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その目に映るのは  作者: 千代
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色のお返し

『お久しぶりですね。今日もご用意してありますよ。さぁ、どうぞこちらへ。』

館の主は部屋の奥へと案内する。そこにあるのは大きな机と小さな椅子。そして大きな机にはポツンと本が一冊置いてあり、ねずみ色の表紙に白色で何かが書かれていた。

はっきりと読めない。不思議に思うと館の主は椅子を引き、手招きをする。

手招きされたとおり椅子につくと本を開いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕の旅は終わらない。

僕だけの絵を描くまでは足を止めない。それぞれの個性溢れる色たちの調和。その最高ハーモニーを必ず見つけ出そう。


旅では様々な出会いがあった。

世界が広がった。


色とりどりの花

季節によって色を変える木々

せっせと動き回る動物

静まり返る夜空の星


こんな近くのものに気付けなかった。

この世界は多くの色によって作られている。素晴らしい。

同じ色を作り出すのにはとても困難。


『貴方の目は違う。』


僕はこの目でたくさんのことを見てきた。色を見てきた。世界を見てきた。


『世界を否定するな。』


この世界以上のものなんてない。

たくさんのことを教えてくれる。


『色なんて…』


やめろ。違う。僕は間違えてない。

それ以上は言わないでくれ!!


『存在しないわ。』


嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。この目で確かめた。存在したんだ。


なのに僕のキャンパスは黒と白。


その二色。


『貴方の絵は正しい。世界を映し出す鏡よ。』



キャンパスの向こうに広がる世界には僕の求める色はなかった。

こんな絵が描きたかったわけではない。

僕の願いを嘲笑うかのように世界は現実を突きつける。



『旅を続けよう、貴方の求める色はあるかしら。』


どこへ行こうとこの声は消えない。

僕はキャンパスに筆を走らす。

そこに奇跡は起きた。

僕の世界に1つの色が増えた。


ねずみ色


まるで僕の心みたいな色をしていた。



『続けよう続けよう。終わらない夢の旅を。』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


本を閉じ、椅子の背もたれに身体を任せる。グッと伸びをすると上には白い天井があった。

視線を下ろすと何か違和感を感じる。こんなに暗かったっけ?


『どうされましたか?』


声の聞こえる方へと顔を向けるとそこには館の主がいたが、明らかに変だった。

色がない…。


『やはり奪われてしまいましたか。ご心配なさらず…。その本の表紙を見てください。』


先程の時より鮮明に文字が読めた。周りの色に自然と目を向けていたからだろうか。3色の世界では邪魔する色はいなかった。


「お返しします」


そう書いてあった。瞬きすると目がチカチカした。色が戻ってきたのだ。

そしてまた今までのように本は消えていった。


『色は不思議ですね。』


今日はこのあと用事あるため館の主に一礼し館をあとにした。


次はどんな話かな…。



To be contenued


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