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第22話『道中』

一見して代わり映えのない風景を、窓から見ている。若葉色の草原、深緑の森、鉛白の山脈、そしてそれらを全て覆い尽くす澄明な空。出発して初めてこの景色を見たときは、心が洗われるような感動を覚えたが、数時間も経てばその感動も薄れていってしまった。


遠くにある森は、依頼で時々出入りしていたダットの森だ。ここからじゃただの広い森に見えるが、あそこの内側は日の光が殆ど入らない(くら)い森である。中にいる魔物もそのせいか、日の光どころか、松明のような明かりでさえ嫌がる。


その森の後ろに(そび)えるのは、アルガード王国とフォークナー帝国の境界となる大きな山脈だ。名前は確か…パルドニア山脈、だっけ。常に雪を被っていて、登頂したことのある冒険者は指で数えられるほどしかいないらしい。今の私には当然出来やしない。


現在は王都アルガードからヴェレン街へ向かう馬車に乗っている。先頭には馬が二匹、次に王都アルガードで仕入れた物品がある貨物車、その後ろに六人程度が入れる乗客車。そしてその乗客車に私を含めて四人の冒険者がいた。


私の右隣に座っているのはガタイの良い男だ。擦り切れた服装を見るに結構な手練れと思える。その証拠に、剣を背中に置き、商売道具を盗られないようにしていた。あくまで仕事仲間だという暗示だった。だからアルガードで挨拶をして以来全く会話をしていない。ずっと腕を組んで目を瞑っている。


出発時に挨拶をしてから会話を全くしていないのは私も同じだった。男ほど排他的な態度をとっているわけではないが、もし会話が始まったら、私自身のことについて聞かれそうな気がしたからだ。事実、ギルドに入ってから、誰かと対峙して話す時は(ことごと)く私の今までの境遇について聞かれた。


今までの相手が信頼できなかったわけではない。寧ろ全員親身になって関わってくれた。でもそれとこれとは別問題なのだ。


反対側に座る二人は、恐らくチームを組んでいるであろう男女だ。私の目の前に女が座り、その隣に男が座っている。二人ともあまり大きくない声で会話をしていた。ガタイのいい男の気に障らないためだろう。それでも私にははっきりと聞こえていた。内容は武器の調達とか、今後ヴェレンでやりたいこととかだった。


もし、誰かとチームを組むことになったら、あんな風に会話するのかもしれない。行く先々の街のこと、依頼のこと、魔物のこと、時には料理やファッションなどの話もするかもしれない。なにより、困った時に頼れる相手が近くにいる、ということが心身ともに楽になるだろう。


(まぁ、私には縁がないか)


心の中でそう呟いた。求めても手に入れられないものは世の中に沢山ある。私の場合、その内の一つが「仲間」という二文字なだけだ。


相変わらず私は外の景色を眺めていた。朝は東から昇っていた太陽も、見えなくなった王都アルガードの上空に移っている。周りの景色も茜掛かった色になっていった。

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