カフェオンライン部~開店準備
明くる日。
二千三十九年四月九日。午前九時。
「と、言う訳で来ちゃいました! 購買棟一階、カフェオンライン部~!!」
「姫乃さん。なにそれ?」
椎菜が、戸惑いながら突っ込みを入れると、
「え? 読者の方に分かりやすいかな? って?」
「ど、読者……?」
意味不明な返しに椎菜が更なる戸惑いを見せてると、姫乃が苦笑しながらフォロー。
「三紅は頭んなかに花畑があるからな。いちいち気にしない方がいいぞ?」
「ひどっ! お花畑なんてないもん!!」
「な、なるほど……。うん。覚えとくね」
「椎菜さんも、それで納得しないで!!」
そうこうしていると、モカも来たみたいで、神坂が部室の鍵を開け放つ。
カフェオンライン部という名前は、他の誰でもなく店の全容を知る、顧問を引き受けた神坂が考えたものである。
神坂曰く、ゲームカフェ部では、置いてあるゲームがレゲェ――卓上のレトロゲーム――だと勘違いしてしまうので却下。
そこで、近代感漂うオンラインと言う名に目を着けたものの、オンラインカフェ部では、なんちゃってカフェ感が否めないので、カフェオンライン部という名前にしたらしい。
そんなカフェオンライン部の内部に踏み込んだ一同だったが、内部は暗く、入り口数メートル地点しか見通せない。
刹那、パチッ。と微かな音が聞こえ、室内に明かりが灯る。
以前のカフェ部を知っていた三紅、姫乃、モカはあまりにもの変貌振りに思わず絶句。
確かに家具や食器等は学園見学のカフェ部と同じであった。
しかし、以前はザ・学校感漂うLEDの蛍光灯だった証明は、シックな丸電球に変わっており、壁も純白な壁から木目の壁紙に張り替えられている。
そして、何より驚いたのは以前より広さが一.五倍程、広くなっているという点。
食堂側に接したキッチンは広さは変わって無いように見える。にも関わらず、外壁に違和感がないので、この事からキッチンを壁事移動したのであると、考えられる。
壁には当然のことながら、ガス管や水道菅が埋め込まれている為、大規模な工事がなされたのだろう。
それだけででも多額の金銭が掛かったのは容易に想像がつくのだが、入口の向かい側の壁――四十メールの壁――その中心に埋め込まれている二十メートルの超巨大モニター。その両端には価格二万円以上と以外に高級なゲーミングチェアが五色。それぞれ二脚ずつ。計十脚。
その中央――モニターに邪魔にならないよう――に設置された黒色のゲーミングチェアは一目見ただけで高級感を漂わせている。おそらく、一脚数十万は下らないだろう。
「な、なぁ……。理事長、あんた、マジなにもんなんです?」
姫乃がおそるおそる聞くも、その問いはやはり受け流されることとなった。
「さぁ?」
「そうかよ。じゃぁ、これ総額いくらしたんです?」
神坂は暫し可愛らしく、唸り声を上げ考えこんでから、答えた。
「んー……。二千万くらい?」
「に……」
「二千万……!」
その悲鳴が三紅のものなのか、はたまたモカのものなのか、どっちがどっちか判らなかった。
「で? 内訳は?」
「改善費が千万。モニターが四百万。ゲーミングチェア十脚で百万。最新ゲーム機十台で七十万。追加備品で三十万てところかな?」
「ゲーム機については後から言及するとして、あと四百万はなんなんです? まさか、あのやたら高級そうな椅子じゃないよな? です」
「まさか、あの椅子は昔わたしが使ってたオーダーメイド品。最近買い換えたから新部祝いにここに寄贈したの。もちろん、椎菜専用として、ね♪ 値段は、だいたい二百万くらい?」
外壁の筈なのに、一面をカーテンで隠しているキッチンとは反対側の壁。
そのカーテンがガーと機械音を立て突如、開く。そこから、目映いほどの陽光が射す。
これには、姫乃も思わず絶句。カーテンが半分開いたところで、神坂はイタズラな笑みを浮かべながら喋りを再開。
「……で、これが四百万の壁一面をマジックミラー。外からは普通の壁に見えるように、マジックペイントを施してあるってわけ。どう、気に入って貰えた?」
「す、すごい! すごい! すごい、すごいすごいすごいすごいすごいすごい!! これなら、前より憩いの場になること間違い無しですよ!! きっと! すごいです。理事長! いえ、凄すぎます!」
神坂の金銭感覚と凄まじくオシャレになった部室に脳がマヒし、言語機能がバグってしまった三紅。
凄まじい勢いで詰め寄る三紅に圧倒され、ついには壁際まで追い込まれてしまう。
神坂が三紅をなだめようとするも、三紅の熱はなかなか引いてはくれない。その光景を見兼ねた姫乃はフォローに向かう。
未だ、この状況に整理がつかず、口をぱくぱく動かすのみのモカは、ふとこんなことになっても、微動だにしていない椎菜が視界に入り、苦笑。
「椎菜さんはやはりすごいですね。さすがは理事長の妹というべきですか。こんな堂々としているなんて。……へ?」
ドサッ。
そういう音と共に、車イスから床に顔から落下する椎菜。
後ろから肩を少し叩いただけで車イスから落ちた椎菜に、モカは北欧風のキレイな顔が破願してしまうほどの、驚きに包まれていると、神坂が当然の様な口振りで、説明する。
「あー、わたしの家。普通より下の……。っていうか貧乏だったんだよね。それが、見ての通り、わたしの代で成り上がったのが、四年前。椎菜は、カフェ部を復活するために無理やり転入させたんだ。て言うわけで、椎菜は十万超える金額を聞くと発狂。百万を超える金額を聞くと気絶してしまうの。ま、そこが可愛いんだけど♪」
うわっ。Sだ……。椎菜、かわいそう。
蕩け顔でヨダレを口端から垂らしている神坂に冷たい視線を同時に送る、三紅とモカは気絶している椎菜に同情の念を送っていると、姫乃が昨日の今日ですっかりと恒例となった噛み付きを見せる。
「……。あんた、マジなにもんなんです?」
「さぁ?」
いつもならここで諦めてしまう姫乃だが、今回は少しばかり違った。
「成り上がったのならネットで名前を検索してヒットしてもおかしくないんだが、ヒットしなかっぞ。です」
「だって、わたし本名で仕事してなかったもん」
「あんた、マジなにもんなんです?」
心のそこからそう思ったが、神坂はやはり軽くあしらった。
「さぁ?」
「詩野姉ぇ。そろそろ経営方針の説明をしたら? 上で食堂の人たち待たせてあるんでしょ?」
言い放ったのは、いつの間にか意識が復活していて自力で車イスに乗っていた椎菜だ。
「そうね……。じゃ、更衣室兼備品庫に行きましょ」
「あ、あの、食堂の人たちを待たせてるって、何でですか?」
「あー、知らなかった? カフェ部は部活とは言え、飲食物を出すんだから、新人指導を食堂の人たちにお願いしてたらしくてね。それと同様にこの部も指導をお願いするようになったんだよね。それで、あなた達の熱意を伝えたら快く、休日返上で指導を引き受けてくれた。あ、手当ては出してるよ。もちろん、わたしのポケットマネーで、ね」
「げッ……。つまり、こうしている間にも上で待たしてるってことか?」
「それは、なんか申し訳ないね」
「そうですね。経営方針の説明は指導が終わってからに聞くってのはダメなのですか?」
三紅、姫乃、モカの三人が待たせていることを後ろめたく思っていると、神坂がその心配は無用って言わんばかりに手を左右に振る
「それは、大丈夫。食堂の人とは、部室の設備やらそれぞれの役割分担について話さないとだから少し遅れる。って話つけてあるから。さ、わかったら、更衣室に着いてきて」
どこまでもマイペースな神坂に半ば振り回される形で四人は更衣室へと足を踏み入れた。
キッチンの奥にある引戸の先にある更衣室は、普通の更衣室なようで、簡易ロッカーが八個に、椎菜用と思われるドレッサー型のロッカーが一つ。鍵穴が付いたショーケースが配置されていた。
四人はとりあえず更衣室は普通だと分かり胸を撫で下ろすと、鍵穴が付いたショーケース――おそらく備品庫――に眼を向けた。
ショーケースは一段を二分割に隔てそれが六段。一番下の左側は空。
それ以外は、プラスチック製のヘッドギアが各一個ずつ入っていた。
そこまで四人が視認したのを待っていたかのように神坂が口を開いた。
「さ、あんまし待たせるのは申し訳ないから経営方針について話すけど、良い?」
今回はここまでです♪
次回は夜10時時更新です♪
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