表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の先輩  作者: せいじ
53/60

第五十三話 先輩の内緒の話し

 先輩は私に、というか新妻に向かって、衝撃的な告白をした。


「前の妻、つまり君のお母さんとの子作りがね、最後の方はその、まあ、うまく出来なかったんだよ」

 え?

「つまり、セックスが出来なかったと?」

「もうちょっとさあ、柔らかい表現できないかな?」

「どう言えば、いいんですか」

「そうだなあ、性行為とか」

「何が違うんですか?」

「かなり違うでしょう?」

「同じです。むしろ、変に気を使う方が気持ち悪いですよ」

「そう言わないでよ」

「それで、先輩はつまり、EDになったと?」

 それで先輩は、私を抱かなかったのか。これで合点がいった。

 正直、先輩ってもしかして、同性愛者なのかと思った。

 だって、須黒さんと仲良しだったし、カラオケでも仲良くデュエットしたし。

 社内でも、そんな噂もあったし。

「まあ、そうなるのかな?」

「病院には行ったんですか?」

「一応ね」

「不妊症の時には行かなかったのに、これには行ったんですね。それで、結果はどうだったんですか?」

「心因性だから、夫婦でよく話し合えって」

「つまり、前の奥様、私の母のせいで、先輩はセックスが出来なくなったんですね?」

「だから、身も蓋もないって」

「事実です。あの母なら、先輩をとことん追い詰めそうですから」

 あの母は本当に、最低な女だ。家族を労わると言う、そんな発想の欠片もない女だ。

「まあ、実際追い詰められていたのは、事実だし」

「そうでしょうね。母らしい。やっぱり、もう一発ぶん殴っておけば良かった」

「物騒だなあ。君の母親だろう?」

「血の繋がりがあるだけで、もう親とは認めていません」

「だからかな。離婚しましょうって言われた時、私は心底ホッとしたんだよ。最低だろう?」

「最低ですね」

「ホントだね」

「違います。先輩ではなく、母の方です」

「いや、この場合は」

「そのお医者さまも、おっしゃっていたんでしょう?夫婦で話し合えって?」

「そうなんだけどね」

「大方、先輩の方が努力が足りないとか、そう言っていたんでしょう?」

「まあ、そんな感じかな?」

「私は悪くない、悪いのは全部先輩だって。ホント、最低ですね、あの女は」

 あの女なら、そう言いそうだ。それも、無自覚に。無遠慮に。

「だから、君をね、まあ抱く訳にはいかなかったんだ」

「どうして?」

「だから、うまくいかないと思ったからだよ」

「別にいいじゃないですか?」

 別にいいじゃないですか。セックスだけが、夫婦ではないし。

 いえ、出来ればそれはしたいですけどね。悪い経験しかないのって、やっぱり嫌だし。

 ちゃんとしたセックスって、一度はしてみたかったし、このまま処女で居るのは、女としてちょっとね。

「別にって、そうなの?」

「はい、そうです」

「じゃあ、性行為は無くていいの?」

「そんなことは、言っていませんよ」

「ええ、どっち?」

「だから、出来るならしたいって、そういうことです。一応、私だって女性なんですから」

 経験ぐらいはしたいし、ブタ野郎どもの記憶を、先輩で上書きしたい。


 それに、子供も産んでみたい。


 先輩と私の子供を。


「そうなんだ」

「先輩、それって、どういう意味ですか?」

「え?ち、違うんだよ。君は女性だよ、美人だし、キレイだし、スタイルいいし。ね?」

「何が、ネッですか?キモイですよ」

「はい、気を付けます」

「だいたい、私はあの女と違って、子供に固執しません」

「はははは」

「先輩?」

「ああ、悪かった」

「それだけですか?」

「え?」

「私を抱けない事情って?」

「あとはね、君の二十代を」

「そんなこと、もうどうでもいいです。先輩、しつこいですよ?」

 またか。ホント、先輩って面倒。私の二十代は私のモノであって、先輩には関係無いんですよ。

 私が、選択したんですから。私の責任で。

 私の二十代を、いいえ、私の人生を先輩に捧げますって。

 だから先輩が背負う必要は、どこにもないんですよ。

 分かってますか?

 ホント、先輩って、面倒!

「いや、良くないよ」

「私は、母とは違います。私が先輩を、私の旦那様として選んだんです。何か、私が決めたことに、文句でもあるんですか?」

 私は先輩の前に立ち上がり、見下ろすように宣言した。

 これは、私が決めたことだから。

 他の誰でもない、私たちが選択したことなんだから。

「はい、問題ありません」

「なら、結構」

「はい」

「とは言え、今夜はさすがに疲れましたので、夫婦の営みはまた今度にしましょう」

「それだ!」

「何が、それですか?」

「夫婦の営みだよ。性行為だの、セックスだのって、どうしてそんな俗っぽい表現しか、思い浮かばなかったんだ?」

「それはもちろん」

「もちろん?」

「先輩が、馬鹿だからです」


 先輩って、本当に可愛い。


 思わず、押し倒したくなったじゃないですか。


 先輩が悪いんですよ。


 そう思っていたら、先輩がもう休もうって、寝室に向かってしまった。私を置いて。


 おい?


 私が慌てて寝室に入ると、先輩はもうぐっすりとお休み中だった。


 新妻を置いて、本当にいい度胸だ。

 

 私はそんな無防備な先輩の唇を、ほんのちょっと奪うことにしました。


 それぐらいなら、別にいいでしょう?


 だって、夫婦なんだから。


 先輩の唇って、柔らかくて気持ちいいんだから。


 今度、先輩に教えてあげよう。


 おやすみ。



 私の大好きな先輩。



 楽しい夢を見てね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ