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「落ち着いて!」
「あ、アングラッドさん」
突然聞こえてきた声に驚く。
「……確か、ループをした子がいた気がするの。ループというよりはある日突然来て「もう七回目よ!」と叫んで泣き出した子がいたの。朝になるとその子は消えていて……。……そう、そうよ。確かその後、数日たったころだったはず。抜けれたよって言ってきた子がいたの。数日前に見た子だったから、不思議だったけど、そういうことだったのね。……それで、そのあとすぐまたその子はいなくなったわ」
わたしの前にも、ループした子がいたっていうこと?
「大丈夫。もしかしたら、あなたのループも終わるのかもしれない。まだ、あきらめちゃダメ。記憶は鮮明に残っているのでしょう。なにか調べれば……」
でも、でもそれは……
「でも、アングラッドさんそれは……」
どうして、眠たい。瞼が重くて仕方がない。まだ、まだ話さなきゃいけないのに……
「ああ、どうしましょう。早く寝たほうが落ち着くと思って睡眠効果があるものを飲ませたの。あなたったら、様子がおかしいから。そのほうがいいとっ。ごめんなさい。こうだと知っていたら……。っ、あなたは、私を訪ね続けて!そして、私からフィミアの世界について、この世界について学んで!そうすれば……」
ありがとう、アングラッドさん。絶対二日目のアングラッドさんに会ってみせるから。だから、今は寝かせ……て……
そうして、私はまた夢を見る。今度は勇太や、父が交代で皿洗いをしていた。そっか、わたしの分担だから、わたしがいなくなったら誰かがやらなくちゃいけないよね。
そして同時に別の映像が流れ出す。
「小夜ちゃんはいい子ね。おばさんのところの里香ったら何も手伝わないのよ。はぁ、もう小夜ちゃんのお母さんやお父さんがうらやましいわ」
隣町からいとこ家族がお泊まり会ということで、わたしの家に来ていた時おばさんがそう言っていた。
「はぁ」
わたしはあいまいに笑って過ごしたんだっけ。
わたしがいい子ね。
でもね、おばさん。わたしがお手伝いをするのはお母さんを助けるという意味以上に、父にこれ以上「長女のくせに」とか、「恥ずかしくないのか」とか、「いい加減にしろ!」って怒られたくなかったの。良い子じゃないよ。こんな子。わたしは里香ちゃんがうらやましいよ。わたしより純粋だろうからね。
やって当然、そんな言葉が嫌いだったのよ。わたしは我儘だから。
パパ、大っ嫌いよ……
おばさんが感心したように頷く横を苦笑しながら私はすり抜けた。
残っているおばさんに父が近づく。
ん、あれ?これの続き?
「……小夜はよくやってくれるよ」
「良かったわね、まったくわが弟の娘なのが惜しいくらいだわ」
「良い子だろう」
「……はぁ。まったく」
「親バカって言いたいのか」
「そうよ」
嬉しそうに笑う父に、やれやれといった様子のおばさん。
どうして、毎回夢はわたしの知らないパパを見せるの!?
……やめて。見たくなんかないわ。
パチン
わたしは、何度も繰り返すことになる。アングラッドさんにこの世界について教えてもらう現実と、わたしの死後の家族の様子を見せる夢を。
作者は苦手でした。親戚関係は。年の近い子が全然いなかったので緊張しました。
小夜とは全く別の理由ですね(笑)