【第一章】別れ
「ねぇ、この世界でたったひとつだけ自分の思い通りに叶えられるとしたら何がしたい?」
僕は、この質問に答えることが出来なかった。
あれほどまでに悩んだこともない。
あれほどまでに悔やんだこともない。
一匹の蝉が先陣を切って鳴き始めた初夏。
僕は幼馴染のユウといつもの防波堤の側を歩いていた。
この時期になると、家までの近道という訳でもないが
防波堤の側を歩くのが二人のルールとなっていた。
「私、高校生になったんだよ! どう、制服似合うでしょ」
「私って同い年だろ。制服も毎日見てるしどうってことない よ。」
「嘘つかないでよね。夏服、今日が初めてなんだから。」
そこからしばらく歩き、あと二つ先の角を曲がればユウの家に着く頃
「ねぇ、この世界でたったひとつだけ自分の思い通りに叶えられるとしたら何がしたい?」
突然の質問に戸惑ったのもあったが、彼女がそんなことを考えているなんてと驚いた。
「うーん。なんだろうな。今は思い付かないな。」
「ふぅん。そっかー。じゃあ明日までの宿題ね!」
そういって一つ目の角を曲がった所で分かれた。
翌日、ユウは学校を休んだ。
普段からあまり連絡を取る方ではなかったので気に はしていなかった。
何事もない一日を過ごし、家に帰ると母が泣いていた。
「ユウちゃんが事故に遭って、さっき‥‥」




