15 ケイン・ウィリアクト
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そして、ケイン視点になります。
桜が舞う季節、私達は出会う。
この世界にも桜が存在している。世界観無視してるけど、こうして見てみると、何だか安心するのも事実だ。
私の隣には、マリュンがいる。何キョロキョロしてるの。
今日は入学式、今私達は学園の門の前にいる。
この門をくぐれば、ゲームが始まる。
この世界はゲームではないから、どうなるかは分からない。
さあ、どうなるかな?
入学式の前に起きるイベントは、エイデンのものだ。
主人公が校門の近くで他の生徒から押されて、エイデンの近くに転ぶ。エイデンは王道王子様、主人公を助け起こし、面識を持つことになる。
エイデンはさっきから私の視界内にいる。マークもその隣にいるけど、あいつとのイベントは今は起きない。
あのね、私の周りにいる女の子達、私は婚約者がいるからね。ほらマリュンがすぐ隣にいるでしょ。だから話しかけて来ないでね集中したいから。話しかけるならエイデンとマークでお願いね。
...イベントが起きない。主人公が来ない。
主人公は、本当にここにいる?でも、さっきから近くの女の子達が「特別枠の生徒」って単語を使いまくってるから、いる筈なんだと思うんだけどな。
そんな疑問が浮かんだちょうどその時、「うわっ」という声が聞こえた。
やっぱり、イベントが始まった。
間髪入れず、私はエイデンを注視した。
「も、申し訳ありません、エイデン様!」
「気を付けろ、マーク。それと学園では身分など気にするな、と言っただろう?普通に話せ」
「...分かった。ありがとう、エイデン」
何でお前だ。
ちょっと待て。何であんたがエイデンとのイベントを起こしてるの?マーク、あんたまさか主人公なの?
どうなってんのこれ。
私が混乱しかけた時、マリュンが「ケイチー!」と言った。何?
私がエイデン達から視線を外すと、こっちに転んで突っ込んで来る女の子の姿が見えた。
私は慌てて女の子を抱き止める。
「ご、ごめんなさい!」
ピンク髪をポニーテールにしている、女の子。
主 人 公 。
何で私だ。
何で私がエイデンのイベント起こしてんだ。
ああ、でも主人公がいたって分かっただけでもよしとしよう。
「大丈夫か?」
「は、はい。本当にごめんなさい...」
慌てて離れて、しゅんとなる主人公。...これ私がエイデンの台詞言わないと駄目?そんなことないよね。私主人公に好感持たせないって決めたから。
「全く、君みたいに可愛い人が転んで土に汚れてしまうなんて、勿体ない。受け止められて良かった」
私の馬鹿。
やっぱ私混乱してたんだね。思わずいつものチャラ男スキルを発動させてしまったよ。
本来のエイデンの台詞はここまでひどくなかった。せいぜいが、「気を付けろ、怪我をしたら危ないだろう?」くらい。
主人公は私の台詞に顔を赤くしてあわあわしてる。
ごめんマリュン、私やらかした。
そう思ってマリュンを見ると、こいつ私の言動に笑ってやがった。いいのそれで。
「わ、私、アリスっていいます!ありがとうございました!」
主人公、アリスはぴょこんと頭を下げる。
仕方ない、私も名乗るか。
「私はケイン・ウィリアクトという。アリス嬢、君が噂の特別枠の生徒だね。よろしく頼むよ」
「は、はいっ!よろしくお願いします!」
馬鹿、ほんと馬鹿。
何よろしく頼むって。何をよろしくすんの私は。
...まあ、でも今のところアリスは普通の人っぽいし、そんなにイベント以外では警戒しないでおくか。
お願いだから私は攻略しないでね。私現実で恋愛とか恥ずかしくて無理だからね。そもそも私婚約者いるから。婚約破棄イベントとか元々ないからね。
アリスはもう一度礼をし、去って行った。
ちらっとマリュンを見ると、まだ笑いをこらえてる。
「ねえ、ケイチー(なあなあ)」
「...何だ、マリュン?(あんた本当に何なの...)」
「先程の人、とても可愛らしい人でしたわね(主人公可愛いな!アリスっていうのか!)」
...あんたは可愛い女の子なら誰でもいいのか。
まあでも、思ったよりいい子そうで良かった。
私の勝手なイメージでは、主人公はビッチキャラだったからね。ごめんねアリス。
マリュンを警戒した時といい、私は被害妄想が過ぎるのかもしれない。もっと気楽にいこう、マリュンみたいにね。