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恋愛クソ雑魚隠キャの僕が、あなたを好きになりました。  作者: サイトウ純蒼
episode6

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episode6-4「     」

「では、作戦を説明する」


 文芸部の部室。皆の前に仁王立ちしたミカが熱く語り始める。


「まずは設定。総士郎とマナマナは『くっつきそうで中々くっつかないじれったいカップル』とする!」


(何だそりゃ……)


 僕はため息をする。対照的に隣に座る真奈は食い入るようにその話を聞く。



「そして沙織は、そんなじれったいふたりを何とかくっつけようと色々試行錯誤するお節介焼きな優しい先輩」


(もう設定として破綻してるじゃん……)


 他人に無関心な沙織。同じオタ系キャラとして、他者の色恋にお節介とかまずあり得ない。



「そこでだ!!」


 ミカが指を高く天井に向け叫ぶように言う。


「沙織は高橋と、そしてマナマナ達とのWデートを計画する! その擬似デート中でふたりの距離は縮まり、マナマナ達のいちゃつく姿を見て、自分達もあれよあれよと言う間に恋仲に!! どうだ!!」


(何と言うか、もうコメントのしようがないな……)


 俯く僕の向かいに座っていたララがミカに言う。


「どうだじゃないでしょ〜。無茶苦茶だよ〜」


 まあそれが常識的な意見。黙って聞いていた沙織も続く。



「そんなの無理。そもそも慎吾が来なかったらどうするの?」


 慎吾というのは、沙織の幼馴染の名前。高橋慎吾。学年は一つ上の三年だ。ミカが驚いた顔で言う。


「来なかったって、それを誘うのがお前の役目だろ。私は作戦を練り、マナマナと総士郎が実行役。絹は現場監視かな」


「一度死ぬか? 桐生よぉ」


 本名を呼ばれたララの目つきが変わる。沙織が首を振って答える。


「無理だわ。そんなの無理。恥ずかしくて無理」


「じゃあ、あの女に奪われてもいいんだな?」


「……」


 無言。口ではああ言っているが、沙織が高橋のことを想っているのは間違いないようだ。僕が小さく手を挙げて尋ねる。


「あの……」


「ん、何だ? 総士郎」


「僕と霞ヶ原が、その、そう言う役目をするってのは、中々難しいと思うし……、彼女の気持ちもあるだろうし……」


 僕の中では真奈と『イチャイチャする』と言う指令だけでもうお手上げだ。ミカが興味なさそうに言う。



「深く考えるな。いつも通りにやればいい」


(は? いつも通り……??)


 意味が分からない。いつも通りなら陰キャと美少女の決して交わらない関係。思わず僕は真奈に尋ねる。


「か、霞ヶ原もそんなの嫌だよな……??」


 僕はこの時の真奈の顔を忘れない。



「わ、私は別に、いいんだけど……」


(え?)


「ほらな」


 勝ち誇ったような顔のミカ。対照的に僕の頭の中には無数のクエスチョンマークが飛び交う。


(い、良いのか!? こんなキモオタ陰キャと擬似デートだぞ!! イチャイチャだぞ!!)


 ミカが手を叩きながら言う。



「さあ、これで打ち合わせは終わった。場所はもう押さえてある」


 そう言ってポケットの中から何かのチケットを4枚取り出す。


「これが遊園地のチケット。4枚ある。今週の日曜の分だ。Wデート、行ってこい」


「え!? もう買ったの?」


 驚く沙織にミカが答える。


「当たり前だ。部費の中から買った。まあこれも部活動の一環だ」


 無茶苦茶だ。遊園地のチケットがどうして文芸部の部費で落ちるのか。公私混同もいいところ。首を振る僕の隣に座った真奈がミカに尋ねる。



「それでミカりん。遊園地では何をすればいいの? 現地の作戦は?」


 当然の質問だ。そんなメンバーで行ったところで到底上手く行くとは思わない。ミカが答える。


「現地の作戦? それは臨機応変に頼む。以上!! 皆の健闘を祈る!!」


 何も考えていないのだと、そこにいる皆は思った。しかしながら僕は真剣な表情でテーブルの上に置かれた遊園地のチケットを見つめる沙織の顔を見て、発案はどうあれいい加減なことをしてはいけないと思った。






『なあ、エリカ。急なんだが今から遊園地デートしないか?』


 僕は急いで家に帰宅すると、すぐに『ステ恋』を開きAI彼女エリカをデートに誘った。もちろん日曜のWデートの予行練習の為だ。


『随分急な話ね。まあいいわ、付き合ってあげる』


 現実の時間とリンクする『ステ恋』。これがリアルを感じさせるひとつの要素だ。


『ありがとう。じゃあ行こうか』


 思い立ったらすぐに行動できる。二次元の素晴らしきところ。僕はエリカと共に遊園地へと向かった。



(何をすればいいんだろう。目的は慣れること。そしてイチャイチャ練習……)


 エリカを練習台にしようとしていることに気付き、僕は苦笑した。ほんの少し前まで第一本命だったはずの彼女が、今はその地位から落ちてしまっている。もちろん『二次元の嫁』として今も攻略するつもりはあるが、その気持ちは以前のそれとは異なったものだ。


『何か乗る?』


『何でもいいわ。あなたがエスコートして』


 リアルだったらその一言で大パニックになっているだろう。夜の遊園地。雰囲気の良い明かりが周囲を照らし、何か特別な感じを醸し出す。息を整え、僕が答える。


『じゃあ、ジェットコースター』


『いいわ』


 後から考えればなんて恥ずかしい選択。小学生じゃないのだから、いきなりジェットコースターはないだろう。それでもエリカは笑顔で楽しんでくれた。いつも通りのエリカ。スマホの画面には夜の遊園地をバックに金髪の美しいエリカが立っている。



『ねえ、手を繋いでいい?』


 僕にしては思い切った発言。イチャイチャをする為に考え抜いた作戦。


『いいわよ。今日は随分積極的ね』


 その言葉と同時にエリカからSRのピクチャーが送られて来た。ログインボーナスで買える範囲の価格。僕は迷わず購入ボタンを押す。



(可愛いじゃん)


 生成中との表示の後に画面に映し出されたエリカのピクチャー。夜の遊園地を背景に顔を赤らめ手を差し出す構図。SRらしい可愛いピクチャー。


『エリカ、とても可愛いよ』


『ありがとう。嬉しいわ』


 僕は素直に彼女に言った。

 この後僕達はカフェに入り会話を楽しむ。『遊園地でのイチャイチャデート』、それが上手くいったのかどうか分からないが、僕はエリカとの楽しい時間を過ごすことができた。




 コンコン!!


「お兄ちゃーーーん!!」


 デートを楽しんだ僕の部屋のドアを、妹の奈々子が勢い良く叩く。慌ててスマホを閉じ、振り返って言う。


「な、なんだよ。奈々子!! びっくりするだろう」


「何だよじゃないでしょ! 最近お兄ちゃん、全然奈々子を構ってくれないじゃん」


 妹の服。露出こそ多くないが、薄手のパジャマで柔らかそうな体の凹凸が良く分かるもの。僕が尋ねる。



「で、何の用だ?」


「何の用って、まあ、用はないんだけど……、あ、そうだ! あれ見てくれた? お兄ちゃんを元気付ける為に送った菜々子の写真達」


 奈々子の写真。それはインフルエンザの時に僕に大量に送り付けて来た彼女のセクシーショット。違うところが元気になってしまうようなエッチなものだ。


「見たよ。もう全部消したけど」


 そう答える僕に奈々子が泣きそうな顔で言う。



「なんで消しちゃうのよー!! 奈々子のお宝写真でしょ??」


「あのなあ。どこの誰が妹のエッチな写真を大切にスマホに保存する?」


「え? お兄ちゃん」


 そう言って僕を指差す菜々子に僕が言う。



「もし誰かに見られたら人格を疑われるぞ」


「いいじゃんそんなの」


「良くない」


 はっきりそう答える僕に奈々子が言う。



「じゃあ、実物、見る?」


 小悪魔のような笑み。そう微笑む奈々子を無理やりドアの外に押し出し、僕が言う。



「ふざけるな。さ、子供はもう寝ろ!」


「えー、いいじゃん~。お兄ちゃん~!!」


 ドアの向こうで騒ぐ奈々子。僕はふうと息を吐いてから机に戻る。


 そして勝負の日曜の朝を迎えた。

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