江戸っ子は違うねぇ
おじいさんのありがた~い おはなし。
江戸の町のいたるところで、夜になると妖怪が現れるようになったが、さすがは江戸っ子、妖怪にすっかり慣れてしまっていた。
今夜も、主水は夜泣きそばを食べていた。
「おやじ、ここに置いとくぜ。」
主水がそば代をおいて、暖簾を出ようとして、振り返ると………。
「今日も、顔がねえな。まあ、元気でがんばんな。」
雨の夜中、古い寺に住んでいる刀舟のところに男がやってきた。
「先生、すまねえが、うちのじいちゃんが、腹が痛いって」
「おう、いまいくぜ」
刀舟が、外に出ようと、玄関の脇にある番傘を取ると……。
「人間じゃねえ。」
刀舟は、握った人の足をくすぐっている。
「人間じゃねえ!!!」
番傘は舌を出して笑った。
もう、暑さのピークを越えたころには、妖怪にもすっかり慣れて、逆に妖怪を驚かせたり、いたずらをするものまで現れた。そういうわけで、人と妖怪は、毎晩、驚かせ合ったり、いたずらし合ったりで、騒がしく過ごしていた。
さて、江戸にもどった翌日、猫又たちのいる古いお堂に集まった、又八夫婦、金さん、ど〇ぎつねたちは、お堂の中にぎっしりと集まった妖怪たちに囲まれていた。
「ねえ、なんで、昼間っからこんなところに出てるの?」
ムーンが猫又ばあさんに訊ねると、猫又ばあさんは頭の手拭いの上に何かを載せたまま答えた。
「いやなぁ。内蔵助たちとすっかり仲良しになってな。明るいところは苦手だってここに集まっとる。」
「内蔵助ちゃんは妖怪と話せるの。」
「おいらたちも妖怪だしにゃ。話せばわかるにゃ。」
「それで、なんでこんなに増えてるの。」
「いやなぁ。最初はいたずらしに来てたらしいんじゃが、どうやら今は帰れなくなっておるそうなのじゃ。」
「難民問題ってわけかい。」
金さんも意外だという表情をしている。
「妖怪たちの住むところで、何かがおきたらしいの。」
「京ではそんな話聞きませんでしたよね。」
しっぽに何かがぶら下がっているのを払いながら、さくらは懐から護符を取り出して、葛葉を呼び出した。
「は~い、呼んだ? わあ~、なあにこの子たち」
葛葉も、お堂に集まっている妖怪たちをみて、さすがに驚いたらしい。
「この原因を知りたいのよ。聞いてきてくれる?」
「わかったわ。任せて」
葛葉がすっと現れて、消えるのを猫たちは驚いて見ていた。その時、又八は妖怪の中に見知った一体を見つけ、その前にすたすたと歩み寄った。
「じいさん、話できるだ。ぬらりひょんじいさんだぁ。」
「さすが、わかりましたか。そう私はぬらりひょんです。」
「なんでこうなってるだ?」
「いえね。私たちはいたずらに来たんですがね。後から来た者たちが、」
「そこからは、わしが説明しよう。」
部屋の隅にいた重ねた石にわらをかぶせたような妖怪が話し出した。
「おめえも話せるだか。」
「話せんの?」
「翻訳機要りませんね。」
「こいつは多分、油すましって妖怪だぜ。」
なぜか、妖怪たちにダンスのレッスンを始めたジュピターたちを横目に、金さん、ムーン、マーキュリーも、ぬらりひょんとその横にいる油すましに近づいた。
「わしらから悪意を消して、妖怪にしてくれた女神がおってな。その女神がこっちに行ったので、みんなついてきたんじゃ。しかし見失っての、その上、この数百年穴が開いていた異界の門の穴がふさがれてな。帰り道も無くなってしまったんじゃ。」
「それは困ったことだな。」
「そっか、みんな迷子になっちゃったんだ。」
又八とムーンが妖怪たちに同情していると、金さんとマーキュリーは何かに思い当たったようだった。
「ねぇ、ムーン。異界の穴って?プルートさんが帰ったからじゃないですか。」
「その女神って、まさか小式部内侍って言わねえかい?」
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
こういうのをマッチポンプというんじゃ。
気を付けるんじゃぞ。
結局原因は自分たちなのか?




