表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の先輩  作者: せいじ
17/60

第十七話   運命

 教授に大学に残るように言われたけど、私は立場上そうはいかないので、お誘いを断ることにした。

 私としてはもう少し、勉強をしてみたかったけど。

 でも私は、学究肌じゃないし。

 今の私の望みは、完全に自立することだから。

 早く安定した、収入が欲しいから。


 就職も最初から決まっていたけど、総合商社だから悪くはないと思う。

 滝川さんや柿田さんのお陰だと思うけど、きっと私自身の努力の結果と、彼らは言ってくれるだろう。


 ただ、大学のOBから聞いた話によると、総合商社では簿記とTOEICのある程度のレベルは必要だから、大学在学中に取得しておくようにと言われた。

 実際、会社の研修でもそう言われ、あらかじめ取っておいたのが幸いだった。


 色々と忙しく、あっという間に大学を卒業した。


 私との別れを悲しむ人は居ないと思ったけど、後輩に泣きつかれた時は驚いた。


 ちょっと、私も涙ぐんだ。


 ただ、他の卒業生と違って、卒業旅行に耽ることは出来なかったので、感傷もそこまでだった。


 一応、スーツも用意し、靴やかばんも用意した。


 結構な出費だったけど、スグロジュンさんのお陰で、体裁を整えることが出来た。


 少なくとも、恥ずかしくない格好だと思う。


 入社式当日、会場には私と同じような格好の若い男女が集まっていた。


 皆、どこか緊張した面持ちだった。かく言う私も、緊張してしまった。


 ああ、私もいよいよ社会人なんだと、心が震えてきたから。

 

 入社式は意外に質素で、噂に聞いていた派手さは無かった。


 社長からのスピーチは淡々としていて、中身は社史から始まり、会社とステークホルダーとの関係について、色々と説明していた。しかも、あまり大きくない声で。


 正直、眠くなってきた。

 

 すると社長は突然黙り、我々新入社員のひとりひとりの顔を見つめた。

 正直、その眼光には驚いた。

 一瞬、私と目が合ったような気がした。

 そして、さっきまでとは違い、非常に通る声で演説を再開した。


「君たちは、まだ何者でもない。当社の一員ですらない。ただのひよっこに過ぎない。だが、私もかつてそうだった。生意気盛りで、しかも鼻っ柱だけが強く、俺がこの会社を引っ張ってやるなんて意気込んでいた。君たちもそうだろう。だが、すぐにその生意気な鼻っ柱はへし折られるだろう。しかし、それで落ち込むことは無い。何故なら、そこからがスタートだからだ。恥をかけ。失敗しろ。だが大事なことは、保身に走ることではない。小さく纏まるな。それには、挑戦し続けることだ。わが社は、そんな生意気な社員を求めている。いくらへし折られても、決して折れない者になれ。世界は広い。世界は甘くない。誇り無き者に、居場所はない。君たちも、決して誇り無き者になるな。そんな者を、商社マンとは言わない。世界に羽ばたく、そんな人材になれ。誇りある商社マンになれ!私からは、以上だ。君たちを歓迎する!」


 そう、まだ何者でもない。

 私は、私になる。


 そう思い、意気揚々と張り出された研修先を見た。



 坂上咲良 


 上記社員を、総務部配属を命ずる。



 総務部?


 ちょっと、がっかりしたけど、研修先だから今はいいか。


 でも私は、そこで運命の出会いをすることになる。


 本当に、運命って分からないと思う。


 少女漫画のようでもあり、小説のようでもある。



 まるで、物語のように。



 きっとこれが、運命って奴なんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ