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フィアナ、嬉々として勝負に乗る

 あっという間に放課後になりました。


「良くぞ逃げずに来ましたわね! ワタクシ、今日という日を楽しみにしてましたわ!」

「えっと、私も楽しみしてます」


 私たちは、王都レガリアのシンボルである時計塔に集まっていました。

 この場にいるのは、私とエリンちゃん――それとなぜかセシリアさんたち御一行。

 どうしてこのメンバーで王都に来ることになったかというと、それはセシリアさんが言い出した勝負の内容が原因だったりします。



「いえ、勝負は模擬戦ではなく――大食いで勝負ですわ!」

「えぇ!? 正気ですか!?」


(私としては歓迎だけど、貴族のお嬢様がそれでいいの!?)


 セシリア派の少女を覗き見ると、


「大食いでセシリアさまの右に出るものなし。流石はセシリアさまですわ!」

「平民相手でも、得意分野で確実に勝負を決めに行く――それでこそセシリアさまですわ!」


 2人とも目をキラキラさせており、なんの疑問を抱いていない様子。


(私が、おかしいの!?)

(ねえ、これって私がおかしいの!?)


 プチパニックに陥る私をよそに、


「放課後は、エリンさんとお出かけなさるんですわよね? その、ついで構いませんわ! さあ、フィアナさん。受けますの? 受けませんの?」

「えーっと……、受けます!」

「よっしゃ、言質は取りましたわ~!」


 ――なんて、やり取りがあり。

 今に至るという訳です。




 急遽、開かれることになった大食い大会。

 私たちは、エリンちゃんからオススメの店を聞き出します。


「そうですね――このお店なんかいいかもしれませんね」


 案内されたのは、大通りから外れた裏通りにある小さなお店。

 聞くところによれば、コンセプトはこってりたっぷりてんこ盛り――格安の値段で、お腹いっぱい食べられるをコンセプトにしている個人レストランでした。


 気のいい女将が切り盛りしており、新人冒険者や貧乏学生に特に人気だそうで……、 


「お貴族さまを案内するような場所では無いかも知れませんが……」


 お店の中は冒険者で溢れており、なかなか騒がしい場所でした。


「郷に入ったら郷に従え、ですわ! それにワタクシ、こういう場所が落ち着きますの!」

「さすがの気合いです、セシリアさま!」

「ふ、ふ~ん。良いお店ですわね」


 すっかり馴染んでいる庶民系お嬢様、こと、セシリアさん。


「あら、エリンじゃない。久しぶり、元気にしたかい?」

「はい、お陰さまで。無事、光魔法が使えるようになりました。ここにいるフィアナちゃんのおかげです」


「ありがとねえ、エリンは随分と伸び悩んでたから――あたしからもお礼を言わせてくれ。本当にありがとうねえ」

「いいえ、もともとは全部エリンちゃんが持ってた力ですよ」


 どうやらエリンちゃんと女将さんは、随分と仲がいい様子。

 そんなことを言われて、私はぺこりと頭を下げます。


「それにしても――エリュシアンの魔王なんて呼ばれてるから、いったいどんな子なのかと思えば。こんな可愛らしい子なんだねえ」

「ここでもそんな噂が!?」


 噂が出回る速度が早すぎます!?

 これが王都……、恐ろしい場所!


「いいえ、フィアナちゃんは魔王じゃなくて勇者です」

「エリンちゃんも、真面目な顔してボケないで――」


 私と女将がそんなやり取りをしている間も、セシリアさんは真剣な顔つきでメニュー表をじーっと眺めています。


「やっぱり鉄板通り、まずは前菜から行くべきか。それともいきなり飛ばすべきか──悩ましいですわね」


(こっちはこっちで、凄い真剣な顔で作戦を練ってらっしゃる!?)



 そんなこんなで勝負開始です。


「フィアナさん、それでは勝負開始ですわ!」

「はい。食べたお料理のお皿の数で勝負――本当に、やるんですか?」

「もちろんですわ!」


 手を勢いよく突き上げるセシリアさん。


(どうしてこうなったのかは分かりませんが、勝負となれば本気でいきますよ!)


「ここから、ここまで――全部下さい!」


 ルナミリアでは、ドラゴン丸々1匹食べてもピンピンしていた私です。

 目指すはメニューの全制覇――私が、嬉々として注文すると、


「!? やりますわね、ならワタクシもここからここまで全部いただきますわ!」


 対抗するように、メニューを注文するセシリアさん。


(エリンちゃんのオススメのお店、楽しみです!)


「お、そういう感じね。よろしい、かかっておいで!」


 一方、不敵な笑みを浮かべるのは女将さん。

 ちょっぴり緊張した様子のセシリアさんと、ワクワクと料理を待つ私――そうして不思議な戦いが始まるのでした。

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