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或る日の風景  作者: 川村
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白ねずみの話・黒猫の話

【白ねずみの話】



 黒猫はバカだから。夢を見ていたんだ。


 何の力も智慧も無いくせに、理想ばっか語りやがって。現実ってもんを見ていなかったんだ。

 それでも芯がありゃまだ可愛げがあろうってもんだが、考えもプリンみたいにぐにゃぐにゃで甘いときてる。コネクタと回線が間違って繋がってるのか、動力と出力の間にブラックホールがあるのか知らないが、非合理的なもんだ。


 複雑ながらもスムーズにあるべきだろ? イキモノってのはさ。

 機械みたいにさ、自分の箍ってもんをだね、かきかきっと螺子で止めて、かちんと穴にはめこんでだね。

 動力があって、低音でモータが回って、細かい部品が流れるようにそれぞれの役割を果たしてさ、傾いて、回転して、跳ね上げて…。そういう風に、自分の意思は出力されるだろ? 複雑な工程を経てもスムーズにさ。そうあるべきだろ。イキモノってのは。


 8ひく5は3だし、3かける66は198だ。

 どうあがいたって20なんて数字はでてこないし、世の中ってのはそういう風にできている。






*         *         *         *         *






【黒猫の話】



 白ねずみはいつだってしっかりしている。うん。

 本当に。いつだって色んなことよく分からないまま過ごしている僕と違って、きっと、白ねずみにはいろいろなことが分かっているんだろうな。

 うーん、あんまり表に出さないけれど、きっと物事の本当のことを、分かっているんだろうなあ。


 僕なんかは、空が青ければ、それで幸せな気分になっちゃうんだけどな。

 誰かが笑顔なら、僕も笑顔になっちゃうんだけどな。手紙をくれたら、そこに一行しか書いてなくても、その人が僕のためにその一行を書いて、切手を貼って、ポストに投函した、そのことが分かるから、それだけで、嬉しくなっちゃうんだけどなあ。

 そうやって、色んなことが綺麗だから、うん、月も、空も、森も、人も、うん、そういうの見て、僕は楽しくなってしまうなあ。


 白ねずみはいつでも何かを考えている。

 一人で、複雑なことを理解している。

 どんなことにも、原因と結果を探し出す。そして世界を曖昧にしておかないんだろう。

 よく分からないけれど、たぶんそれが、白ねずみなんだ。きっと。






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