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恋愛クソ雑魚隠キャの僕が、あなたを好きになりました。  作者: サイトウ純蒼
episode6

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episode6-1「     」

(あれ……?)


 朝目覚めてトイレに向かった僕は、その体の異変にすぐに気付いた。


(体が軽い? 足がふわふわする……)


 熱。すぐに発熱を疑い体温計を探す。



「38.9度……」


 悪い予想が的中した。昨日の公演を終えぐったりして帰った僕は、夕食後倒れるように眠りについた。もうあの時から症状が出ていたようだ。病院に行くとインフルエンザと診断された。


「今週は、学校は休みか……」


 僕は再び戻った布団の中でひとり小さくつぶやいた。






(神崎君、今日はお休み……?)


 朝登校した真奈は、総士郎の休みを知りじっとその空席を見つめる。昨日の公演のせいだろうか。確かに帰りは随分疲れていたようだった。

 教師の話す授業の内容が全く頭に入らないまま一限目を終えた彼女は、すぐにスマホを取り出しメッセージを送る。


『おはよう! 今日はどうしたの? 大丈夫?』


 返事がない。既読にもならない。徐々に不安になる真奈。結局お昼の時間を迎えても総士郎からの返事はなかった。



「出雲君。ちょっといいかな?」


 真奈がおさげの奥村と一緒にお昼を食べている出雲真也に声を掛ける。クラスで最も総士郎と仲の良い友達。やや驚いた顔をする真也に真奈が尋ねる。



「神崎君の住所、知らない?」


「神崎の住所? うーん……」


 真也はすぐに今日欠席している総士郎のことが心配で聞きに来たのだと分かった。知っていれば教えてあげたいが残念ながら自分も知らない。


「ごめん。俺も神崎とはスマホでやり取りするだけだから」


「そうだよね。ごめんね」


「ああ」


 真奈は席について弁当箱を広げ考える。



(考えろ考えろ考えろ、私。住所住所住所……)


 ご飯を食べながら必死に住所について考える真奈。そして思い出した。



「そうだ! 文芸部に入った時!!」


 思い出した。入部した際に書かされた『入部届』。あそこに住所記入欄があった。真奈は食べかけの弁当を机に置いたまま二年の教室へと駆け出した。






(あれ、寝ちゃったのか。今何時だろう……)


 僕は病院から帰って来てから薬を飲み、そのまま眠っていたことに気付いた。体はまだだるい。仕事を休めない母親が食事を作って行ってくれたが、気持ち悪くてとても食べる気になれない。


「お昼過ぎか……」


 昨夜あれだけ早く寝たのにまだ眠れる。病気の時は本当に体が睡眠を求めている。


「あー、だるい。マジでだるい……」


 水を口に含み、冷蔵庫にあったリンゴを口に入れる。薬を飲む。体に力が入らない。想像以上に体が辛い。



「ふう……」


 再びベッドに倒れ込んだ僕。頭はくらくらするが枕元にあったスマホを手に確認する。



「わっ、結構来てる……、ごほっごほっ」


 その多くが妹の奈々子からのもの。『休んで看病するー!!』と言った彼女を無理やり母親が学校に行かせ、その直後から大量のメッセージが送られてきている。しかもなぜかセクシーショットが多い。苦笑する僕。そしてその名前に気付いた。



(霞ヶ原……)


 多くはない。数通だが、真奈から僕を心配するメッセージが届いている。最近色々あってメッセージのやり取りがなかった彼女。僕はふわふわする頭ですぐに返事を返す。



『インフルになったみたい。心配かけてごめん』


 だがちょっと嬉しかった。こんな僕を心配してくれる。こうやって感謝のメッセージを送れる。キモオタ陰キャの僕には身に余る光栄だ。


(こんな時ラブコメの主人公だったら、クラスメートの美少女がお見舞いに来てくれるんだよな)


 熱のせいだろうか。僕はあり得ない妄想をしながら再び布団に潜り込む。



 ピンポーン……


「え?」


 僕は不意になった家のインターフォンを聞き、心臓が激しく鼓動する。まさか霞ヶ原!? そんなはずはない。彼女は僕の家なんて知らないはずだし、今はまだ学校。

 頭でそう理解するものの、僕は不思議なくらい大きな期待を持って布団から飛び出しインターフォンのボタンを押す。



『お届け物でーす』


「あ、はい……」


 まあこんなもんだろう。キモオタ陰キャの僕に、あの霞ヶ原真奈が見舞いに来るはずがない。僕は上着を一枚羽織り、荷物を受け取る為玄関を開ける。



「はい、どうぞ」


「ありがとうございます……」


 母親宛ての荷物。僕はそれを受け取り、小さく配達の人に頭を下げる。そして目についた。その黒髪の美少女の姿が。



「神崎君、大丈夫!?」


(え!?)


 僕は荷物を持ったまま立ち尽くした。夢か幻か。熱による幻覚か。配達の人と入れ替わる様に僕の前に来たその黒髪の美少女が、心から心配そうな顔をして尋ねる。



「インフルなんだよね? 大丈夫? ねえ、大丈夫??」


「あ、ああ。うん……」


 僕はそれがようやく現実のものだと理解した。あの霞ヶ原真奈が僕の家に!? 熱で回らぬ頭。だから次に彼女が発した言葉が夢か真か、すぐに理解することができなかった。



「入ってもいい?」


 ラブコメの主人公。僕はぼうっとする頭のどこかでそんな言葉を思い出していた。

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