千鬼夜行
おじいさんのありがた~い おはなし。
奉行所から八月三十日に四谷近辺で大がかりな門探しを行うというお触れが出された。
自宅に妖怪がいる者は共に参加するようにということであった。発見者には奉行所から金一封が送られる。これでお堂に集まっていた妖怪以外の妖怪たちも集めることができると金さんは考えた。
夕刻から始まったそのイベントは数万人規模の参加者となり、町中が大騒ぎとなった。
お堂にいた妖怪たちは、5人のど〇きつね。又八とさくら、猫又ばあさんの7組に分かれ、それだけでなく今回はお杉かあさんもぬらりひょんと参加することになった。
調べてみると人と会話できるものが数体、それに化け猫たちがいるのでコミュニケーションに問題はなかった。
しかし、何を勘違いしたのか、自分も妖怪の格好をした若者たちが、四谷ではなく渋谷の町を練り歩くようになったそうな。これで渋谷の街は大混乱し、主水らお役人が「会場は四谷です。」という看板を持って、総動員されることになった。
その夜、刀舟は往診を終えて、夜道を歩いていた。四谷にほど近い九段の急な坂道をトレードマークの破れ傘の代わり「唐笠」の足を持って上っていた。このころの九段は、急な坂道が九段の階段となって続いていた。
「今日は四谷で門探しだってな。お前も帰れるといいな。」
唐笠はうなずくように舌を上下に振っている。
「ん?何か階段が増えてないかい。ひー、ふー、みー……とお?」
唐笠が急に暴れ出した。
「おい、ここ九段のはずだよな。」
刀舟の知らせで、異界の門の場所が発見された。
さくらは、早速葛葉を呼び出し、霊界と連絡をとった。そして深夜十二時の鐘がなるとともに門が開き、妖怪たちは帰っていくこととなった。
「お世話になりましたな。これで皆で帰れますわい。」
「よかったね。運動会頑張ってね。」
ムーンが油すましらと別れを惜しんでいる横で、一部の妖怪たちはジュピターらとともにダンスの最後のレッスンをうけている。運動会で披露するのだそうだ。霊界にも「きつねダンス」をバズらせたいらしい。
「いや、また来年の夏には寄らせてもらいますよ。」
「まあ、ええけどな。土産持ってきな。」
お杉かあさんもすっかり、ぬらりひょんと親しくなったようだった。
ゴ-ン
十二時の鐘がなるのと同時に、九段の坂の十段目付近がぼーっと明るくなり、木造りの門が現れた。そして、門が開くと中には一人の美少女が立っていた。
「みんな、帰るわよ!」
その声に反応した妖怪たちは列をなして、門の中に入っていく、千体近い妖怪たちが九段の坂を列をなして上っていく。後に「千鬼夜行」として語られる大行列を沿道から数万人の江戸っ子たちが見送っている。
「元気でな。」
「来年も来いよ。」
去っていく妖怪たちが夏の終わりを告げるように思われたのであろう、江戸っ子たちは口々にお別れの言葉をかけている。
急にお城の方から何かが破裂する音が次々と響いた。
パーッと広がる光の輪が、見送られる妖怪や江戸っ子たちの目を引いた。
「将軍様もやるわね。花火って」
「ね、ムーン。私たちも何かやんない。」
「よーし、行くわよ。」
ど〇きつねたちは「きつねダンス」を踊り始めた。そのリズムに合わせるかのように妖怪たちは踊るようにして門に向かって進んでいく、
お祭り騒ぎの中、最後の一体が門に入ると、門の中から小式部内侍がさくらたちに手を振って、軽く頭を下げると、門は音もなくすーっと閉まり消えていった。
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
夏の初めと終わりは花火じゃな。
ひと夏の妖怪騒動でした。




