フィアナ、また変な勝負を挑まれる
謎の大食い勝負で、セシリアさんを返り討ちにした私たち。
それからというもの……、
「フィアナさん、今日は激辛タンメンの早食いで勝負ですわ!」
「ふっふっふ、返り討ちです!」
パクパク、パクパク。
「刺激的でとっても美味しいです!」
「か・ら・す・ぎ・ま・す・わ~!?」
うっとり微笑む私と、火を吐きながら泣きそうなセシリアさん。
「ばたんきゅ~……」
「「あ~、セシリアさま! 気を確かに――!」」
またある日は、
「今日は、マナーで勝負ですわ!」
「ま、まなー? ……新手の食べ物ですか?」
頭にハテナを浮かべる私を見て、
「相手の弱点を突くような勝利、ローズウッド家の長女として許せませんわ! あなたの得意分野で必ずやギャフンと言わせてみせますわ!」
「「待って下さいまし、セシリアさま~!」」
一方的に走り去っていくセシリアさん。
(セシリアさんたち、愉快な人だなあ――)
私はそんなセシリアさんの様子を、ほのぼのと見守るのでした。
※※※
そんなある日のこと。
「フィアナさん、今日はお掃除で勝負ですわ!」
「なんで!?」
仕掛けられたのは、一段と意味不明な勝負ごと。
掃除――貴族という言葉とは対極に位置するもののように思えます。
(も、もしかして、この間の枕投げ勝負で頭を撃ったんじゃ――)
「あなた、今、何か失礼なことを考えませんでしたこと?」
「あ、いつものセシリアさんだ。なら……、なんで掃除?」
私の当然の疑問に、
「生活の基盤は、整った生活環境にあり! すなわち掃除は人生において1番大事なのですわ!」
「た、たしかにそうかも……? いや、そうじゃなくて?」
「それでは今日の放課後、例の場所でお待ちしておりますわ!」
ホクホク顔で、颯爽と去っていくセシリアさん。
(例の場所――すなわち貴族宿舎ですね!)
その言葉で伝わるぐらいに、私たちのかかわりも長くなってきており、
「むう……、今日はフィアナちゃんとダンジョン行こうと思ってたのに――」
「ごめんなさい。祝日にでも、じっくり攻略しましょう!」
「はいっ!」
けろっと機嫌を直すエリンちゃん。
そうして私は、今日も勝負の場に向かうのでした。
※※※
放課後、セシリアさんに連れて行かれたのは、今は使われていない旧校舎でした。
「ジャ~ン! 見ての通り、使われていない校舎ですわ!」
セシリアさんは、そう校舎を指差します。
その建物は、いつも使っている校舎と比べたら老朽化が進んでいました。ところどころの壁がくすんで錆びており、随分と年季を感じさせます。
「おやまあ、セシリア嬢。また来てくれたのかい。私だけじゃ、管理が追いつかなくてねえ――いつも、すまないねえ」
「エリシュアンの学生として、当然のことです。これぐらいは、お安い御用ですわ!」
旧校舎の管理人は、背中が曲がったよぼよぼのおばちゃんのようです。
感謝の言葉に、セシリアさんは満更でもなさそうに微笑むと、
「それでは勝負、スタートですわ!」
セシリアさんは、勢いよく旧校舎に飛び込んでいくのでした。
校舎の中は、薄っすらと埃が積もっていました。
放っておけば、アンデッドタイプのモンスターの巣窟になりそうな不気味な場所で、
「掃除に向いた魔法は――」
私は、これまで覚えた魔法を脳内で検索してきます。
「どうですか、フィアナさん! こちらはもう、ここまで雑巾がけまで終わりましたわよ!」
「むむむ、勝負はこれからです!」
セシリアさんは、テキパキと掃除を進めていきます。
どこから持ち込んだのかほっかむりを被り、いそいそと雑巾をかける姿は、一見すれば使用人と見間違わんばかりで……、
(まあ、そこがセシリアさんの良いところですよね)
そんなセシリアさんだからこそ、私やエリンちゃんとも仲良くなれたのでしょう。
私はくすりと苦笑しつつ、それでも勝負となれば別問題。
「えへへ、良い感じの魔法が思いつきましたよ!」
「へ? 掃除に使える魔法なんて――」
「小さな巨人――お願いします!」
私は簡易的なゴーレムを生み出し、校舎内に解き放ちます。
全長30センチほどのデフォルメされたゴーレムで、とても愛くるしい形をしています――ちなみにモチーフにしたのは、前世のCMで見たルンバたちです。
「な、なんですのそれ!?」
「えっへん、新魔法のお掃除ロボくんです!」
えっほ、えっほ――
ゴーレムは、ちょこまかと歩き回って校舎内を散策。
ゴミを見つけると立ち止まり、
「ゴミはここに入れてね!」
私の生み出したゴミ箱に、ポイッと投入。
何体かのゴーレムは、その後は雑巾がけしながら歩きまわります。
「ず、ずるいですわよ。フィアナさん!?」
「だって、魔法を使っちゃ駄目って言われませんでしたし?」
「だからって、こんな方法があるなんて~!」
またたく間にピカピカになっていく旧校舎。
その一角に、セシリアさんの悲鳴が響き渡るのでした。
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次回、「フィアナ、拉致される」
ほのぼの日常回です。
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