第二話 世界が終わる日に
私は懸命に起きていたけど、つい眠りに落ちてしまった。
どうしても、睡魔に抗えなかった。
ふと、目が覚めた。
真夜中だった。
下半身に、違和感があった。
誰かいる。
この男だった。
私を抑え込んでいた。
この男は私のパジャマや下着を剥ぎ取り、私の身体の中に、何かを入れようとしていた。
その時、この男は裸だった。
私はとにかく、必死に抵抗した。
その時だった。この男は、私に語り掛けた。
ひとつになろう。
本物の親子になろうと、私に優しく語りかけてきたのだ。
私は、ゾッとした。
この男は、私を犯そうとしている。
私の身体だけではなく、心を、精神を犯そうとしている。
やめて!やめて!やめて!
どうしてか分からないけど、どうしても声が出ない。
助けて!
この男は私を抑えていたので、動くことも逃げることも出来なかった。
足をバタバタするだけで、それ以上の抵抗が出来なかった。
それでもこの男は、中々入らないと言って、私に身体の力を抜くように指示してきた。
もう少しで、ひとつになれるよ。
もうすぐ、本物の親子になれると。
ふざけるな!
ぜったいに嫌だ!
こんな男と、親子になんかなってやるもんか!
お前は、ケダモノだ!
ぜったいにみとめない!
この男が私を抑えていた手を離し、その汚い手に唾を付けているその隙に、空いた手で隠していた包丁を取り出し、この男に切りつけた。
しかし、かすめただけで狙いは外れた。
失敗した。
刺せなかった。
自分の流れる血を見たこの男は、目が充血していた。
この男は興奮し、狂ったように私に覆い被さってきた。
私は包丁で刺そうとしたけど、腕を取られてしまった。
この男は、私を殴った。
でも、私は怯まなかった。
ここで怯んだら、私はこの男の家族にさせられてしまう。
それだけは、絶対に嫌だった。
この男は、包丁を持つ私の手を、締めあげてきた。
私は痛みに耐えかねて、包丁を落としてしまった。
「しまった!」
男は、更に興奮していた。
息づかいが、まるで動物のようだった。
この男は私に見せつけるように、私にこの男の性器を見せつけてきた。
「ほら、抵抗はやめなさい。このままでは、痛いだけで気持ちよくならないよ」
男の性器は、見て分かるぐらいにいきり立っていた。
まるで、そこだけが別の生き物のように、私を犯したいと叫んでいた。
私をお腹から、食い破りたいと。
「お父さんが、咲良ちゃんを大人にしてあげるから」
ふざけるな!
お前なんかに、大人にされてたまるか!
私は、必死に抵抗した。
そのせいか、この男の化け物のような性器は、私の身体の中に入らなかった。
「入らないなあ。ダメだよ、お父さんにすべてを委ねなさい」
それでもこの男は、私の中に入ろうとしていた。
「ほら、もう少しだから。そんなに抵抗したら、咲良ちゃんが痛いよ?お父さんに任せなさい。すぐに、気持ち良くなるから」
この男は、私を身体の中から破壊しようとしていた。
「もう、ちょっとだから。もう少しだから。ああ、入らない」
この男の汗が、私の顔に落ちてきた。
「いい加減諦めて、お父さんを受け入れなさい」
気持ち悪い。
「素直になりなさい。本当は、咲良ちゃんだってしたいんでしょう?」
本当に気持ち悪い。
私は、叫んだ。
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる! 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる! 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる! 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!しにたい、殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる! 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる! 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる! 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!もう、やめて。
たすけて
でも、声が出なかった。
「このままじゃ、お父さんとひとつになれないよ。ほら、我儘するんじゃないよ」
この男は、私の顔に近づいてきた。
「仕方がないなあ。ほら、口を開けなさい」
この男の息づかいが、まるで獣のようだった。
この男の息が、とても臭かった。
まるで、生ごみのような匂いがした。
この男が、私の口を舐めようとしてきた時、私は咄嗟に男の耳に噛み付いた。
私は、耳を噛み切るつもりだった。
男は叫んだ。
私は力いっぱい、噛みついた。
男は、私から離れた。
私は、男から自由になった。
耳は噛み切れなかったけど、男の耳のあたりが、血まみれになっていた。
血の味がした。
男は息を切らせながら、耳を抑えていた。
私は覚悟した。
来るなら来い!
次は、喉笛に食らいついてやる!
喉を噛み切ってやる!
今度こそ、殺してやる!
絶対に、殺してやる!
私は男を睨んだ。
男の目には、はっきりと怯えが見えた。
どうした?
来ないのか?
そんな時だった。
騒ぎを聞き付けて、母が私の部屋にやってきた。
私はホッとした。
助かったと、私はそう思った。
だけど、そうではなかった。
母は裸の男と、裸同然の私を交互に見た。
すると、男が言い訳をした。
私が、男を部屋に招いたと。
私が男に相談があるというから、男は父として私の部屋に来た。
母には相談出来ない、内緒の話があると。
だからこんな時間に、私の部屋に来たんだと。
すると、私が裸になってこの男に抱き着き、抱いてほしいと懇願してきたという。
抱いてくれなければ、この包丁を使って自殺をすると。
男は、必死に止めたと言う。
死んではダメだと。せっかく、家族になったんだからと。
だから、これは仕方が無かったんだと、作り話を母に話していた。
馬鹿馬鹿しい。
自殺を止めるのに、何で服を、下着を着ていない?
何で、耳に怪我をしている?
私は、男が何をおかしなことを言っているんだと思った。
母がそんな戯れ言を、信じる訳はないと思った。
でも、違った。
母は転がっている、血の付いた包丁を見た。
母は、男を見た。
母は、私を見た。
母の目が、おかしかった。
母からは、意外な言葉が出た。
「何をしてるの?私の夫を、誘惑する気?」
「え?何を言っているの?」
私は、信じられなかった。
でも、母は本気だった。本気で、私に怒りをぶつけていた。
「私に対する腹いせ?あなたは、あの男に付いていこうとしたわよね?」
「違う」
「私に対する、嫌がらせ?」
「違う」
「私を、馬鹿にしてるでしょう?」
「違う」
「分かってるのよ。あなたが、私をどう思っているのか」
「違う」
「子供の癖に、大人を誘惑するなんて」
「違う」
「お父さんを、味方にしようとしたのね?」
「違う」
「私からお父さんを奪おうなんて、何て酷い子なの?」
「違う」
「そんなに、お母さんが嫌いなの?」
「違う」
「お母さんが憎いから、こんなことをしたのね?」
「違う、違うよ」
「なんて子なの。裸で男性を誘惑するなんて、はしたない子!」
「母さん聞いて」
「あんたは淫乱よ、いかがわしい」
「母さんお願いだから」
「あの人にそっくり」
「母さん」
「他所で浮気して、最低な人だったけど、あなたはあの人にそっくりね」
「母さん、どうして?」
泣いてはダメだ、泣いたら、男が喜ぶ。
「ほら、これ以上はかわいそうだよ」
「あなた」
「僕も悪かったんだよ」
「あなたは、悪くないわ」
「僕はね、この子と本当の親子になりたかったんだよ」
「ええ、ありがとう。あなたは優しくて、本当に素晴らしい人よ」
「きっとこの子は、寂しかったんだと思うよ」
「私も、そう思います」
「急にお父さんが居なくなり、僕のような新しいお父さんが来たんだから、情緒が不安定になるのも当然なんだ」
「本当、ごめんなさい。迷惑を掛けたわ」
「いいんだよ。僕はね、君たちを本当の家族として、心から愛しているんだから」
「あなたは、本当に素晴らしい人よ。あの人と違って、誠実な人よ。あなたと結婚出来て、私は幸せよ」
「だからね、許してあげようよ。私たちの、大事な子供なんだから」
「そうよね。咲良も、もう二度とこんなことはしないでね」
「咲良ちゃんも、それでいいよね」
男は笑っていた。
残忍な顔で、私を見ていた。
私の包丁を拾いながら、ゆっくりと私を諭した。
「もう、こんなことは、しないようにね」
私の包丁は、取り上げられてしまった。
私はもう、終わったんだと思った。
私の味方は、もうこの世界のどこにも居ないんだ。
武器すらも、取り上げられてしまった。
もう、抵抗しても無駄なんだと。
私は、男の娘になるんだ。
男の娘になる以外に、私には選択肢が無かったんだ。
私は、私は、私は・・・・・
吐きそう・・・・・
翌朝、母は私に何かを語り掛けていたけど、私の耳には入らなかった。
世界に、色が無くなっていた。
味も匂いも、しなくなった。
学校で友達が、先生が話しかけてきても、私はまともに返事が出来なかった。
それでも学校にいる時だけが、私にとって安心出来る場所なんだ。
でも、学校に居られない。
下校時刻になったから。
友達が声を掛けてくれたけど、何を言っているのか分からなかった。
私はただ、手を振っただけだった。
私は家に帰宅しようとしたけど、足が動かなかった。
帰りたくない。
友だちは頼れない。
母さんに、連絡がいくからだ。
この男に、連絡が行くからだ。
どこにも、行くことが出来ない。
本当に私の居場所は、この世界にないんだ。
そう思うと、悲しみよりもむしろ、
すっきりした。