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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

短編集 「自殺願望者」「ガチホモ」「メソポタミア」「幸せな国」

作者: 竜司
掲載日:2011/07/08

raki&竜司の、竜司です。今回は相方との合作ではなく、僕一人で書きました。僕の作風が滲み出ているというわけではありませんが、一応自分らしさが出せたかなと思います。では、ジュースでも飲みながら、どうぞ。




 自殺願望者



 友人は死にたいらしい。

 最近よくそのことばかり口にする。

 今日、友人が家に来た。

「お前、なんで死にたいんだ?」

 友人は青ざめた顔で――しかしどこか嬉しそうにこう言った。

「唯一の友達のお前が、死んだからだよ」

 そうか。そういうことか。




 ガチホモ



 ヒロユキは格好良いというか、可愛かった。まるで女の子みたいで、私は彼の

友達になりたかった。

「ねぇユキ。ヒロユキ君って彼女いるの? いなかったらアタシ狙っちゃおうか

な~」

 ミズキはそう言って一人で舞い上がっていた。

 ミズキは彼のことが好きらしい。

「私に聞かないでよ。知ってるわけないじゃん」

 ――だって、と言おうとして留まった。ちょうど教室に彼が入ってきたからだ

 かわいい!

 毎度見てもびっくりする。あれで女装したら男はみんな虜になるんじゃないだ

ろうか。私は彼を見る度、彼の女装姿を思い浮かべる。黒目がちの大きな目、小

さい顔、白い肌。フリルのミニからスラッと伸びる細い太もも――

 多分、横でヒロユキを見つめるミズキよりも可愛くなってしまうだろう。恐る

べしヒロユキ。

「今度3Pしよっか」

 ミズキが唐突に言った。

「できるわけないじゃん。私たち如きがさぁ」

「なんで~? ユキめっちゃ可愛いじゃん」

 ミズキの方を向いたら、いきなりキスされた。

「ちょっと~」

「アハハ」

 ミズキは満面の笑みで、私の太ももに手を置いた。スカートから伸びた白い太

もも。

「ねぇ」

 徐々にミズキの手はスカートの中に侵入してくる。

 机があるので、周りはそれに気付かない。傍目からは女の子が二人並んで座っ

ているくらいにしか映らない。ミズキの表情が少しずつマジになってきた。

「この講義のあと、授業ないよね?」

 小さい声でそう言った。言いながらミズキは私の秘密の園に手を到達させた。

 私も少し――息が上がった。

「じゃあ」

 じゃあ?

「しようよ」

 私は勃起した。

 ミズキのスカートも隆起していた。




 メソポタミア



 僕は田宮竜也。学校は嫌いだ。

 いわゆる虐めを受けている。

 先生たちは気付いていない。

 まぁそれは別にいい。

 第一、虐めというよりかは、避けられているといった感じか。長期休暇ってあ

るだろ。教室をワックスがけする際に机を外に出すわけだが、休み明けに学校に

着いてみると……これ以上は思い出したくない。

 それより、僕にはやるべきことがある。

 そういえば、体育の時間も辛かったな。選択のときなんて、友達がいない奴は

浮くしかない。つまり僕のことだが。

 誰も誘ってくれなかった。

 まあ、何だかんだ言って自分から空気みたいにひっそりと参加はしたが。

 昼休みもきつかった。みんな影で笑っている気がした。僕が一人で飯を食って

いるのを。

 最初の僕のアダナはTTだった。イニシャルだろう。

 僕が教室に普通にいるときも「TTきもっ」とか大声で言う奴もいた。お調子

者だ。他のクラスメイトはクスクス笑うだけだった。

 辛かったなあ。

 次のアダナはメソポタミアだ。メソポタミアがどうのこうのと、明らかに僕の

ことを言っているようにしか聞こえない。本当に嫌だった。

 何で学校行ってるんだろうって疑問に思った。

 勉強も大してできないし、自分で言うのもなんだが顔は普通過ぎる。

 その上友達の一人もいないで避けられている。理由はよくわからない。どうし

て僕を避けるのか。高校なんて義務教育じゃないんだし、やめてやろうかと本気

で思った。

 ただ、ひとつ心残りがある。もう二度とこの教室には来ないが、去る前にやる

べきことがある。

 これを見ろ。仕入れた物だ。

 爆弾、ダイナマイトって言われてるかな。

 さて、これで、一年間の思い出作文発表を終わりにします。

 さようなら。

 そしてまた会おう。

 アノヨデナ




 幸せな国



「お父さん」

「なんだい、エンジェル」

「太陽ってなに?」

 娘のエンジェルはまだ小さい。天使のように可愛いが故のこの名前だ。

 今でこそキューピットのようだが、大人になれば本物の天使になるだろう。

 この国ではよくある名前だ。

「太陽はね、光だよ」

「光って、光るアレ?」

 きっと娘は、この前ショッピングセンターで見かけた懐中電灯を思い出しなが

らアレと言っているのだろう。

「違うよ。もっと大きいんだよ。懐中電灯よりでっかいんだ」

 娘は、目を細めて太陽を見つめているようだった。少し雲に隠れているので、

そう強い刺激には至らないかもしれないが、これはしつけないとマズい。

「エンジェル。あまり太陽を見続けてはいけないよ」

 エンジェルはすぐに顔を下に向けた。本当に良い子なのだ。近所のお母さんた

ちも娘を褒めてくれるのだ。

 それくらいエンジェルは素直だ。きっと私に似たのだろう。

「何で空に浮いてるの?」

「…………」

 私は少し言いよどんだ。

「お父さん?」

「あ、あぁ。た、太陽はな、浮いてるんじゃない」

「?」

「あれは――設置されているんだよ」

 娘に設置という言葉がわかるかどうかはわからない。ただ、こうやって私は娘

のボキャブラリーを増やしているつもりだ。

「へ~」

 娘はそれだけ言った。設置という言葉が何であるか、知っているフリをしてい

るのか? そういうところもまた可愛げがある。私は笑った。

 私は幸せらしい。

 家に帰ったのは、夕日も沈みかけた暮れ時だった。

「おかえり。こんな遅くまでどこにいたのよ」

 妻は笑顔で出迎えた。

 私は寝てしまった娘を抱いたまま、一度だけ振り返って太陽を見た。

「ジェット?」

「……エリ。エンジェルがね、太陽に大層興味を持ったようだよ」

 赤い。

 夕日は毒々しいほど赤い。

「太陽に」

「そう。だから、説明した」

 私がそう言うと、エリはハッと息を呑んだかのように、口元に手をやった。驚

くのも……無理はない。

 家に入って一息ついた。

 エリが紅茶を持ってきてテーブルの向かいに座った。私は紅茶をチビチビと舐

めながら、エリの瞳を見つめた。彼女は私に説明を求める眼差しを送っている。

エリは綺麗だ。

「……ジェット。あの子に何と説明したの? まさか」

「違う」

 私は否定した。

 別に頑なに否定するほどの内容ではない。それはわかっている。ただ、エリは

極度の心配性だから、私もこういう口調になる。

 窓から差し込む夕日はやはり毒々しかった――が、あまりに美しかった。

「僕は嘘は言えない」

「知ってるわ。でもあの子はまだ幼い。本当のことを言うなんて」

「問題ないよ」

「普通、どこの家でもあと十年は教えないわ」

 十年は言い過ぎではないかと思った。

「あなただって――」

「僕が知ったのは十九の頃かな。大学に入ってすぐだった」

「あたしは十七で知ったわ」

 早いな。

 妻は堅実さを備えている。それを両親も理解してのことだろう。両親が教えた

とは限らないが。私はといえば、友人から聞いて知ったのである。妻がそれを知

ったら、不謹慎な友達だなんだと散々言われそうで怖いから、私も親から伝えら

れたということにしている。

 ――この事実を知っているのは、世界でもこの国だけらしい。この情報が外の

世界に何故漏れないかと言えば、それは謎である。物わかりの悪い者には教えて

はならないという習慣も存在するため、知らない者もこの国ですら多い。要は、

秘密を守れる人間にのみ伝わっているから――というのが理由ではなかろうか。

あまり口にはせぬから、そもそも軽々しく話題にしてはならないタブーだ、とに

かく国民は――少なくとも私の知る限りの国民は、あのことについてさほど詳し

くない。初めて知らされたときは、にわかには信じられなかったから友人を問い

詰めた。

 だが友人も詳しいことはわからないようだった。

 だからといって私もムシが収まったわけではなく、しかし聞き回るつもりはな

かった。大体において怖かった。太陽に関するあの秘密を知ったときから、私は

何故だか世界を信じられなくなったのだ。

 確信はある。実際に私は、アレに……

「ジェット」

 妻が放心した私の名を呼んでいた。娘が言うまで忘れていた記憶が呼び覚まさ

れ、妻に話すことで鮮明な過去の残像が脳裏に蘇っていた。

 小鳥が窓の外を横切った。それがわかったのは、部屋を照らす夕日の影のせい

だ。

「あの子には、嘘はついていない」

 私はソファで眠る一人娘を横目で見据えた。

「いいかい。嘘は言っていないが、娘はきっと信じていないよ」

 まだ物心つかない年だ。私の言葉など一年も経てば忘れていよう。

「……そう」

 エリはしばらくの間を置いて、そう結んだ。あまりこの話は口にするものでは

ない。それを妻もわかっている。

 私は、もう一度、太陽を見た。

 アレは……

 人工物なのだ。

「勿論、僕も初めは信じなかったさ。でも、僕はアレを……」

「もうその話は聞きたくないわ。前に言ったでしょう」

 以前、この話を妻にしたことがあった。話さずにはいられなかったのだ。

 これはあまりリアリティのない話だ。まず、私が国家自然管理局の理事長を勤

めていなければあんな体験は一生できないだろうと思う。二度と体験したくない

。アレのせいで私の中の既成世界はもろくも消え去った。端的に表すなら、幻滅

である。

 宇宙開拓総合会という組織が存在する。その会は、事実上国家のもとで運営さ

れているが、形式上では国家に従しない独立団体に等しい。会長は内閣に媚びを

売るどうしようもない男で、かなり強欲であった。

 私は彼と私的な繋がりを持っている。

 彼はあるとき太陽に関するあの秘密が真実か否かを確かめようという極秘プロ

ジェクトを立ち上げた。私もそれに参加した。証明方法は実に簡単だった。

 我々は、特製の防具服を着てシャトルに乗り込み――アレに触れた。実際に手

で太陽に触れた。太陽は地上からそう離れた場所にはなく、案外に近かった。た

だの、大きな懐中電灯だった。

 思い出したくない。



「こんばんは。ニュースの時間です。今日、T大学医学部の南方教授はスモール

ピープルに新たな動きが見られたと発表しました。彼らは世界を囲う檻を抜け出

すためと思われるジェット機の製造に乗り出したようです。実に八年前の太陽接

触以来のことです。南方教授は今後も慎重かつ悠長に彼らからの"接触"を待つつ

もりだということです。続いて、東京都世田谷区で起こった……」



読んでくれて有難う。これからも精進します。既に第二弾の制作に取り掛かっています。では、また。

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[一言] けっこう面白かったかな。面白い順に、「自殺願望者」「ガチホモ」「メソポタミア」「幸せな国」という順。
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