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第Ex話『見送りの魔女』

彼女_レインの姿が見えなくなるまで数分間は経った。彼女は無事に森を抜けられただろうか。心配してしまう。


いや、そんな心配は彼女にはいらないか。彼女は転生者なのだから、どんなことがあっても上手く立ち回るだろう。


さぁ、また独りになった。変わらない日常が戻ってくる。魔法の研究をして、森を散歩して、時々世界の様子を見ては世界の歴史を綴る。


ただ今日はちょっとやる気が出ない。まだ陽の光は真上に来ていない。今日は家でのんびりしよう。


家に戻り、席につき、紅茶を淹れる。一人で愉しむこの一服が心を落ち着かせる。


だけど、今日はちょっと違う。ちょっと寂しい気持ちもある。


不意に自分の部屋が目に入る。レインは私の部屋に入ることはなかった。別に入らないでとお願いしたわけでもない。私が家にいない時間にこっそり部屋に入ることもできたはずだ。普通の人なら魔女の家だと知れば、その魔女の部屋にはどんな秘密があるのかと覗きたくなるものだ。ところが彼女は私の部屋に入らないどころか、興味すらなかったように思える。


だからこそ余計に彼女が本当に転生者だと信じられた。もし彼女と初めて会うのがもっと先だったとしても、彼女は私の部屋に入らなかっただろう。いや、正確には、知りたかったら私に訊ねるだろう。彼女は正直者だから。


「世界を巡るなら、いつか私のことも知るんだろうな」


活発に冒険をしていたのはもう40年も前になる。それでも世間で私の評価は変わっていない。もし、レインが私と出会ったことを誰かに言ったら…彼女自身に危険が及ぶかもしれない。私のせいで彼女が矢面に立つ事態だけは避けないといけない。


しっかり約束はした。彼女なら守ってくれる。だから彼女は気兼ねなく旅ができるだろう。


そういえばレインが起きてから二週間、彼女の部屋には入っていない。暫くはまた使わなくなりそうだから、掃除をしないと。


レインが使っていた部屋を片付けようと入ってみると、彼女が来る前と何も変わらない景色がそこにあった。椅子も机も使った形跡がない。ちょっとだけ埃がついている。どうやらベッドしか使わなかったらしい。


「もう、好きに使っていいって言ったのに」


ベッドの枕や布団、シーツなどを洗濯しよう。


また彼女が戻ってきた日のために。

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