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おでかけー小式部内侍の場合

おじいさんのありがた~い おはなし。

 さて、話は、一行が京に戻る前日。

 小式部は約600年後の京の町に向かう高瀬舟の上にいた。

「さて、どこから行こうかな。ね、葛葉ちゃん。」

 半透明な二人は、舟の上から建物は変わっても、600年経っても変らない京の街並みをキョロキョロと見まわしていた。

「鴨川は変らないわね。」

「でも、河原が狭くなってるわ。橋も新しくなってるし」

 鴨川に沿って三条大橋のあたりで舟を降り、建て直され様子が変わったと聞いた清水寺を見に行った。

「私、ここから落ちたんだ。」

 下から見上げると結構本堂が高く見える。見ていると人が落ちてくる。

「え?ちょっと、何してるの。」

 上の方から歓声が聞こえる。落ちた男が、元気に立ち上がって手を振ってこたえている。

「なんか、小式部ちゃんが落ちて、無事だったでしょ。あれから、観音様に願かけて飛び降りる人が、結構出るようになったのよ。まだ続いていたのね。」

「何で?私、業平様に助けられたんだけど。」

「あなたのお母さんが『観音助けたまえ』って叫んだからだってことになってるわね。しかも、あなたは小さな子供設定ね。そうやって、お寺が清水の観音様のありがたい話として広めたみたいね。」

「お寺の宣伝になっちゃったんだ。でも観音様も大変ね。」

 寺の若い僧たちが、男を連れて行く後ろで、観音様が手を振っている。

「やあ、また会ったな。」

「観音様、大丈夫?」

「わしがいないうちにな。3人も飛び降りて大けがしたものが出ての。」

「それは、観音様のせいじゃないでしょ。」

「いや、わしに祈ってから飛び込んどるから、信用問題じゃ。」

「それは困ったものね。」

「そうじゃ、ここに弟子たちを待機させねばならん。祈られて反応するのはわしじゃからのう。」

「禁止できないの?」

「いや、禁止しても、毎月何人か飛び降りるものが出るんじゃ。あっ!」

 上から、また一人落ちて来る。前の男が無事だったので続いたのだろう。観音様は弟子たちに観音様特性マットを広げさせて、受け止めた。男は無事着地した。また上から大歓声が上がった。欄干にまた一人立ったようだが、僧たちが止めているようだった。

「これ、誰かが大けがするまで続きそうね。」

「そうじゃのぉ。」

 観音様は、先ほど飛び降りた男が、連れていかれる後ろから、膝カックンをかました。男は不意に倒れて、頭を地面に強く打ち付けた。気絶したようだった。


 観音様と別れた二人は、産寧坂の茶店に寄って休憩していた。

「このわらび餅おいしいよ。」

「いいな。葛葉ちゃんだけおいしそうなもの食べて、私食べらんないのよね。」

「いいでしょ。食べる?」

「これだったら実体化してもらえばよかったかな。それ食べたら、大江山よ。」


 酒呑童寺に続く、整備されて石段と道に沿った商店街ができている参道をキョロキョロしながら二人は上っていた。

「この辺りだったよね。」

「こんなところに石碑が立ってるわ。」

 ホストクラブ『GENJI』跡という石碑をみて二人は大笑いしている。

「こんなもの作られたんだ。」

「晴明さんと式神さんの悪霊退治の話になっているけどね。」

「え?本当?」

「うん、なんでも屋敷にとりついた悪霊を、晴明さんが式神使って退治したって、それで悪霊の正体は、なんと晴明さんのご先祖様だったって話かな。」

「う~ん、あいつらがご先祖っていうのは晴明さんかわいそう。」

といって、小式部はけらけら笑っている。


 酒呑童寺の正面に着くと、小式部は立ち止まって、何度も改装されたが、600年前と同じ場所に立っている建物を見上げていた。こぼれた涙を拭った後。

「なんか、変ってるけど、変らないね。またここでライブやりたいな。」

「ね。銅像がいっぱい立ってるわよ。」

 正面の入り口に通路を作るように、何体もの銅像が立っている。

「ミスターコブー、酒呑童子、茨木童子、道長さん、将軍様、あっ、ママだ!」

「もしかして、小式部ちゃんのもあるんじゃない?」

「え……。あっ、博雅さんだ。」

しかし、並んでいる銅像に小式部の像はなかった。


「え?まさか…、小式部さん?」

 小式部の姿を見たぶーは、驚きとよろこびで泣き崩れていた。

「お久しぶりね。遊びに来たわ。」

「つい先日、小式部さんの話をきつね娘たちとしたばかりでした。まさか会えるなんて、みんな呼んできます。」

 ぶーは生き残った仲間の鬼を慌てて呼びに行った。

「それにしても、なんか変ね。」

「小式部ちゃん、どうしたの?」

 ぶーが、残った2人の鬼を連れてくると、またまた大泣きに泣いている。

「もしかして、小式部さんの怨霊ですか?」

「え? なんで怨霊。霊体をこちらの人にも見えるようにしてもらえたの。」

「ああ、位相変換か。あれ使用中止になってなかったか?」

眼鏡をかけた鬼がいうと、まっしろなぼさぼさ頭の鬼がうなずいている。

「恨まれて怨霊になったかと思いました。」

「なんで、わたしがぶーさんを恨むのよ。」

「この600年で、あなたの働きが、どんどん消されているんですよ。」


小式部の未来探検記でした。

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