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フィアナ、魔王呼ばわりされてしまう

 そうして進んでいく実技の授業。



「次は、セシリア・ローズウッド。前へ」

「はい、ですわ! 風のマナよ、我が求めに従いて顕現せよ。切り裂け、唸れ、切断せよ――風刃ウィンドブレイド――ですわ~!」


 自信満々に詠唱を唱えるセシリアさん。

 魔法陣から風の刃が現れ、すべてを切り裂かんと標的に向かって飛びかかります。


 ジャキーン!

 そんな激しい衝突音とともに、結界により風の刃が弾かれてしまいますが、


「これがローズウッド家の実力ですわ!」

「「「さすがはセシリアさま、ですわ~!」」」


 ドヤァっと、やりきった感を見せるセシリアさん。


(これが風の第2冠魔法。見事です!)


 マナの流れが完璧にコントロールされた美しい魔法です。

 私も内心で、パチパチと手を叩きます。


「次は、アレシアナ・フェアリーダスト。前へ」

「かしこまりました」


 静かにつぶやき恭しく前に出たのは、アレシアナという黒衣の少女でした。

 アレシアナさんは、淡々と詠唱を進めていき、

 

「闇のマナよ、黒き鎖よ、縛れ――血染めの拘束(ブラッド・バインド)


(わあ、珍しい――闇魔法です!)


 詠唱に応えるように魔法陣から真っ黒な鎖が現れ、カカシをしばり上げます。


 他では見ない珍しい魔法。

 見事な魔法を発動させたにもかかわらず、アレシアナさんはまるで表情を動かすこともなく、ぺこりと一礼して持ち場に戻りました。


「むむむむ……。相変わらず見事な腕前ですわね、アレシアナさん」

「うわっ、セシリアさん?」

「むう……、そんなに驚かないでも良いじゃありませんこと?」


 ぬっと現れたセシリアさんは、ちょっぴり唇を尖らせながら、


「アレシアナ・フェアリーダスト――我らがローズウッドグループ最大のライバルにして、天下のモンタージュ派の右腕といったところですわね」

「そ、そうなんですね――」


(私、すっかりセシリアさんに目をつけられてるみたい)


 勿論、友達がほしい私としては歓迎するべきではあるけれど……、


「もしフィアナさんがワタクシの派閥に入って下されば――」

「それは結構ですって!?」


 派閥、駄目ゼッタイ!

 めげずに派閥に誘ってくるセシリアさんに、そう言い返していると――、



「では、次はエリン。前へ」

「はい!」


 ぎゅっと杖を握りしめ、前に出るエリンちゃん。


 どうやら呼ばれる順は成績順らしいです。

 すなわちエリンちゃんは、上位の生徒。エリンちゃんがどんな魔法を使うか、私が楽しみに見守っていると、


「えっと――光のマナよ、収縮と爆散、果てなき雷、我挑むは原始の始まり。来たれ――創世の光!(ビッグバン)


(光の――第5冠魔法!?)


 とんでもない大業です。

 顕現しようとしているのは、校舎全体を包み込まんとしていた巨大な魔法陣。

 ワクワクと見守る私ですが、


 ――ポフン、

 そう物悲しい音を立てて、カカシ周辺に白い煙が立ち上ります。

 典型的なマナの制御不足による不発です。


「あ……、失敗です」


 悲しそうに呟くエリンちゃん。


「やっぱり平民が、伝説の光魔法なんて使えるわけが無いよな(ヒソヒソ)」

「このザマで、いつでも学園にいるんだろうな(ヒソヒソ)」


 おまけにクラスメイトたちは、そんな言葉をひそひそと交わし合っていました。


(む……、感じ悪い人たちですね)

(エリンちゃんも、あんなに難しい魔法じゃなければ、簡単に使えそうなのに)


「あははは、また失敗しちゃいました。本当に――だめですね、私」


 乾いた笑みを浮かべながら、エリンちゃんは私たちの元に戻ってきます。

 その顔には、軽い口調とは裏腹に悲壮感すら浮かんでおり……、


「エリンちゃん――」


 思わず話しかけようとした私ですが、


「次は、フィアナ。遠慮は要らない、思いっきりやってくれ」

「はい!」


 マティさんに呼ばれてしまい、私は基礎演習に向かうのでした。




(自己紹介は失敗してしまいましたが、ここで取り返します!)


 私は、腕まくりしながら気合いを入れます。


「マティさん、思いっきりやって良いんですよね?」

「ああ、心配せずお手本を見せてほしい。カカシには、教師が数人がかりで結界を貼ってあるからね――何があっても壊れることはないよ」


 マティさんのお墨付きも得て、私は脳内で使うべき魔法を検索していきます。


 ここで選ぶべきは、できるだけ派手で"映える"魔法でしょう。

 一目見ただけで、教えて欲しいと思ってもらえるような度肝を抜く魔法。これで休み時間は「フィアナちゃん、魔法を教えて!」と囲まれて、人気者の仲間入り間違いなし。


 幸い、最近覚えた魔法にピッタリのものがあり……、


「炎のマナよ、顕現せよ――隕石襲来(メテオ・ストライク)!」


 イメージしたのは、飛来する燃え盛る巨大な岩石。


 ルナミリアでは、タフで有名なジャイアントオークを1撃で粉砕した自慢の技です。

 最近開発に成功したオリジナル魔法で、第4冠にカテゴライズされる大魔法です。

 薄っすらと空が紅に染まり、世界の終わりを予感させます。


 やがて私が召喚した隕石が、魔法陣から次々と飛来し……、


 ズガァァァン!

 と轟音を立てて着弾。


「あっ……」


 隕石は軽々と結界をぶち破り、カカシが木っ端微塵になってしまいました。


(マティさんの嘘つき!!)

(結界、絶対に壊れないって言ったのに~!?)


 結界と一緒に弁償!? と、涙目になる私。


(やっちゃったものは仕方ありません。むしろこの方が派手で良いかも?)


 私は、無理やりポジティブに意識を切り替えると、



「ど、どうですか?」


 満面の笑みで振り返り、


「紅に染まった空から突如として降り注ぐ隕石。間違いない――これは人魔戦争で魔王が使ったとされる終末魔法!」

「まさか――魔王!」

「目を合わせるな、消されるぞ!」

「「「ヒィィィィィ――」」」


(魔王って……、何!?)


 ガクガクブルブルと震えるクラスメイトたちを見て、またしても失態を悟るのでした。



「す……、すごい!!」


 空を見て目を輝かせていたエリンちゃんが、ひどく印象的でした。

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