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あやかしと人が住む世界④

読んでいただいてありがとうございます。

 桜と別れていつも駅で降りると、依織は近所の人たちに挨拶しながら仕事場へと向かった。

 古い木造の建物は、依織が生まれた時代ではノスタルジックな感じで流行っていた。

 写真映えする建物だが、ここではこれくらいの建物はいくつもある。

 というか、たまに建物そのものに付喪神が宿っている時もある。


「おはようございます」

「おはよう、依織」


 すでに職場にいたのは、上司の文香だ。

 真っ直ぐな黒髪の日本人形みたいな女性で、人ではないあやかしなのだが、種族はよく知らない。

 ただ、ずいぶんと長い時を生きていると聞いたことがあった。


「今日は南地区に手紙を持って行ってね」

「はい。この二通ですね」


 一通は茶色の封筒に入っているが、もう一通は、薄い緑色の封筒に入っていた。

 茶色の封筒の方は、大店のご主人宛だから問題はない。薄緑色の手紙は、手触りがつるんとしていた。

 宛先は、近くの川に住む河童の一体の名前だ。

 河童のような水に関わりのあるモノに手紙を送る場合は、水に濡れても大丈夫なように紙に特殊な加工が施されていて、こうしてつるんとした手触りになる。

 

「それから帰りに艶子さんのところに行ってね。出したい手紙があるそうだから」

「はい」


 近くに行く用事がある場合は、出したい手紙を受け取りに行くこともある。少し別料金はかかるが、頼まれれば取りに行く。

 手紙の料金は、様々だ。

 当然ながら、遠くに行けば行くほど高くなり、火の山や海の中など、難しい場所になればなるほど高い。

 それでも、手紙は送り続けられる。

 依織は、事務所内で仕事をした後、二通の手紙を持って外へ出た。


「行って来ます」

「気を付けてね」


 文香に見送られて南地区に向かう。

 何の変哲もない、日常。

 日本にいたって、きっと同じような日々を送っていただろう。

 ただ、その日常そのものが、ちょっと思い描いていた日常と違うだけで。


「あー、本当にいい天気だよね」


 たとえ、見上げた空に一反木綿が飛んでいて烏天狗っぽいモノと軽く接触事故を起こして揉めていようと、そのさらに上空を龍が飛んでいようと、下を見れば外見幼女、実年齢数百歳のあやかしが、依織に何かのご褒美なのか飴ちゃんをくれようとしていても、天気がいいことに変わりはない。

 この愛すべき日常にすっかり慣れた依織は、今日も仕事のために雑踏に紛れ込んで行ったのだった。


 

軽い説明パート、終了です。

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