君のこえ
『また来て下さったんですね。
お待ちしておりましたよ。』
館の主は前と同じように一冊の本を差し出した。それは淡い桃色をしていて白の文字で「君のこえ」と記されていた。
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モテ期は3回来ると聞いたことがある。私には関係の無い話だ。これは私の推測にすぎないが、3回というのはモテる女子とモテない女子の合計の
モテ期を平均化したものにすぎないのではないかと思う。現に私にモテ期は来ない。
偶然見てしまった彼の横顔。いつもはそれが見れるだけで幸せだったのに、あの日から何も感じなくなっていき、今は見たくなくなった。
君はあの日、クラスの女子と話していた。
…でも、女子の目が違った。チラッと私は目が合ってしまったのだ。
『奪い取ってやる』って睨んできた。君は気付かずにその子と話していたよね。
日に日にその子との時間の方が長くなって、私の場所が薄れていくのを何も出来ず見ていた。
「もう無理だよ、別れて。」
私は君に告げる。
「え、なんで?」
驚いた顔をして立ち尽くす君。
私は更に告げる。
短い間の幸せの感謝を込めて
「さようなら」
君の大きな手は私の腕を掴もうとする。
「待てよ!!」
パシッ
私の手は自然と君の手をはたいていた。自分でも驚いた。心のどこかで拒絶していたんだね。
なら、もう怖がることはない。
悲しむこともない。
「私は君のことが大嫌……え?」
私の制服はジワリと染みが広がっていく。腹部に痛みが走る。
ねぇ?君の手にあるものは何?
「なんでよ…。俺から離れてくなよ。」
君は下を向いて手に力を込める。
ハサミが私の腹部を抉る様に進んでく。私は意識が朦朧とする中、膝をつき君の腕を掴む。
「俺のことが嫌い?ねぇ、どこが?
約束したじゃん。
ずっと一緒だよ。って」
なんで君は楽しそうに笑ってるの?
あれ?なぜ私も笑っている。
そうだ…忘れてた。
君のくれるこの痛み
そして君のそのこえによって作られるその言葉
「私は大好きだよ。ずっと…」
綺麗な紅の花はいつまでも
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『どうでした?』
声のする方向を向こうと本を閉じ、顔をあげるとそこには館の主の顔があった。
『恋愛は人それぞれですからね。本の題名で印象は決まるものですが、それはあくまで読者の予測への光ではありませんよ。』
ニコリと微笑む館の主。
そしてこの前と同じ様に本は光を放ち消えた。
『やはり本も喜ばれたのでしょう。
あなたとの出会いを。
さて、生憎ながらもうお時間が…。
また来てくださるのをお待ちしていますよ。』
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