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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
守晴はどこへ行ったんですか~♪
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VS W.C.S&微笑みの聖剣

 激しい金属どおしの衝突音。

 甲高く軽い音がしたと思えば、低く重い音がする。重たい四連撃が響けば、軽い一撃が響く。リズム良く、心地良い音が何十音も鳴れば、リズムを狂わせようと、不快なリズムで音が鳴る。


 そんな、音楽を奏でているかのような、激しい攻防をみせている四人。

 攻守の割合は、やはりと言うべきか、獲物の数が、二対六と言う優位、それからスピード特化型アバターがいる、W.C.Sと聖剣のほうが圧倒的に多い。


 それでも、この六十秒間、決定打どころかかすり傷一つ付けられず、攻めあぐねているのは、殺神よ力量と、ヘカテーに事前にかけられた、結界魔法によるものだ。

 もちろん、ヘカテーの力量も少なからずある。


 あるはするが、死角から来る、変則的な藤色の剣への対応は難しく、結界がなかったら、とっくにやられていたであろう。

 さすがに、微笑みの聖剣も、遠隔操作で攻撃でない攻撃――システム外スキル、バリアブレイク――をするのは、難しいらしく、四枚の剣。そのすべてを殺神に集中させる。


 これにより、ヘカテーはW.C.Sに集中こそ出来るが、その分、殺神の負担が増えてしまう。

 闘う前に、殺神は『三枚までなら、抑え込める。でも、一枚はそちらに行くのは大目に見なさい』と言っていた。


 つまり、裏を返せば四枚は厳しいということになる。

 一刻もはやく、目前の敵を倒し、合流しなくては。と、逸る気持ちはあれど、W.C.Sはそう易々と倒せる相手ではない。


 せっかく、殺神がくれたチャンス。

 それを活かせないのは、騎士として情けない。

 仲間のピンチに駆けつけられないだなんて、何が騎士だ。期待されても、その期待に応えることが出来ない。


 そんな心の闇が、ヘカテーを不安に駆り立てる。やはり、自分では、無理なのだ。自分では目前の天才達に勝てない。

 そう思う度に負けず嫌いが発動し、いや、僕はやれる。殺神にやれると言われたんだ。やらなければ男が……いや、女が廃る。


 とりあえず、一刻もはやく、W.C.Sを打破して、殺神のフォローにいかないと。

 そう言う気持ちに、前回の戦闘みたく陥り、再び焦る。そして、始まる負の連鎖。

 とは、行かなかった。


 W.C.Sが、純粋な魔法による暴力――具体的には、氷の台を真横に伸ばし、樹との間にヘカテーを挟む。そのまま、樹と氷の台とのプレス。圧力に負けた結界は粉砕。

 不幸中の幸いで、粉砕されたと同時に、背中の樹も限界がきたようで、瓦解。


 これにより、押し潰されることはなくなり、前方の氷の槌も、剣による衝撃緩和に成功。過負荷ダメージによる微量なダメージのみで止めることに成功した――により、結界の破壊に成功し、短剣で追撃を試みるW.C.S。


 ヘカテーも即座に追撃に備える。

 刹那。

「炎盾!!」

 キレイな発句と、同時にW.C.Sの行く手に炎の盾が突如として出現。


 行く手を挟む。

 地面と足が完全に離れたタイミングで、出現したのもあり、W.C.Sは、為す術なく炎の盾に勢い良く激突。

 同時に全身が炙られ、体力のないアバターということもあり、HPゲージが二割以上吹き飛ぶ。


「ッ!」

 短い喘ぎ声と共に、いったんW.C.Sは距離を取る

 この数秒後、炎の盾は消失。

 文字どおりの飛び火を残して。

 その僅かに出来た闘いの間で、ヘカテーのケアも欠かさない。


「ハァ……。あなた自惚れ過ぎ」

 そのため息混じりの言葉で、我に返る。

 確かに自分は自惚れ過ぎていたかも知れない。自分がフォローに入れて上げないとだなんて、おこがましい。


 味方は、自分よりも強いかのアザナの四人なのだ。自分がフォローしなくても、ちゃんと闘える。

 現に、自分のことで手一杯だった、自分と比べ、殺神はちゃんと、ヘカテー。つまり、自分のことを見る余裕があった。冷静に声を掛ける余裕があった。


 自分は自惚れ過ぎていたかもしれない。

 今、自分がすべきこと。それは、一刻も早くW.C.Sを倒すことではない。

 それは、W.C.Sに余力を残して倒すことではない。


 それは、W.C.Sに全力をぶつけ勝利する事ではない。

 ヘカテーが今やること。それは、W.C.Sに全力をただただ、ぶつけること。

 それだけだ。


 その結果が自分が負けても良い。

 そう思えば、一気に仮想の身体が軽くなる。

 そう思えば、思考が冴え渡る。

 今の状況は、殺神が使った炎の盾で、森林が燃えて、軽い山火事みたいになっているようだね。


 おそらく、これからどんどん炎は燃え広がるだろうね。殺神はおそらくそうなることぐらい予想していたたろう。

 でも、炎の盾を使った。

 僕を守るだけなら、再び結界を張ったら良いだけなのに。そりゃ、炎の盾は触れたモノにダメージを与えるという、効果があるようだけど、それだけで、場を業火に包もうとするには考えにくい。


 HPが少ないW.C.Sには効果的かも知れないけど、空を飛べる聖剣に対しては自殺行為だ。

 それなのに、いったいどうして。

 と、ヘカテーは闘いが始まる前に渡された、二つの札のことを思い出す。


 一つは、先ほど殺神が使った炎の盾を出現させる札。もう一つは、雨のように水の矢が、降り注ぐ札。

 火、水。それから、W.C.Sの氷。

 そう言うことか!


 ヘカテーは、何かに気が付いたようで、走り出した。

 MPを一割ほど、札に込めながら。

 これまでにかかった時間。僅か二秒。

 しかし、されど二秒。


 スピード特化のW.C.Sが懐深くへと突っ込むのは、充分過ぎる時間だった。

 ヘヘカテーの左足のふくらはぎあたりを狙い、短剣を振りかざすW.C.S。

 この距離はW.C.Sの間合いだ。


 動きを見てから、動いては超高速の剣筋を回避することは、まず不可能。

 だが、ヘカテーは知っていた。気付いていた。W.C.Sのクセという奴を。

 HPが削れた直後のW.C.Sが放つ初擊は、必ずと言って良いほど、脚を狙うのだ。


 相手の機動力を削り、速度で翻弄しようと、そういう思いがあるのだろう。

 それ故に、この攻撃に関してはヤマを張っていた。それが、予想通りに的中したのだ。

 ヘカテーの技量では回避はそう、難しくないだろう。


 しかし、この半秒後。

 ヘカテーのHPゲージは、一割ほど削れたのである。

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