冒険の偽書
『昔からヒーローってかっこいいなぁって思ったことありませんか?』
ふいに館の主は問いを投げかけた。
『勇者もいいですね。……あ、これ。』
館の主は一冊の本を渡す。
「冒険の偽書」
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とある一国の王は民を襲う疫病や不作によって頭を悩ませる日々を過ごしていた。
そして対立した人間族と悪魔族の戦争が勃発し、国は崩壊寸前。
そこで立ち上がった青年がこの国を変えることとなる。
「こんなんじゃダメだ!」
そしてその青年は仲間を集め、国を守るべく魔王の城へと足を踏み出した。
そこまでの道のりはとても過酷なもので何度も挫折しそうになり、仲間割れも多々起こった。
「君だったんだね、勇者は。」
魔王は悲しそうな目で青年を見つめる。
「あぁ。」
「俺は君を倒さないといけない。この国を変えるために、民の目を覚まさせるために。」
魔王と勇者の剣が交じり合う。
勇者のパーティーは魔王の一撃で吹き飛ばされ、結界に閉じ込められてしまった。
五分五分の戦いが続いたが、魔王は勇者の一瞬のスキを見逃さなかった。
壁に追いやられ、切られた足の怪我が動きを制限し、勇者は絶体絶命のピンチだ。
魔王はまだ荒い息で勇者の首に刺さる数センチ手前に剣を持ち上げる。
「お前には聞きたいことがあった。」
「…。」
「なぜお前はあの子を、実の妹を殺した!!」
勇者は視線を落とし何も喋らない。
この人間と悪魔の戦争の原因は小さな事件だった。
人間族の少女が街中で銃殺されたのだ。
そして数日後ある証言が出てきた。
『悪魔族が殺した。
悪魔族がやっているのを見た。』
そう証言したのは殺された少女の兄である、勇者だったのだ。
魔王は妙な違和感を感じ、その事件を調べさせた。
「お前が少女に発砲したのを見たという村人がいた。」
「フフッ。アハハハハハ!!」
追い込まれて精神的におかしくなったのか勇者は笑い出す。
「なぜ?そんなの簡単だ。邪魔だったから。
まぁ、本当はこの世界に飽きたから暇つぶしのためかな。」
勇者は魔王の剣をつかみ、バキッと握力で砕いた。
魔王は呆気にとられ、一歩退く。
そして勇者は不敵な笑みを浮かべ、よろけながら立ち上がった。
「馬鹿だよな。子供の一言で大きな戦争になるなんて傑作だよ。
俺の力でこの世界が動かせる。
こんなに楽しいこと他にない。
でもさ、お前の存在が邪魔だった…。
人間族から信頼の厚い魔王。
笑わせるな、そんな魔王が居てたまるか!!」
勇者は狂ってる。その場にいた全員がそう感じた。
「だからお前を利用することにした。
お前は俺のシナリオで駒でしかない。
ハハッ。
『魔王を勇者が倒して国は救われました。』
だからさ、死んで?魔王様?」
呆然のしていた魔王は勇者の攻撃に気づくのが遅れ、その生に終止符を打った。
「なんで…。嘘よね?」
「そんな…。僕達は騙されてたんですか!」
魔王の結界から解かれた勇者の仲間達は口々に言葉をこぼす。
「まぁ、聞いちゃったんだから君たちは用無しだ。本当は生かしておいてあげる予定だったんだけどなぁ。
『勇者は仲間を殺され、悲しみを堪えなかまらみんなの想いを背負い魔王を討ちました。』
なかなかいいね。
てことで、じゃあね!!
馬鹿なみ・な・さ・ん。」
勇者と呼ばれる青年は静まり返った魔王城を後にした。
口には三日月を浮かべ
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『いかがでしたか?
ふふ、どうやらご満足いただけたようですね。』
そして今日も本は消えた。
『魔王は勇者で、勇者は魔王かもしれませんね。
真実は耳からではなく、自らの目で確かめるべきですよ。』
それでは、と館の主は頭を下げた。
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