妖怪騒動3
おじいさんのありがた~い おはなし。
同じころ、主水は夜泣きそばを食べていた。
「おやじ、ここに置いとくぜ。」
主水がそば代をおいて、暖簾を出ようとして、振り返ると………。
「か、顔がねえ………。」
次の日、雨の中、又八は古い寺に住んでいる刀舟のところにやってきた。
「先生、すまねえが、うちの母ちゃんが、腰を痛めて」
「おう、いまいくぜ」
刀舟が、外に出ようと、玄関の脇にある番傘を取ると……。
「人間じゃねえ?」
何と、人の足を握っている。握った足の上の方を見ると……。
「人間じゃねえ!!!」
番傘は舌を出して笑った。
江戸の町中に妖怪がいるようだった。この妖怪騒ぎの中、番町では、古い井戸から毎晩お皿を数える女の幽霊が出るという評判があった。この幽霊がなかなかの美人であったため、毎晩見物客が集まっていた。そして今夜は、高名な沢庵和尚がお経をあげて、霊を鎮めるということで、いつも以上に見物客が集まっていた。
「さて、そろそろですかな。」
あたりが暗くなったころ、古井戸から白い女の幽霊が現れた。沢庵はかじっていたたくわん静かに置くと、
「なんまいだ~。」
<いちま~い>
「なんまいだ~。」
<にま~い>
「なんまいだ~。」
<さんま~い>
「なんまいだ~。」
<よんま~い>
「なんまいだ~。」
<ごま~い>
「なんまいだ~。」
<ろくま~い>
「なんまいだ~。」
<ななま~い>
「なんまいだ~。」
<はちま~い>
「なんまいだ~。」
<きゅうま~い>
「じゅうまいだ~。」
<あった!よかった!>
女の幽霊は、うれしそうに、すーっと消えて行った。
沢庵は、置いたたくわんをまたかじると、満足そうにうなずいて立ち去って行った。
その頃、猫又たちのお堂では、又八とさくら、ど〇きつねたちが集まっていた。
「河童に、子泣き爺、ぬりかべ、ぬらりひょん、唐笠お化けにのっぺらぼう、座敷童ですね。」
妖怪図鑑を見ながら、マーキュリーが確認している。
「わしの方では内蔵助が、ろくろ首にあったそうじゃ。」
「この調子だともっといそうね。」
ムーンが図鑑をのぞきこんでいると、そこに桜吹雪の遊び人の金さんが現れた。
「待たせて済まねえな。いやな、さっき番町の幽霊が除霊されてな。」
「あの皿数えるやつか。」
「ああ、なんでも10枚数えたら、よかったみてえだ。」
「ねえ、又八さん。あの壁、下を掘ると消えたわね。」
「そうだ。おらが掘ったら消えただ。」
「みんな弱点があるんじゃないかしら。」
「さくらさんは、なかなか賢いのう。」
猫又ばあさんが、うなづきながら答えた。そこで金さんが
「いや、ひとつずつ弱点を調べて行ってもキリがないぜ。」
「そもそも、なんでこんなに妖怪が出るようになったのかなぁ?」
ムーンが、素朴な疑問を口にすると、マーズが
「馬鹿ね、そんなのお話作るうえでのお約束でしょ。」
「設定よ、設定。」
「怨霊退散!!!」
ど〇ぎつねたちが騒いでいるなかで、マーキュリーがパソコンを操作し始めた。
「今から、約600年程前に京に『異界の門』というのが出現して、多くの怪異や悪霊が現れたらしいわ。」
「『異界の門』?」
「それが、今の江戸の町に現れたって訳かい。」
金さんは、そういった後、しばらく考えた後
「他に何か分かることないかい。」
「この時は、和歌や音楽で霊を鎮めて、封印したんだって」
「又八さん、『わか』ってなに?」
「若くて、偉い人たちだな。」
相変わらずの珍問答だが、なぜか大きく外れず。
「当時の若者、藤原教通や小式部内侍たちが活躍して、和泉式部が鎮めた将門の霊を使って、安倍晴明が封印したんだって。」
「おい、将門って、あの将門塚の平将門か。」
「そこが、『異界の門』なのかしら。」
「でも、何で封印は解かれたの?」
ここで前章とつながってきます。