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ミストレスと人食い鬼

 ポッカが人生でミストレスを目にしたのは、これで三度目の事だった。

 とはいえその二件はちょっと遠目に眺めてみただけなので、こんな身近でまじまじと眺める事が出来たのは初めての経験だった。

 ミストレスたちはひとりひとり身体の作りが違うと聞いていたのだが、先の二人は遠くからでは判別が付かないほどの差異でしかなかったのに対し、目の間の少女の特異性には目を瞠るものがあった。


 背中から生えている巨大な腕。背丈の二倍はあるだろうか。

 腕の表面は爬虫類のようなでこぼこ模様で、とてもじゃないが人間の腕とは思えない。

 皮膚の色は灰色で生き物らしく無い色合いだが、先の方まで観察してみると手首らしきあたりから少しずつ桃色に染まっている。

 その桃色の行方だが、不思議なことに指が六本付いている。小指の隣にもう一本親指が生えていて、まるで下手くそなお絵かきで描かれた失敗した手のひらみたいだった。

 その上指先には爪が無く、より一層細やかなでこぼこの溝で覆われている。

 まったくもって不思議な造形にポッカは目を奪われていた。


「うぅ……ん……」


 少女が目覚めの予感を感じさせるうめき声をあげたことで、ポッカははっとおのれを取り戻す。

 どうしたものだろうか、家畜室にミストレスが寝入っていた事に現実感が無いせいで、次にどう行動すればいいのか判別つかずにポッカはうろたえてしまう。

 そんなポッカの混乱も知らず、少女は長く大きな腕を伸ばして目覚めの奇声をあげたのだ。


「ん、ん、ふぬぅーーーーーーーーーっ」


 目を擦りながら起き上がり、両目を開けば目の前の位置にポッカが固まった状態佇んでいる。

 そんな彼の間抜けな姿に、少女は再び伸びの姿を披露する。


「あー……ふう、よく寝た。うん? きみは、あれかな? 宿屋の息子さんかな。もし違っていて、その上家畜泥棒だとしたら、私はきみを退治しなきゃあならないけど、どうなのかね?」

「ちっちっ違いますっ! 俺っ俺はポッカっていって、ここは俺の家の家畜室でっ」

「ああ、いいよ慌てなくて。いや、怯えなくて、かな? 違うって言うなら、信じてあげ……ふあぁ」 


 大きな大きなあくびをあげるミストレスの少女に目を白黒させながら、ポッカは思わ腰が抜けてしまっていた。


「ううーむ、まだ眠い。ご飯を食べていないせいかな。きみ、悪いんだけど、親御さんに頼んで朝食を持ってきてはくれないだろうか。もちろん、大盛りで」


 ポッカはただこくこくと頷き返し、ただ黙って行動するすべしか持ち合わせていなかった。

 口当てで顔を覆うのも忘れて家畜室を飛び出し、急いで厨房に居るだろう父の元へと駆け出した。

 階段で躓きかけ、庭の雑茸に足を取られかけながら、ほうほうの体でやっとこさ家の中に滑り込む。

 はぁーとため息を一つだけあげ、まだ高鳴っている心臓の鼓動を抑えながら、ポッカは食事を宅配する為のかごを手に取り父のいる厨房へと飛び込んだ。


「父ちゃん、父ちゃん! うちの家畜室にミストレスが――」

「朝っぱらから喧しいぞ、くそがき! きんきん声が響くじゃねえか!」


 ――がつん。

 頭にきつい一発を貰い、思わずポッカはうずくまる。

 痛い。酷い目に合ってばかりでポッカは涙ぐむ。そんな我が子の心親知らずか、父親は突然思い出したかのように亀の甲羅皿を用意しだした。


「ああ、そうだったそうだった。昨日ミストレスのお嬢さんがうちの宿屋に泊まりに来たんだった。ポッカ、お前そんな所で跪いてないで、ちょっと料理を運びに行きな。今準備すっからよ」


 ポッカは父に常日頃から受けていたぞんざいな扱いには慣れっこだったが、今日のはひときわ悪すぎると無言で睨み返しつつ、父が用意する配膳の準備を待っていた。


「ねえ、父ちゃん」

「なんだぁ、忙しいから手短にいえよ」

「何でミストレスがうちの家畜室で寝てたんよ」

「昨日夜遅くにな、近くのお仕事でのためにやって来たらしいんだよ。それで、もう夜だからうちの宿屋で一眠りしようって、お泊りになられたんだが……」


 ポッカの父はぴたっと手を止めて、疑問をよこした息子の顔を見下ろした。

 そして、ばつの悪そうな表情を浮かべ、明後日の方向へ顔を背ける。


「……そのだな、これは悪口で言ってるわけじゃないんだがよぉ……ほら、あの図体じゃ、普通の人間さま用の茸布団(ヒラメタケ)じゃあ収まんないっつうか、ひしゃげて破けちまうっていうか……ともかく、寝られる大きさじゃあ無かったんだよ。で、その事を伝えたらよ、寝られる大きさの布団があるならそれで良い、って言われてなあ。試しに冗談で、家畜用の布団ならございやすがねなんて言ったら、じゃあそれで構わない、ぐっすりと眠れるならそれでいい、だとよ。変なお嬢さんだよな、いろいろな意味で……。ああ、お前、布団の件は冗談だったって事、あのお嬢さんに告げ口するなよ?」

「うん、分かってる。あと、大盛りにしてくれって言われた」

「あいよ。それとポッカ、突っ立ってないです井戸水組んできてくれ」

「あいよー」


 ポッカが亀樽に水を汲み終わった頃には、父は食事をよそい終わらせていて、ただ顎だけをくいと動かしてポッカに早く向かうよう促していた。


「息子の扱いが荒いなあ、もう」


 愚痴だけはしっかり漏らしつつ、ポッカは急いで食事を運んで家畜室に向かう。

 階段を降り扉を一応叩いてから中に入ると、帽子を脱いで長い髪を梳かしていた少女の姿が目に飛び込んだ。

 背中から伸びるどでかい腕さえ見なければ、ごくごく普通の少女に見て取れた。


「やあやあ、お待ちかねだ。献立は何かな? この匂いは乳粥と、後は何だろうね」

「当たりです。ええっと、焦がし茸の入った乳粥と焼き蛇の肉、粘り乳を中に詰めた膨らみ茸とヤマブキシイタケの揚げ物です」

「良いね、好物ばかりだ。ただ焼いただけの茸ってところじゃないあたりが実に最高だ」


 器を載せた骨板を少女の目の前に置いて、ポッカは部屋の隅に置かれた茸ぼうきに近づいていく。

 手に取って、いざ掃除の始まり――と思いきや、少女がそれの邪魔をする。


「きみ、きみ。いや待ちなよ、待ち給えよポッカくん」

「え、なんですか? 俺、これから仕事しなきゃなんで……」

「いやいや、きみ。きみも一緒に食べないかい?」

「えっ」


 思わぬ申し出にポッカは目を白黒とさせた。

 お客に食事の誘いを受けたのは産まれて初めての経験だったからだ。


「いえ、けど俺、仕事が残っているし……」

「うん。仕事は大切だ。だけどあれだよきみ、大盛りで頼んだはいいのだけれど、思ってたよりも量が多かったというか、そのだね……品数が多くて多分食べきれないよ。残すのはもったいないじゃあないか。それに、食事中に掃除をされているとだ、ごみや家畜の抜け毛なんかが飛んできて、食事に交じってしまいそうじゃあないか。だから食べてる間は掃除をして欲しくない」

「うっ……」


 少女の意見も尤もな代物なので、ポッカは何の反論も行えず黙りこくってしまう。

 結局ポッカは何も言い返すことが敵わず、少女の向かい側の地べたに座り込んだ。


「済まないねえ、私のわがままに突き合わせちゃって。その代わり、好きに食べてくれたまえ」

「はあ……じゃあ、いただきます」

「はい、いただきます」


 少女は骨匙を手に取って、甲羅皿になみなみと注がれた乳粥を旨そうに掬って食べ始める。

 お腹が空いていたとはいえ、よくもまあ家畜室の中で粥をがぶがぶと飲み込めるものだなあと思いながらも、ポッカも空腹感には勝てず、ついつい膨らみ茸に手を伸ばして齧りつく。

 うまい。朝っぱらから温かい食事にありつけるのは久々なせいで、思わず涙がにじみ出る。

 ポッカはそれを見とがめられないだろうかと慌てて顔をぬぐってみるが、目の前の少女は食事にありつくのに集中しているようで、ほころんだ顔で焼き蛇の肉にかぶりついている真っ最中だった。


 なんだこの女、変な奴だなあ。ミストレスには変わり者が多いって聞くけれども、全員こんなやつなのか?

 ポッカは口にこそ出さないが、かなりぶしつけな感想を抱いていた。

 最初こそおどおどとした態度だったものの、旨い旨いと乳粥をかっこむ少女の姿を前にしては、次第に警戒心も薄れてしまうものだった。

 結局ポッカは一人で膨らみ茸を食べきってしまったが、件の少女からは一言も文句の言葉が出ることは無かった。


「うん、美味しかった。いい宿だねここは。お腹も膨れたし、幸せな心地だよ」

「ええと、どういたしまして……?」


 御世辞かどうかも分からないひょうひょうとした感じで話しかけてくるものだからどう反応していいのかもわからず、ポッカは食器をかたずける手を止めてついつい返事をしてしまう。

 もっとも少女本人はポッカの返事を聞く気はないようで、三度めの伸びを行っている最中だった。

 ぐいい――……

 巨大な第三の腕が脈動する。

 六指の手のひらで地面を掴み、骨が無いかのようにぐにぐにとうねらせながら、腕の半分くらいの長さのところで折り返しつつ筋肉の凝りをほぐしている。

 まるで巨大な大蛇にも見うけられるが、流石に少女の背中から生えている生き物なんて存在しない。

 めっぽう不気味で特異だが、あくまで少女の一部分。

 個別の生き物などではなく、彼女の背中の第三腕だ。


「きみ、きみ。ひとのあくび姿をそうまじまじと眺めるもんじゃあないよ」

「あっすみません……っ! その、ごめんなさい……!」


 あまりにじろじろと観察していたせいで、ポッカは少女にたしなめられてしまった。

 ポッカは顔を真っ赤にしてうつむき気味になりながら顔を押さえてしまうものの、少女は特にそれを気にしたようでもなく、


「まあいいよ、許す許す。食事に付き合ってくれたからね。ご相伴にあずかってくれた相手は大切にしないとだ」

「は、はあ……」


 とまあ、寛大なのかおおらかなのか、それとも他人に興味が無いのかは判別付かないものの、許されたようでポッカは心底安堵した。

 対照的に少女の方は、我関せずにゆっくりと立ち上がって身だしなみを整え始める。

 背の中程まで伸ばしている淡い色合いの髪をくるくると後頭部にまとめ、いつの間にやら手にしていた帽子を頭に被せ、その中へと詰め込んでいく。

 見れば、ポッカの視線の先、第三の腕がいつの間にやら布団敷にしていた外套を手に取って広げている。


「ところできみ、本当なら食事に付き合ってくれたお礼にね、家畜の世話でもひと手伝いしてあげたいところなんだけど、生憎急ぎの任務に就いていてね。悪いんだけど、今日の所は勘弁していただけないかなあ」

「いっいえ、お仕事の方が大事ですから、大丈夫です! 俺一人で出来ます! ……あの、任務……頑張ってください」

「うん、私は頑張るからね。きみも負けずに頑張り屋さんになるんだよ」


 少女は外套を器用に纏いながら、その場でくるりとひと回転、ふた回転とし、ふわりふわりとさせながら暗い色の衣を身にまとう。

 奇妙にねじれた第三の腕を身体に絡みつかせた姿にポッカは少しばかり見惚れながら、ついつい彼女の任務について尋ねてしまった。


「その、島主様からは何の命令をされたんですか……? うちの村でミストレスの方のお世話になりそうな出来事なんて、何も無かったと思うんですが……」

「うーん、まあ話しちゃってもいいかなあ。実はね、隣村のさらに向こう丘のあたりにね、人食い鬼があつまっているそうなんだよ。私たちはそれを討伐しに向かっているんだ。全部蹴散らしてあげるから、きみの村が襲われることはおそらくないよ、よかったね」

「人食い鬼っ! そんな危ない連中が近くにいたんですか!?」

「近くっていっても、まだまだ向こうの先の方だよ。まあ、一匹も逃さないで退治してあげるからさ、そんなに怖がること無いよ、きみ」


 人食い鬼と聞いて、ポッカは思わず震え上がってしまう。

 人食い鬼はその名の通り人間の肉が大好物で、こぞって村々に襲い掛かる迷惑な生き物だ。

 この島の大抵の生き物は大抵完全茸食か茸食寄りの雑食で、肉を好んで食べる生き物なんて人間と水生生物くらいなものだが、人食い鬼だけは例外だ。

 ひたすら他の生き物の肉だけを食べる、完全肉食生命体だ。

 茸料理と生肉と腐った人肉を前にしても、真っ先に人肉にしゃぶりつきながら空いた方の手で生肉を抱き寄せるくらいに、食欲に貪欲で醜悪な、人間にとっての天敵だ。

 ポッカは恐怖に震えて思わず少女の身体に抱き着いてしまった。


「うーん、そんなに怖いかねえ、きみ」

「こっこっ怖いですよ人食い鬼ですよ!? あいつら獲物が生きたままぼりぼり貪るのが好きだって、村長とかが話してるの聞いたことあるし……」

「殴れば殺せるから楽な方だよ。病気の方がよっぽど怖いね。ああこらこら、泣きそうな顔しない。男の子だろう?」

「でも、でも……」


 泣きべそをかくポッカに対し、少女はやれやれ困ったなあと帽子の上から頭をかく。

 そのせいで少し髪の毛が乱れて、帽子の端っこの方から毛先が少し覗いてしまう。


「やれやれ、しょうがない。ここはひとつ力自慢なところを見せてあげようか」

「えっ? いったい何を――うわあっ」


 ポッカが疑問の言葉を出しきるよりも早く、少女の右側から素早く第三の腕が伸びる。

 ぐねぐねと六本の指が器用にうごめきポッカの身体を絡み取る。

 おしりよりも大きな手のひらに乗っけられた状態で、ポッカは頭上高くに持ち上げられてしまった。


「おっ降ろして、怖い怖い危ないって!」

「まあまあ、落っことしたりはしないから待ちたまえ。ほおら、私はなかなか力持ちだろう?」


 ポッカが巨大な腕に生えた指の一本にしがみついた状態で見下ろしてみると、驚いたことに少女は片足立ちで彼を見上げている。

 控えめに考えてみても、この大きな第三の腕の重さは大の大人数人分はありそうなものだが、少女は軽々と自分の足で支えているではないか。

 細い足首からは想像もできない、とんでもない馬鹿力だった。


「まあ、こんな具合にね、力強さは相当なもんなのだ。人食い鬼だってぺしゃんこさ。それに、別に一人で戦おうって訳じゃないんだ。他に三人仲間(ミストレス)が向かっているらしいから、まずまず負けることはないよ」


 ――トン、トン。

 中指なのか薬指なのか判らない指で頬をつつかれながら、ポッカはゆっくりと地面に降ろされる。

 びっくりして何も言い出せなかったけれど、こんな馬鹿力の持ち主なら、確かに人食い鬼なんて目じゃないのかもしれない。

 ポッカはそんな感想を抱きながら、地面に降りるなりひっくり返ってしまった。

 腰が抜けていた。


「ありゃあ……少し刺激が強すぎたかな。ごめんね、きみ」


 むしろ情けない所を見せてしまったとポッカの方が恥じ入るのだが、繊細な思春期の男子の心を気にも留めず、少女はごくごく普通の見た目の右腕でポッカの頭を撫で回す。

 がしがしがし。背中の方の腕よりも、かえって乱暴なしぐさに辟易する。

 年上の女性に頭を撫でられること自体はそう悪い気もしないのだが、如何せん粗雑なやり方なので毛根が痛い。

 たまらずポッカは少女の手首をつかんで撫でさせるのを止めた。


「大丈夫、大丈夫だから! ……お姉さん、あんたちょっと大雑把で乱暴すぎるよ」

「おや失敬。でもねえきみ、乱暴者呼ばわりはひどいんじゃあないかね? これでも器用さには自信があったんだけどなあ」

「冗談でしょ?」


 思わず本気のつっこみを入れてしまうポッカだが、少女はその文句へ憤慨だと言いたげに腰に手を当てて抗議の意を示す。

 ご丁寧にも三本の腕全部を添えて、だ。

 力いっぱいの否定の恰好を見てしまい、ポッカは思わず笑ってしまった。

 自分よりも年上の女性がむきになっている姿は中々滑稽に思えたのだ。


「怯えたり、腰を抜かしたり笑ったり、きみは忙しいやつだなあ」

「あはははははは」


 あっという間に色んな事が起こりすぎて、ポッカの頭の中からは人食い鬼への恐怖が消し飛んでしまっていた。


「まあいいさ、きみはそこで好きなだけ笑い続けていなさいよ。私はきみと違って暇じゃないからね、人食い鬼をやっつけに行かないとだ」

「あはは、俺だって暇じゃないですよ、お姉さん。家畜の世話しなくちゃいけないですから」

「ほーん、それじゃあ二人して仕事を頑張らなきゃあいけないね」

「ですねえ、あはははは」


 ポッカはげらげら笑い続けている。

 とんでもない腕力の持ち主が、家畜の世話と人食い鬼の退治を同じくらいの難度の仕事だと捉えている節があり、それがたまらなくおかしく思えたのだ。


「じゃあ……じゃあお姉さん、ひひっ。くれぐれも気を付けてくださいよ。間違っても、人食い鬼に()()()()をしてやってちびらせたりしないでやってくださいね」

「はいはい……まったく、男の子はすぐこれだ。調子に乗るとすぐに軽口が出る。じゃあね、きみ。仕事は真面目にやるんだよ」

「お姉さんもね。あと、いい加減きみ呼ばわりはやめてくれませんか? 俺、最初に名前言いましたよ?」

「え、そうだっけ?」


 寝ぼけてたのか、聞き逃していたのか。少女はポッカの名前を全く覚えていなかった。

 ポッカは強そうで不器用でどこか抜けている少女に向かってため息をつきながら、もう一度自分の名前を口にする。


「俺の名前はポッカです。覚えておいてくださいよ」

「ポッカね、判った。それじゃあポッカくん、きみも私の名前をよく覚えておいてくれたまえ。またぞろ、この村に訪れることもあるだろうからね」


 家畜室の扉を押し開けながら、少女は振り向きざまに名乗りを上げた。


「私はイタカ。霧歩む乙女(ミストレス)のイタカだよ」

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