1・夕暮れより
また、この話の中には人によっては不快な表現がありますので注意してください。
わたしは大方いい子ではなかっただろうか。どうしてわたしが死ななければならないのだろうか。
抜けることができそうにない絶望の中で思う。自分について。
真っ赤な夕暮れがきれいだった。空も街も人も赤に染まっていた。半袖の上にパーカーを羽織っていただけだったがそれほど寒くなかった。久しぶりに見れた綺麗な夕陽にわけもなく胸がドキドキした。
交通事故。皆さん!自転車って左側通行なの知ってる?それから自転車って、車道の端を走らないといけないの。まあ、そんなの守らない人なんて大勢いるよね。でもわたし、守ってたんだ。
スローモーション?わたしが死んでいく瞬間を鮮明に覚えている。わたしは左側通行してた。
でもルール違反な人が正面から同じく自転車に乗って迫ってくる。全然どいてくれなさそうだった。
しょうがないから狭くガタガタした道だけど、車が走ってるほうに避けたの。
ほんと迷惑な話。
せっかくどいてやったのに、なんと違反者、悠々と道の端にも寄らずこっちにくるの。車が向かい側から来ているの見えるよね。ちょっと不親切過ぎない?
どうしようもないから、ゆっくり何とか横を抜けようとしたわけよ。そしたらさ、なんか違反者ぐらりと揺れたの。わたしの真横で……。
ほんっとありえない!!
おかげでバランスを崩したわたしは、ちょうど来た車に轢かれて死んじゃった!
今までいろいろあったけど、やっぱり死にたくないっていうのかな、崩れる瞬間というか倒れていく妙にゆっくりとした時間、ものすごく焦った。どうしよう……!轢かれるっ!死んじゃう!……って。
走馬灯も見たわ。いろいろ思い出しちゃった。
そんなかんじで死んじゃったわたしなんだけど、十五で死ぬんだからそりゃいろいろ後悔とか、いろいろ悲しく思うところがあるのよ。
そうね、とりあえずわたしに先立たれた両親は悲しむわね。絶対に。それは分かっているわ。だって、わたしのことを愛している両親は本当に、心から、悲しむんだ。
そして、それがとてつもなく嫌だ。お母さんに悲しい顔はしてほしくない。だって、お母さんはとても弱いんだもの。駄目よ、絶対に。心労がもとで病気になんてなったらどうしよう。そう思うと、心臓を人質に取られたように辛くてどうしようもない苦しさがこみ上げてくる。
お母さんのことが心配でたまらない。
兄と妹はいいの。たぶん悲しむかもしれないけど、きっとそんなこと乗り越えてしまうわ。そして、わたしに囚われず普通に生きていけると思う。
友達も、親友もきっと悲しんでくれる。でも、依存してしまうような関係じゃないから、すごく悲しむけどきっと立ち直れる。大丈夫……。
父はどうでもいいわ。そうね、涙は流すんじゃないかしら。心から。愛していたからって理由じゃないとわたしは思うけど。
でもきっと父は愛していたんだって思っているんじゃないかと思うわ。自分イコールいい人、温かい人なんだっていうのが、あの人の頭の中に等式が出来上がっているんだろうから。
そうじゃなきゃ耐えられないんだわ。自分が正しくないなんて知りたくないものね。
お母さんのことが心配だけど、父のことを考えると死んだのも悪くはないかなと思う。もう顔を合わせなくて済むと思うとチョットね、気分が楽になるのよ。
わたし、雨原 小夜は大方いい子であったと思うわ。生活的にも幸せなほうだったでしょう。でも、欲張りかもしれないけど、心は幸せじゃなかった。もう人間の病気の一つじゃないかしら?周りから見れば幸せなんだけど、心はいつも不幸を抱えている。吐き出せない。
私は特別じゃない。そんなの誰だってそう。分かってはいるけど、駄目なの。どうしても、泣き叫んで喚き散らして両親に不満を言ってしまいたい!
……ああ、でももう無理ね。死んでしまったもの。でも、家にいるのは辛かったし死んで良かったのかも、なんてね。
……それにしても、死んだ後ってどうなるんだろうとは思っていたけど何もないわね。かれこれ、3時間ぐらいはぐだぐだといろいろ考えているよう、な?あら?なんだろう?だんだん明るくなってきたような……
はじける光。きっと、光だけじゃない……
眩しさをどうにかやり過ごして、目を開けたら木、木、木……。一面緑。天国でも、地獄でもないわね。
……あらやだ、異世界トリップ期待しちゃっていい?
誤字脱字は勘弁してください。
見つけたら、間違ってやんの(笑)と思って生暖かい目で見てください。
三回は見直しをしているのですが、自分ではなかなか見つからなくて(汗)