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私の先輩  作者: せいじ
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第三話    夜を彷徨う

 どこから来たんだろう。


 どこへ行ったら、いいんだろう。


 


 家には帰らずに、街をさまよった。 


 家以外に行く場所がないのは、どうしようもない現実なんだと、今更ながら実感してしまった。


 でも家に戻れば、私はあの男に犯されるだろう。


 あの男は今度こそ、私の身体の中に入ろうとするだろう。


 私の身体の内側から、あの男は私を粉々にする気だろう。


 そうやって、私を支配するんだろう。


 それを受け入れたくないから、家には戻らない。


 ううん、戻りたくない。


 でも、家以外に、あの男が居る家以外に、私の帰る場所はない。


 そうなると、私はあの家に帰るしかないのだろうか?


 あの男を受け入れるしか、今の私には道が無いのか?


 あの男に犯されることが、私が受け入れなければいけないことなのか?


 それが、私の義務なのか?


 子供の義務なのか?


 子供の義務って、一体なに?


 大好きなお父さんとお母さんに日頃からの感謝の気持ちをって、そんな作文を書かされたことがあった。


 それを皆の前で、発表するんだ。


 クラスメイトの皆は、生き生きと発表していた。


 でも、私は発表できなかった。


 その時の私は、何も書けなかったから。


 いつも不機嫌な母さん、家にあんまり居ない父さん。


 嘘ばかりの母さん、約束を守ってくれない父さん。


 いつも、お互いを悪く言う両親。


 話を聞いてくれない母さん、私の話を適当に聞き流す父さん。


 何を感謝したらいいのか、私には分からなかった。 


 子供は親に、日頃から感謝しないといけない。


 だから、子供は親の言うことを聞かないといけない、親孝行をしないといけない。


 でも、感謝出来ない親の言うことって、聞かないといけないのかな?


 親の言うことを聞くって、親の言いなりになれって、そういうことですか?


 親の言う通りに、大人しくされるがままでいろって、そういうことですか?


 私の大事な身体の中に、指を入れさせることが、いい子供なんですか?


 保護者面する母の再婚相手と、セックスをすることが、いい子供になるんですか?

 

 我慢して、あの男の性器を受け入れることが、親孝行になるんですか?


 そうしない私は、親不孝なんですか?


 痛くても悲しくても、耐えないといけないんですか?


 逃げちゃいけないんですか?


 家にどんな奴が居ても、私は家に戻らないといけないんですか?


 子供は家に居るべきって大人は言うけど、それはどんな目に遭ってでもですか?


 家から逃げることは、我儘なんですか?


 私には、分からない。


 親子になるって、そういうことなのか?


 家族って、そういうことなのか?


 本当の父が居なくなったのは、私のせいなのかな?


 だから母は、あの男を呼んだのかな?


 あの男が家に来たのは、私のせいですか?


 違う!


 違う!


 違う!


 私が、あの男を選んだわけじゃない。


 それなのに、どうして私があの男を受け入れないといけないんだ。


 どうしてあの男と、私がセックスしないといけないんだ。


 あの男は、母が連れてきた。


 だったら、母が相手をすればいいじゃないか!


 あの男は母と、セックスすればいいじゃないか!


 夫婦なら、そうなんでしょう?


 セックスって、夫婦とか恋人同士でするモノなんでしょう?


 私には、関係ないじゃないか!


 どうして娘である私が、あの男の相手をしないといけないんだ?


 何で、私なんだ?


 どうして?


 私が、何をしたの?


 やっぱり、私のせいなの?


 ねえ、誰か教えてよ。


 教えてよ。


 どうすればいいの?


 どうしても、答えが出なかった。


 やっぱり、あの母と暮らさなければ良かった。


 嫌がっても、父さんに付いて行けばよかった。

 

 もう、何もかもが、手遅れだけど。


 きっと、これが自業自得というものなんだろう。


 あの時、よく考えなかった、私のせいなのだろう。


 だから私は、あの男に殺されるんだろう。


 身体から先に、あの男に殺されるだろう。


 きっと、母にも殺されるだろう。


 心を殺されるから。


 心が殺されるのは、身体が殺されるその次だろうか?


 だったら、先に心を殺せばいい。


 心さえ先に殺せば、もう何も怖くはない。


 そうなんだ。


 感じる心さえなければ、もう痛くはないんだ。


 もう、悲しくないんだ。


 恥ずかしくないんだ。


 だったら、何もかもいいはず。


 失うものは、もう何もない。


 やけになった訳でもない。


 消去法で考えたら、ベストな選択がこれなんだ。


 クラスでも話題になった、家出少女になろうと思った。


 援助交際をして、男からお金を貰うような、そんな悪い女の子になろう。


 私をあの男から匿ってくれる、そんな男に私の身体を差し出そう。


 どうせあの男に犯されるぐらいなら、私の逃げ場所を提供してくれる男に、私のこの身体を差し出そう。


 この汚れた身体に、まだ価値がある内に。


 女子高生よりも、女子中学生の方が価値が高いって、同級生はそんな話をしていた。


 ババアになったら、価値はゼロだって。


 そうか、だからあの男は母ではなく、私なんだ。


 ババアになった母よりも、私の方が価値があるんだ。


 だからあの男は、私を欲しがったのか。


 包丁で殺そうとしたのに。


 それでも、男にとって命を懸ける価値が、私にはあったんだ。


 女の子って、そういうことなんだ。


 だったら、価値のある内にお金に変えないと。


 それがしほんしゅぎって、言うんだよね。


 じこせきにんなんだよね。


 それにこれは、とりひきだから。


 この女の子の身体は、たいかになるんだから。


 心さえ殺せば、身体は死なないから。


 でも、そうまでして生きる理由って、いったいなんだろうか?


 いっそ、死ねばいいのかな?


 死んだら、もう犯されないのかな?


 でも、もう私は、キレイな身体ではない。


 あの男に身体のあっちこっちを触られ、指も入れられたから。


 今度こそ、あの汚らしいケダモノを、私の身体に入れるんだろうから。


 私はきっと、滅茶苦茶にされるんだろう。


 だからその前に、まだ私の身体の中がキレイな内に、お金に変えよう。


 でも、何の為に?


 生きる為?


 だったら、生きなくてもいいよね。


 みんな、生きていなくてもいいよね。


 みんな、死ねばいいのに。




 私も、死ねばいいのに。





 でも、死にたくなかった。





 私は、どうしたいんだろう?



 



 どこへ行けば、いいんだろう?




  


 お願い、誰か教えて。

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