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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
守晴はどこへ行ったんですか~♪
91/108

1St.ED

 ヘカテーは、非公式ながらも初めてW.C.Sに勝利した。

 その後の殺神と闘いを繰り広げていた聖剣との戦闘に加勢に入るも、既に虫の息だったようで、一発。剣で小突いたら終わった。


 殺神が言うに、消火する為に降らした、雨の矢が利いたとのこと。

 あの矢の援護で聖剣の集中力が分散され、それで会心の一撃が撃ち込めたのだと言う。

 そして、闘いのあと、ヘカテーは約束通り、殺神から雪鎧(スノゥ・アーマー)と、血の雪(ブラッディ・スノゥ)の二つの魔法の存在を教えてもらった。


 その間、W.C.Sは聖剣と姉妹で中睦まじく闘いを繰り広げていた。

 そこに、新しく教えてもらった魔法を試してみたいという、ゲーマー魂に日が付いたヘカテーが加わり、対戦を繰り広げた。


 因みに、殺神。結花はというと、闘いには加わらず、試験運転した時期アップデート予定の《KAMAAGE》ファイルのフィードバックを一人していた。

 いつの間にか、夕食を買ってきてくれるという、細かな気遣いも出来ている。


 因みに、手料理はしなかったのではなく、出来なかったようである。

 ユゥ姉も結花も料理はからっきし。そもそも、ユゥ姉が借りているアパートには、調理器具は包丁すら置いていない。


 神坂も半年前まではこの二人と、同等だったようだが、椎菜と二人暮らしするための条件として、両親に「椎菜にちゃんとしたものを食べさすこと」を提示されたらしく、死ぬほど努力したようだ。

 これには、正直驚いた雪那である。


 確かに、人間誰しも向き不向きがあるが、天才型二人の姉である神坂だ。

 出来ないことなどほとんど無いと思っていた。そんな彼女が努力をしていたと聞いて、驚きを隠せなかった。


 その事を三人にぶつけると、全員に笑われることとなった。三人が言うにどうやら、神坂は努力型の最高峰らしく、学校にいる時は、頑張って隠してはいるものの、真の神坂はポンコツらしい。

 そんな、貴重な情報を聞け、気が付くと時刻は八時を回っていた。


 さすがに、学生だけで帰すのは心配ということもあり、ユゥ姉が車で家まで送ると言う。

 そこに、厚かましく。というか呼びつたから当然の権利で、結花も乗り合わせる。

 しかし、ユゥ姉の車には、車イスは一台しか乗せられない。


 対し、この場にいる車イスユーザーは、椎菜と隻脚の結花の二人。

 まぁ、そんな心配は無用。なぜなら、結花は自宅にもう一台車イスがあるからだ。

 そうして、明日の朝に結花の車イスを届けるということで、話は落ち着いた。


 その車内。

 助手席に乗るのは、結花。

 後ろに椎菜と雪那が座っているのは、大人達の配慮であろう。

「雪那、今度は負けないよ!」


 そう意気込んでいるのは椎菜。

 対し、雪那はため息混じりに返す。

「今度はって言うけど、散々雪に勝っていたじゃない。嫌味にしか聞こえないわよ」

「そ、そうだけど、そーいう意味じゃないんだよ!!」


 雪那の分からず屋と、頬を膨らませる椎菜。

 少し、遊びすぎたかと思い、雪那が苦笑。

「うそうそ。時期アップデートしたらの話でしょ? 雪も負けないわ」

 メガネ越しにも分かる、静かに燃え盛る闘志を飛ばす。


 そんなものを飛ばされては、笑みを溢さずにはいられないのが戦闘狂である。

 戦闘狂の代表格である椎菜も、また満面の笑みで頷く。

「うん! 次は負けないよ!」


 そんな二人の世界に入っていると、それを面白くないと思ったのだろうか、シスコンのユゥ姉が軽い咳払いをした後に割って入った。

「コホンッ! それにしても、本当に強いね。雪那さん!」


「え? あ、ありがと……?」

 急に賞賛され、ユゥ姉の意図が分からずに、疑問系で感謝を述べる。

 友人を身内に褒められたことが嬉しいのか、椎菜はでしょでしょーと、ユゥ姉に、雪那の。【ヘカテー】の強さを語り聞かせる。


 それを、ユゥ姉は天真爛漫の笑みで、うんうんと聞き入る。

「やめなさいよ!」

 横で褒め千切られて、恥ずかしくなり、雪那は声を荒げる。しかし、椎菜の口は止まらない。


 恥ずかしく、赤みを帯びて行く雪那の顔。次第に汗が滝のように吹き出し、脱水症状で死ぬのでは? と思うほどまでだ。

 そんな雪那の気を少しでも紛らわすべく、結花が話を振る。


「雪那さん」

「な、何かしら!?」

 テンパるあまり、声の調整が聞かず、絶叫に近い声で答える雪那。

 そのことに、思わず結花は、口元を仄かに緩めた。


「あなた、連携に向いてないわ。昔の私と同じ。いえ、違うわね。その特異な体質のおかげで、なんでもそつなくこなしてきた分、昔の私より酷い」

「耳が痛いわね。確かに雪は連携が苦手よ。それは今日の二回の対戦で、痛いほど実感したわ」


 だけど、だからってどうしたら良いのよ。と、口の中で嘆く。

 その聞こえない質問に答えるかのように、結花の声。

「仲間を信用しなさい。あなたの仲間はあなたに守ってあげなくちゃダメなぐらい、非力なのかしら?」


 答えは実にシンプルだった。

 そうだ。仲間を信用すれば良いのだ。それだけのこと。なぜ、考えもしなかったのだろう。いや、【ヘカテー】は雪那の考える最良の騎士像を具現化したものである。


 もしかしたら、雪那の中の最良の騎士像が、思考を邪魔をしていたのかも知れない。という考えに至った。

 とは言え、雪那もそんなことで【ヘカテー】を演じることを止めようとは、考えない。


 雪那が想う最良の騎士は、自分のあやまちを指摘されたら、素直に受け入れる存在であるのだから。まだ修正は可能なはずだ。

 これからは、仲間を信じてみることにしよう。そう心に決める雪那だった。


 が、続く結花の言葉で、その想いはなしくずしになる。

「ま、書くいう私も仲間をそこまで信用していないのだけど……」

「そう、なの?」


「ええ、そうよ。期待して期待外れだったら、残念じゃない?」

「ま、まぁ、確かに……」

 結花の言葉に参道を見せる雪那。

 これに、だからダメなのよ、私も、あなたも。と前置きをしてから結花は、言葉を続ける。


「良い? あなたがもし、今後チームを組んで闘おうとするのなら、あなたが司令塔になっちゃダメ。あなたは一番強い敵や、厄介な敵を真っ先に屠る。言ったら捨てゴマ……」

 と、長々と雪那に今後、チームで戦う際の注意点や、自身の役割等について説いた。

 こうして、椎菜と雪那の初めての遊びは幕を下ろす。


「ねぇ、結花さん」

「なに?」

「最後に一つだけ聞かせてくれるかしら?」

「良いわよ……」

 一拍の間。


「どうして、あなたは、天才達の中で折れなかったの?」

「それは――――」

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