次世代フルダイブ型ゲーム機
はい! 第一章終了です! いかがでしたか?
今日はここまでとなります♪
次回は、明日の夜10時になります!
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フルダイブ技術が開発されたのは、今から五年前のことである。
フルダイブ技術の初代。それは医療目的として使われた。
『事故や病気で身体が動かなくなった人達のための仮想世界。また、生まれながらにして歩けなかった人達が楽しく遊びながら歩けるようになる仮想世界』
そんなコンセプトで開発された。
だが、開発者は最初からゲーム目的として開発しようとしていた。なのに、どうして初代が医療目的なのか。
それは率直に、開発費が莫大で単なるゲーム機開発より医療目的としての開発のほうが認可も支援も下りやすかったからだ。
医療目的として初代が開発された二年後には家庭用ゲーム機として二代目が発売。発売されるや、まだゲームソフトが発売されてないのにも関わらず用意していた二千万台が速効で完売。
二代目となったゲーム機の形は、フルダイブゲームの火付け役となったライトノベル作品の作中に出てきたゲーム機の形を真似て――パクりではなくリスペクトで、ちゃんと作者にも許可を取った――ヘッドギア型である。
【ハートバディギア】と名づけられたハードウェアに会わして、ゲーム会社が、こぞって地底探索や、海底探索、異世界RPGゲームを開発。
いずれも空前のヒットを収めたのだが、唯一の不満があるとすれば、どのゲームもソロプレイであることくらい。
別に、ハードウェアがオフライン専用なのではなく、ゲーム会社のほうが、万が一問題が起きて損害賠償を恐れていたからである。
そんなプレイヤーの不満と希望をかっさらったのが最近話題の【SMILEY】と言う名のベンチャー企業が昨年発売した一対一の新感覚対戦ゲーム《KAMAAGE》と言うタイトルのソフト。
《KAMAAGE》の最大の売りは、シンプルなゲーム性ではなく、デフォルトキャラから自分好みにカスタマイズ出来ることにある。
オリジナルのキャラで相手に打ち克つ。その趣向が見事はまり【ハートバディギア】発売以来の最大のヒット。
なぜ《KAMAAGE》と言うタイトルになったのかは、それは製作者であるツクヨミが無類のうどん好きだったのだとか……。
ツクヨミはメディア漏出を酷く嫌い、その姿、年齢、性別に至るまで一切不明。
と、まあ、こんな情報はカフェオンライン部には関係無いのだが……。
* * *
――《KAMAAGE》ゲーム内。
向き合う赤髪の少年デフォルトキャラと、桃色の縦ロール髪の少年デフォルトキャラ――
その視界上部にはタイムカウントが【030】と表示され、赤髪の少年キャラ――アバター名【アレク】――の【HPバー】が残り一割を切っているのにも関わらず、桃色縦ロールの少女キャラ――アバター名【フィアット】――の【HPバー】は一ドットも減ってない。
それが、初心者とベテランの違いなのか。
「うん。なかなか、筋はいいよ。三紅さん」
直剣を剣道の竹刀めいた構えで握るアレクに向け、中腰の姿勢で短剣を逆手に構えるフィアットは、無垢な笑みを浮かべ言った。
「でも、椎菜さんに一撃さえ与えられてないのに、誉められてる気がしないよ!?」
言いながら、踏み込み剣を上段に構えるアレク。それを、サイドステップで躱わすフィアット。
「ま、仕方ないよ。三紅さんの動きはゲームの動きじゃない」
「ゲームの、動き……?」
「そそ、こんな風に、ね」
途端、フィアットが凄まじい勢いで、アレクの懐深くまで潜り込み、アレクの心臓目掛け短剣を突き刺す。
アレクの残り少ないゲージが吹き飛ぶ。その寸前、アレクが魔法を使い、手のひらから火を出す。
その火が、フィアットの顔に当たり、ゲージを一ドットだけ減らす。
刹那、フィアットの盛大なファンファーレと共に、視界いっぱいに【YOU WIN!!】という金色の文字が表示される。
この数秒後、アレクとフィアットは霧散し消滅。
* * *
三紅との戦いが終わり、ホログラム体となった椎菜はキャラ設定部屋で戦いの余韻に浸っていた。
「姫乃さんとモカさんはダメダメだったけど、三紅さんは最後の最後に攻撃を当てられちゃった。慣れたらいい線行くと思うなぁ……」
仮想の左頬――先ほどの戦いで三紅に火を当てられた部分――を触りながら、椎菜が呟いていると、【対戦相手が退出しました。】のシステムメッセージが浮き上がった。
それを確認し、手馴れた操作で操作パネルを操り、ログアウトボタンを押す。
* * *
椎菜はフワリとした上質な感触を背中、腰、ふくらはぎから捉える。
口から、焦燥感と高揚感を一気に押し出しながら、頭に被る黒いヘッドギア型ゲーム機【ハートバディギア】――もちろん神坂が昔使用していたオーダーメイド品――を取り外し、隣のガラス机に置く。
それを待っていたかのように金切り声を上げる者がいた。
「すんごく、楽しかった! フルダイブゲームって、怖かったんだけど、椎菜さんと対戦して楽しかった。だからね。私、買うことにした。そしたら、また対戦してくれる!?」
「うん。いいよ!」
とても、高校生とは到底思えない笑みを浮かべている、三紅と椎菜のやり取りを、微笑ましく見守る姫乃とモカ。
次の瞬間、手を叩き四人の注意をこちらに向け差すと、神坂が声を上げる。
「ね? 椎菜の強さは折り紙つきてことがわかったでしょ?」
「まぁ、な。この強さなら、一年間無料パスを賭けても異論はない。椎菜の強さは身を持って体感しちまったからな」
姫乃が肩をすくめながら言うと、それを隣に立つ、モカが肯定する。
「そうですね。白雪姫さんの言う通りです。あたしもこてんぱんでしたもの。悔しいからあたしも買って練習するとしますか。白雪姫さんも一緒にどうです?」
「オレは遠慮しとく。ゲーム機がバカみたいに高いし、そんな金使うくらいなら旅行なりに使うとするよ」
「お金の心配で断念するのなら、わたしの妹のお古で良ければ一台余ってるんで、どう?」
「マジで!?」
「ええ」
思いがけない申し出に食い付きを見せた姫乃に、それを首肯する神坂。
「理事長、太っ腹ぁ!」
「良かったですね。白雪姫さん」
「ああ! てか、なぁ、モカ。オレをその呼び方するの止めろ!!」
喜びの声とは一転、怒りの声を荒げる姫乃。
対し、モカはなんのことか。と言わんばかりに頬に人差し指を当て、首を若干傾けると同時に声。
「何で今さらなのですか?」
「話しがトントン拍子に進みすぎて、言うタイミング逃したんだよ!!」
「では、そこまで気にしてないてことですよね? 良いのでは?」
「うっせ、その呼び方、一々オレの黒歴史に刺さるんだよ!!」
モカの苦笑。
「そうですか。それなら吝かではありませんね。もっと早く行ってくれたら良かったですのに……。えっと、では、スノーホワイトさん?」
モカの口から発せられた、新しい呼び方に姫乃は眉をぴくつかされる。
「わ、わざと、だろ……?」
「はい?」
この数分後、姫乃とモカの激しい攻防の末、結局天然なのかわざとなのか解らない、モカに三紅が、折れ『白雪姫さん』で良いということに落ち着いた。
その始終を見届け終えた、神坂は口を開き、経営方針をまとめ出した。
「じゃ、確認ね。カフェオンライン部の目玉は椎菜と《KAMAAGE》と戦い買った人に、一年間無料パスを賞与する。ま、詳細はやりながら摘めて行ったら良いから、とりあえず、これに異論はない?」
椎菜以外の三人が短く返事した。すると、神坂は視線を椎菜に向ける。
「ってことで、あなたの働きによって、部の命運が決まることになったわ。よろしくね♪ 椎菜♪」
「うん。任せてよ!」
椎菜は無い胸を張りそう意気込んだ。
その反応に神坂は頷き、惜しみつつ、椎菜から視線を外し、確認のために、その他の経営方針を口にした。
四人は適度に相槌をうちながらそれを聞いていると、神坂は突如、眉間にシワを寄せる。
「……。じゃ、あとは、彼女のことだけど……。あなた達の気持ちも分かるけど、わたしは本人が足を運ぶまでそっとして上げたい」
神坂が言う彼女とは、以前のカフェ部のこの学園に残る中で最後の一人で、このカフェオンライン部の結成に名前を貸してくれた彼女のことである。
その彼女にはそれぞれ思うことがあったが……。
「ま、それが妥当だろうな。先輩達が繋いだカフェ部を結果的に、自分等の手で潰す形になってしまったんだ。もし、こっちが無理に一緒にしようと言って、それを承諾したとしても、真に楽しめねぇだろうからな……」
姫乃の考えに三紅が考えを被せ、その後、椎菜、モカと続く。
「うん。そうだね。一緒にやるんなら、先輩にも楽しんで欲しいもん!」
「ボクも同意見だよ。よし、その前に部が潰れちゃわないように、ボクも頑張るよ!」
「頼みますよ。椎菜さん。部の命運は実質、椎菜さんの頑張りに係ってるんですから!!」
カフェオンライン部の部員、全員が揃うのはそう長くはかからなかった。