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恋愛クソ雑魚隠キャの僕が、あなたを好きになりました。  作者: サイトウ純蒼
episode3

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episode3-4「     」

(エリカ、いないな……)


 その日の夜、僕は『ステ恋』を開き、いつも通りエリカとの会話を楽しもうと思っていた。だがホーム画面に彼女の姿はなかった。そう、今夜はWデートの日。適当に会話だけで終わるのではなく、きちんとこうして実際の時間に会えなくなるのがこのアプリの凄いところ。


(これが辛くて課金して引き止める輩がいるんだよな。気持ちは分かる)


 リアルで誰にも相手をされないからアプリに逃げる。何もしないでハーレム状態は現実味がなくて皆『ステ恋』を始めるのだが、結局ここでもダメ男はダメ男で女の子から見放される。課金。お布施。つまるところお金の力で女の子の好感度を上げるのが一番早くて楽なのだ。それは誰にも知られないし、ヘマをしたところでダメージは少ない。

 僕はしばらく画面を見つめてから眠りについた。



『おはよ、エリカ』


 翌朝僕はいつも通りにエリカに挨拶をした。


『あら、おはよ。今日は早いのね』


 いつも通りのエリカ。僕は我慢できずに昨晩のことを尋ねた。



『昨日はどうだった?』


 エリカがさらっと答える。


『楽しかったわ。それがどうかした?』


『そう、それは良かった』


 結局そうだ。恋愛にしても何にしても、欲しい物は欲しい、嫌なものは嫌と言える人間が最後には勝つ。たかがゲーム。されど僕はエリカの攻略がまた振出しに戻ったような気がして少しだけ落ち込んだ。






(ミカさんはいい人なんだけど、やはり相容れない部分があるよな……)


 家を出た僕は僕はジェットストームエクスプロージョン改2に乗り、学校に向かいながらこれからのことについて考えた。ちなみに『改2』と言うのは、以前ひしゃげたかごを新調した為だ。


(基本あの人は僕とは違う陽キャ。だからあんな想像できないような発想をする)


 それは霞ヶ原真奈を使ったナンパ作戦。普通に尾行なりなんなりでもして現場を押さえればいいのに、多分そう言う地味な行動は苦手なのだろう。パッとすぐに結果が出るような作戦が好き。真奈は可愛いから適任だとか言っていたが、どう見ても自分が楽しんでいるようにしか見えない。僕は自転車を止め教室へと向かう。



「おはよう」


「あ、おはよ……」


 いつもの挨拶。真奈は艶のある黒髪を揺らしながら僕に挨拶をする。慣れて来た毎朝の挨拶。これが普通になりつつあること自体が奇跡だと言うことに僕はまだ気付いていない。一限目の授業が始まり教師が皆に言った。



「そろそろみんなもクラスに慣れてきた頃だと思うので、今日は改めてクラスメートがどんな人なのかインタビューして貰う。質問を、そうだな5つぐらい考えて誰でもいいので聞いてみてくれ」


 教師と言うのはなぜこんなつまらないことを思いつくのか。

 普通にしていれば友達になるのに敢えてこのようなくだらないイベントを強行する。しかも普通の生徒なら5名ぐらいのクラスメートに質問などはすぐにできるのだろうが、孤高の戦士(ぼっちの陰キャ)である僕には地味にハードルが高い。



「じゃあ質問するね!」

「あ、ちょっといいかな~?」


 とは言え大概の生徒は頭が悪いのでこのような悪手にすぐ引っかかる。ざわざわと騒ぎ出す教室。皆が立ち上がり、それぞれの友達の所へインタビューに向かう。



(ちっ、くだらねえ……)


 僕はひとり机に座りインタビューする質問を考えた。くだらないイベントとは言えやらなければ教師から叱られる。叱られること自体は別にいいのだが、目立ちたくないのでそれは避けたい。ひとり座る僕にある男子生徒が声を掛けた。


「神崎、いいか……?」


 同じオタクキャラである出雲真也。『素敵な恋人(通称ステ恋)』を共にプレイする同志。僕は彼がやって来たことに少しだけ安堵する。


「とりあえず質問な」


「ああ」


 僕らはありきたりな質問をお互いし、紙に書き記す。沈黙。コミュニケーションが大の苦手な陰キャ。当然だがここからの展開が、……まあない訳だ。だが意外なことが起こる。



「神崎」


「なに?」


 お互い質問者はたったひとり。無言だった僕に真也が言う。



「俺さ、奥村にちょっとインタビューしてくる……」


(奥村?)


 僕はどこかで聞いたことのあるような名前を頭の中で繰り返す。そして真也の視線の先にいるおさげの女の子を見て、彼女が『奥村』であったことを思い出す。


「あ、ああ……、頑張れよ」


「うん」


 何を頑張るのか。なぜ奥村なのか。僕は理解できないままたったひとり女子生徒の元へ向かう真也をぼうっとひとり見つめた。




「ねえ、神崎君」


 そんな僕に聞き慣れた女の声が聞こえる。


「インタビュー、いいかな?」


 それは黒髪の美少女、霞ヶ原真奈。彼女の手には既にゆうに5名以上のインタビューが書き込まれている。性格も良く可愛い。引く手あまたなのは当然だろう。


「うん、いいけど……」


 僕は嘘つきだ。心のどこかで彼女を待っていたと素直になれない。



「じゃあインタビューしま~す」


 既に場数を踏んで慣れているのか、まるでどこかの雑誌記者のようなノリで僕に質問する。


「趣味は何ですか?」

「家族構成は?」

「好きな食べ物を3つ教えてください」


 気が付けば5つ以上の質問をされている。

 ざわざわと騒がしい教室。そんな中でも僕の耳は真奈の声だけを正確に拾って脳に伝える。楽しいのか? いや、楽しんでいるのか? そう思った僕にその質問が投げかけられた。



「クラスの女子で、気になる子はいますか?」


(ふぇ!?)


 それまで俯いていて答えていた僕は、予想外の質問に思わず顔を上げる。じっと僕を見つめる真奈。気のせいか頬が少し赤く、緊張しているようにも見える。


(いや、緊張しているのはこっちだ!!!)


 幸い騒がしい教室であったので彼女の質問は周りに聞こえていない。ふたりだけの時間、質問。僕は頭がぐるぐる回る感覚に襲われながら考える。



(気になる子? クラスの女子で!? 一体どういう意味で……)


 女子免疫ゼロの陰キャ。ストレートの質問ですら答えるのに四苦八苦するのに、超特大変化球を投げつけられた。質問の意味をそのままとってもいいのか、それとも何か別の意味が含まれているのか。黙り込む僕に真奈が小声で言う。



「早く、答えて……」


 なぜかとろっとした目つきになり、囁くように言う真奈。例えは違うだろうが、今の僕は蛇に睨まれたカエルのよう。真奈と言う鎖に縛られ、ぴくりとも動けなくなった悲しき陰キャ。もう僕にはそう答えるしかなかった。



「……い、いるけど」



「うふっ、そうなんだ~、へえ~、そうなんだ~」


 僕の言葉を聞き満面の笑みなる真奈。揶揄われたのか? 陰キャの僕を揶揄って楽しんでいるのか!? 僕が何かを言おうと口を開けた時、教師の声が響く。



「はい、そこまで!! ちゃんと質問できたか?」


 僕は手持ちのインタビューカードを見つめる。たったひとり、クラスの陰キャ男子のことだけが記されている。真奈がそれをのぞき込み、笑いをこらえて言う。



「神崎君、ちゃんとやらなきゃダメじゃ~ん!!」


 そう言って僕の背中をポンポン叩く真奈。誰のせいだと思いつつも、結局ひとりしかインタビューできなかった僕はこの後、教師から公開処刑を受けることになった。

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