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第45話『盲目毒を治すには』

リンネとの協働依頼、メチオル聖水の採集の日になった。


朝食を摂って、集合に遅れないように早めにギルドへ行った。丁度掲示板が更新された時刻のようで、その前に人が沢山いた。リンネはまだ来ていないようだった。


私は少し離れたテーブルでその人混みを眺めていた。アルガード王国のギルドと同様に椅子はないので、立ち尽くすばかりである。


ぼうっとしていたのは、釣りをしていた日のことを思い返していた。


ギーマの病状は、盲目毒。


釣りの帰りの時、これが一般的なものなのか、道具屋に寄った。並べられていた状態回復薬は猛毒、麻痺毒、睡眠毒だけで、他はポーションや魔力瓶だけであった。


もしアルガード王国の学院まで行くことができたら、盲目毒なるものがどんな状態異常なのかを調べることができそうだが、それにはまずこの依頼を熟さなければならない。本当はデルタ帝国で調べられればいいんだけど。


このヨプト街は下街のようで、図書館やら学校やらの高等施設はないらしい。上街にはあるようだが、入場するにはパスみたいなものが必要らしく、しかも下街の人間には基本的に発行されないものらしい。ここの住人にも入れないから、国外から来た私になんて入れるわけがない。


もしあの掲示板の前にいる人たちのなかに、状態異常に詳しい冒険者がいたらなぁ、と見ていると、続々と依頼を決定した人たちが、受付に列を成していた。


「は、はいっ。こちら、受理いたしました」


受付の女は相変わらずおどおどとした態度で、並ぶ人を捌いていた。


ああ見えても、ギルドのスタッフになるくらいだから、やっぱり私よりも格段に戦闘経験が豊富なんだろうなぁ。


…待てよ?


もしかして、ギルドの人に訊けば、色々と詳しいことを教えてもらえるんじゃないか?それこそ、盲目毒について、それを治せる薬草とか素材とかについても。


数分後に列は絶ち、受付の女が一息ついたところを見て、私は徐ろに受付へと足を運んだ。


「すみません」


「はいっ。なんでございましょうかっ」


背後から声をかけられたように、受付の女は姿勢を正した。


「盲目毒って状態異常は知っている?」


「盲目毒ですかっ。症例の少ない状態異常ですねっ」


「そうなの?」


「はいっ。ブリダハイファという植物の花粉によって成ることが多いものですね」


植物…ということは、ギーマはその花粉を浴びてしまったから、目が見えなくなってしまったということか。


睡眠毒とか麻痺毒とかは永続することなく、自然に回復していくものだけど、察するに盲目毒は治癒を施さないと治らない状態異常ということか。


「そのブリダハイファっていうのは、ここらあたりに自生しているものなの?」


「いえっ。アジール大陸のジャングルが主な産地でありますっ」


ということは、ギーマはアジール大陸に行ったことがあるのか?そこで花粉を貰ってしまって…とか。


だとすれば、その治療のための素材や薬も、アジール大陸に行かないといけないという、そんな話になりそうだが…もしそうなら、今の今までギーマが治療できていない理由も納得できる。


…と、考え込んでいると、今度は受付のスタッフから声をかけられた


「あの、盲目毒を含めた、さまざまな状態異常を回復する素材なら、こちらに資料がありますがっ」


「本当?」


「はいっ。ギルドメンバーなら無償でお渡しできます」


「それ、欲しい」


素材さえ手に入れば、ギーマの状態異常を治すことができる。レアリティや採れる場所によっては、かなりの時間を要してしまうかもしれないし、今すぐには無理かもしれない。でも知っているか知らないかでは、かなり違ってくる。


それに資料が手に入れば、今後の私自身にも役立つ情報が必ずあるはずだ。


「はいっ、こちら、どうぞ、お受け取りください」


受付の女はカクカクとした動きをしながら、カウンター裏にあったのだろうその小冊子を、ぴんと両腕を伸ばして差し出した。


「ありがとう」


お礼を言いながらそれを受け取り、試しにとぱらぱらとページを捲ってみた。一ページにつきだいたい五種類くらいの素材が掲載されており、それがだいたい百ページ前後あった。


これだけの種類の素材を知識として身につければ、だいたいのことは大丈夫になりそうだ。


「おい」


すると後ろから声が聞こえた。そういえばここは受付である。邪魔になったのかと、ごめんなさい、と振り返った。そこにいたのはリンネだった。


「なんだリンネか。おはよう」


私がそう挨拶をしてもリンネはなんの返事も返さず、受付のスタッフへと目を遣った。


「緊急依頼、メチオル聖水の採取を受諾したリンネだ」


「は、はいっ、リンネさんですねっ」


女スタッフはまたカウンター裏で、ガサゴソという音を立てながら、私たちにその証明書を渡してきた。


リンネはそれを受け取ると、特に留意する点など聞く必要がないという態度で、さっさとギルドから出ていってしまった。


資料の礼とともに、無愛想な対応をしたリンネの代わりに、女スタッフに頭を下げて、私もその後を追った。




処変わって町外れの砂浜。以前スーパーシェルという貝殻を採集したところだ。


目的となるメチオル聖水は、この砂浜沿いの先にある『イオタ』という洞窟のなかにあるらしい。そこに着くのは恐らく昼前後、洞窟内でどれくらい探索するかは未知数だけど…。少なくとも日を跨ぐ覚悟はしておくべきかもしれない。


さてその洞窟に着くまで、私とリンネは特に会話もなく歩いていた。リンネが先に行き、私は後ろからついていく。というのも、私は先ほど受付スタッフから受け取った資料を読みながら歩いていたのである。


ページのはじめから読んでいると、見たことのない素材だらけだったが、例えばポーションの素材となる『グリーンフラワー』。魔力瓶の素材となる『マジックフラワー』など、知っている物の素材もあり、その度に描かれている絵に関心していた。なるほど、これが元の素材なのか、と。


この資料、とてもよいところが、絵が描かれていることだった。いくら特徴や効能がわかったところで、実際に見たときに判別できないと意味がない。しばらくはこれを読み耽ることになるだろう。


そんな中あるページを見ると、一つの素材が目に入った。それはなんと、盲目毒を中和する効果のある素材だった。


『マイナフラワー』。聞いたこともなければ、描かれている絵も見たことがない。ただもしこれが手に入れば、ギーマの状態異常を治すことが可能だろう。主な産地は…。


「え?」


産地の欄を見て思わず小さく声を上げた。


「どうした」


「あっ、ごめん。なんでもないよ」


リンネが一度立ち止まって訊いてきたが、私は問題ないような返答をした。彼女は訝しげなままじっと私を見つめて、また再び歩き出した。その後に続いて、私も歩く。


今一度『マイナフラワー』の産地を見た。見間違いでも何でもない。


そこに書かれていたのは、今から向かう『イオタ洞窟』だった。

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