあるので苦手な方はご注意下さい。
暗い。
何だ、これ。どうなってるんだ。
どこを見ても、ただ暗闇だけが広がってる。
何もない。何も見えない。
怖い。
...智秋は?
はっとしたところで、急激に視界が明るくなった。
まず目の前に入ってきたのは、女の人だった。
金髪碧眼の、すげぇ綺麗な人。外国人?何で?
俺は、その人に抱き上げ...抱き上げられてるのかこれ?
えっ俺の身長165はあるぞ。どうなってんだ?
混乱して首を動かすと、女の人は慌てたように俺を抱え直す。
あっ待って、そんなに押し付けられたら俺の息子が目覚...
...あ?
もぞもぞと、足を動かす。
!?
お、俺の、
俺の、
俺の息子がねえぇぇーーーーーーーーーーー!!?
物凄い勢いで泣いた俺を、女の人は困ったようにあやし始めた。
俺も声を出すことによって、少しは落ち着いた。
どうやら、俺は赤ん坊になってるらしい。しかも女の子。
どういうことなんだ...。
トラックに轢かれたんだろうことは、分かってる。
でも意識が戻ったら女の子に生まれ変わってるって何だよ。
しかもこんな綺麗な人の娘...。なんっで娘なんだ!息子でも良かったじゃねえか!!くそっ!絶対イケメンだったのに!!夢のハーレムが!!
...まあ、落ち着こう。
まとめると、俺は前世(多分)の記憶を持ったまま、女の子に生まれ変わったらしい。
金髪碧眼美女の、娘として。
...ただ、不可解な点がある。
「マリアンナ、どうしたの?お腹すいちゃった?」
マリアンナは俺の名前でいいとして。
これ、完全に日本語です。
ペラペーラにも程があるぞ。どう見ても外国人なのに何でこんな違和感ないの?父親はもしかして日本人なのか?俺ハーフ?
だとするとここ日本?でもこの部屋何か...すごい豪華で広いというか何というか...現実味がない。
何がどうなってるんだか...。
と、ガチャリと音がして、部屋にとてもダンディな銀髪の男の人が入って来た。誰だてめえ。俺はイケメンは差別するぞ。
キリッとした眉が印象的な男の人は、俺と母親を見て、目尻を下げた。
「流石私と君の子だ。とても可愛いな」
あっ...パパでしたか...。
父親もどう見ても日本人じゃないです俺はハーフではありませんでした。
じゃあ何で日本語を喋ってんの!?どこなんだよここはー!!
俺の脳内で、叫びが響き渡っていった...。
「マリアンナ!おねえちゃんですよー」
お?
父親の後ろから金髪碧眼の可愛い女の子が出て来た。
どうやら父親と一緒に部屋に入って来たが、父親の影で見えなかったらしい。
それにしても可愛い。母親によく似ている。
...そういやここにいる三人とも、漫画とかゲームに出て来る貴族みたいな格好してるな。
あれですか?中世ヨーロッパですか?もう俺は驚かねえぞ。
「オリヴィアおねえさまってよんでー!」
すいません、なにぶん歯が未発達なもので...。
オリヴィア、だな。覚えたぞ。可愛いな、三歳くらいかね。
敬愛を込めてオリちゃんと呼ぼう。
嘘、ごめん。ちゃんとオリヴィア姉さんって呼びます。
口ではオリヴィアお姉様って呼ぶから許してね。
そんなこんなで、俺は混乱しつつも、女の子に生まれ変わったという事実を受け入れた。
いや、もうただの女の子じゃねえな。
マリアンナという、オリヴィア姉さんの妹に、俺は生まれ変わったのだった。