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記念すべき十話目!見てくださっている方、本当にありがとうございます!
俺達はケインに案内され、無事に俺の家にたどり着いた。
ケインの迅速な案内のおかげで、俺達が迷子になっていたことは伝わっていなかった。俺達を見失った侍女は、俺達が家に着いたちょっと後に家にへろへろで戻って来て、普通にいる俺達を見て仰天していた。本当にすいませんでした。
侍女は責任を感じていたが、元はと言えば俺が侍女をまいたせいだ。侍女は悪くない。
そういうことを伝えたが、侍女は責任をとって退職することにしたらしい。とても申し訳ない。今後は絶対にこんなことがないようにしたい。
ノアは疲れたように自分の部屋に戻って行き、エリザベスちゃんも流石にすぐに自分の家に帰って行った。
俺は、案内を終え戻ろうとしたケインを、家の前で引き止めた。辺りには、誰もいない。
「...何か?」
「貴方は一体誰なのですか?」
こいつが呟いてたのは、前世で俺も見たことがあるテレビ番組の名前だ。もしかすると、こいつも、俺と同じ、前世の記憶を持って生まれ変わった奴なのかもしれない。だとしたら、仲良くなりたい。
「誰?とは...おかしなことを言いますね。私はケイン・ウィリアクト。侯爵家の三男ですが」
「じゃあ、はっきり聞くけど、貴方には、前世の記憶がありますか?」
「...は?」
ケインの顔が、凍り付いたように見えた。
「私には、あります。私は、前世では、日本という国で、暮らしていました」
お前はどうなんだ。お前は、違うのか?
「は...はは、何だそれ...」
ケインの表情が歪み、膝をついた。
ぎょっとして俺は駆け寄り、声をかけようとしたのだが、
「う...うぅっ...ひ...一人じゃ、なかったんだ...」
ケインは、泣いていた。
普通の子どもみたいに、こいつは泣いていた。
そういえば、こいつは、初めて会った時から、大人みたいだったっけな...。
頭のどこかでそう思いながらも、泣かれてパニックになった俺は、何故かケインは違うのだと考え、俺が前世の記憶持ちだということを忘れさせるために、遠慮なくヘッドロックをかけた。
「本当にすいませんでした」
「いや...まあ、うん...」
俺は今、ケインに土下座している。
ケインにヘッドロックをかけた直後、ケインは文字に出来ないような叫び声を上げ、声を聞き付けた使用人達によって俺はケインから引き剥がされた。
そして勿論俺は説教された。軽く一時間。その間ケインは念のため治療されたらしい。
何故あんなことをしたのか聞かれ、俺は正気を失っていたと答えた。実際俺は正気じゃなかった。
俺も念のため検査された後、ようやくケインに会えた。
ここは俺の家の一室で、この部屋の外には使用人が、叫び声を聞いたらすぐに突入するために待機している。
「びっくりしたけど...大丈夫、うん」
そう言いつつも、ケインは若干警戒している。マジごめんて。
「...それで、転生のことだけど。私も転生者だよ」
「てんせい?」
「えっと...まあ、生まれ変わり」
「そうですか!」
俺は間違ってなかった!
同類ゲットだぜ!
「嬉しいですね、前世のことを話せる人がいるなんて」
にこにこしながら俺はケインを見つめた。
「...あ、そういえば、あなたは前世でどんな人だったの?」
お?俺のことが知りたいと申すか。
いいだろう教えてやるぜ。
「私は元々高校生で...」
「ちょっと待って」
「えっ?」
どうしたケイン。真剣な顔して。
「...いいかな?せーの、で、自分の元の名前を言い合うってのは」
「はあ...いいですけど...」
別に減るもんじゃないしいいけど、どうしたお前?
「じゃあ行くよ、せーの...」
「森崎智秋」
「高山潤」
............は?
次の瞬間、部屋に盛大な笑い声と叫び声が響き渡った。