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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
カフェ部は昨年廃部になりました♪
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五人目の部員

「はーい♪」

 とたんに、神坂の声音が浮き足立つものへと変貌し、ノック音が聞こえるドアの方へとスキップしながら向かう。

 そして、ドアを内側から開けたとたん、顔が溶けてしまったのかと思うほど緩まり、声音もさらに甘いものに変貌しさせ、その人物を迎え入れる。


「いらっしゃーい♪ 椎菜(しいな)。ちょうど、あなたの話しになったところ。いつも、タイミング良いんだから。さっすが、わたしの妹♪」

 三人の思考も性格もおそらく違うものだろう。だが、この時に関しては満場一致で思ったであろう。


 ――うわ……。シスコンだ――と。

 対するおそらく椎菜と思われる声は、神坂にはあまりにも素っ気の無いものだった。


詩野(しの)姉ぇのシスコンっ振りは相変わらずだね……。で? どこまでボクのこと話したの?」

「椎菜がわたしの末の妹ってことくらいかな♪」

「そう……。まだ肝心な所は全然ってことね」


「ん。まぁ、ね。椎菜も自分で話したいでしょ?」

「ん。ま、そりゃ、そうだけど……」

 その会話の内容から幸いにも椎菜はシスコンでないようだ。と、安堵し三人は同時にほっと息をついた。


 そのタイミングとほぼ同時に、神坂がようやく退き、神坂の妹。椎菜の全貌が見える。

 椎菜はこの場に居る誰よりも低かった。その理由は身長じゃなくて、座高だったから。

 そう、端的に言えば、椎菜は車イスに乗っていた。


 この事象に、どう反応すべきか迷っていると、椎菜は部屋内部まで移動してきて、満面な笑みを浮かべ、元気に手を振り上げる。

 同時に声。

「ヤッホー!! ボク、高校一年の神坂椎菜! よろしっくー」


 そんな、すこぶる元気な椎菜の言動は果たして素なのか、演技なのか。

 どちらにせよ、三紅は対応を決めた。

「私は錦織三紅。名字はなんかゴツいから嫌いだから、三紅って呼んで。よろしくね。えっと……」

「椎菜で良いよ!」


「ん。わかった。よろしくね。椎菜さん」

「うん。こちらこそ。よろしく。三紅さん」

 三紅と椎菜の挨拶が終わったあと、姫乃とモカも挨拶を済ませ一段落。

 モカが椎菜にとある質問をする。


「椎菜さん。一つ聞いても良いですか?」

「うん。なに?」

「ソレ、どうしたんですか?」

「あぁ、これ? やっぱり気になるよね? 物心ついた時から車イスなんだよね。ボク」


「いや、そっちじゃなくてですね……」

「へ?」

 椎菜が情けない声を出し、固まっていると、すかさず姫乃が苦笑混じりにフォロー入れる。


「お前なぁ。外国は日本と違い、車イスだの障害だのに理解がある国がある国が多いだよ。とくにヨーロッパやアメリカはな。そして、モカの顔立ちから北欧のどこかの国とのハーフだか、クォーターだかだろ。そんなモカが言うんだから、眼帯のことに決まっているだろ」


「へ、へぇ知らなかった……。モカさん、ごめんね」

「いえ、あたしの方も聞き方が悪かったです。すみません」


 そう、椎菜はキレイな藍色の髪をショートカット。前髪をシースルーに……。そして、姫乃の言った通り、右目を眼帯をしているが、左目はオニキスが埋め込まれているのかと思わせるほど、純粋な眼。

 またついでに言えば、乗っている車イスは介護用のではなく、スタイリッシュなタイプで、フレームは白。


 そんな椎菜は右目の眼帯を触りながら、眉間にシワを寄せる。

「コレは……。ごめんね。言えないんだ」

「そうですか。ま、こちらとしても無理に詮索しようとはしません」


「うん。ありがと」

 若干、空気が重くなったのを感じた三紅が陽気に質問する。

「ところで、椎菜さんはどっち?」

「どっちって?」


「うん。理事長に頼まれて名前だけ貸しに来たのか、それとも、私達とカフェやりに来たのか。ま、私としては、椎菜さんと一緒にカフェやりたいなって思ってるんだけど……」

 椎菜がやや食い気味で答えた。

「もちろん。一緒にやるつもやりだけど、ただね。一つ条件があるんだ」


「じ、条件……?」

 その条件を口にしたのは椎菜じゃなくて、神坂だった。

「そう、ゲームカフェにすること、それが椎菜の入部条件」


「ゲームカフェ?」

 椎菜がそれを首肯。

「うん、そ。ボク、ゲームが好きなんだ。だからね。ボクの好きな物を使って、何か、役に立てたらなぁって……。ダメ、だよね?」


「んー、ダメじゃないけど、部費とかでゲーム機揃えるの大変だからさ……。ちょっと難しいかなって?」

「でも、可能なら面白そうですし、やってみたいきもしますね」

「だね~」


 三紅とモカが椎菜の案を肯定的な態度を見せると、姫乃が悪魔めいた笑みを浮かべる。

「別に無理じゃ無いだろ? 金の面に関しちゃ、心強いスポンサーもいることだし? あとは、やりたいかやりたくないかの問題じゃね? そうだろ理事長?」


 三紅とモカが一斉に神坂の方に振り向くと、神坂も姫乃と同種の笑みを浮かべていた。

「まぁ。姫乃さんのいう通り、可愛い妹のためだし、やるとなったら、諸経費は実費で揃えて上げるからお金の心配はいらないわ。それと方針も考えてあるから、あとは、あなた達がやるかやらないか決めるだけよ?」


「「やります!!」」

 三紅とモカはそう問われると、なんの迷いもなく、ほぼ同時に、食い気味で答える。

 神坂の微笑


「そう、決まりね。じゃ、入部届けにサインを書いてくれる? 今日中に申請を許可して、明日には部室使えるようにするから。経営方針は現物を見てからの方が分かりやすいと思うから明日部室で説明する。明日からちょうど休みだし。充分に開店前指導やら出来るから、週明けにはリニューアルオープン出来ると思うから」

「えっと? そんな、今日の明日で準備できるものなんですか? ゲーム機とかいろいろ……」


 三紅の疑問に神坂は至って平然に答える。

「なにを言っているの? 春休みの時に、事前に準備してただけのこと。ついでに、購買棟のクリーン業者と称して改装業者にも入って貰いましたし……」


 それを聞いた、三紅もモカも、妹である筈の椎菜でさえも、絶句した。

 しかし、この展開をどこか想定してたような姫乃だけは苦笑混じりの声を神坂に浴びせる。

「さすがとしか言い様がないが、さすがに独断で決めたのは不味いんじゃね? です」


「それはご心配なく。こっちには強ーい、カードがあるから♪」

「あ、そ。じゃ、もう一つ聞くが、オレ達がやらないって言い出したらどうするつもりだったんです?」


「言ったでしょ? 過去は変えられない。重要なのは未来。それがわたしのポリシーなんだって……。結果的にはわたしの思惑通りにカフェ部は復活を果たした。それだけで充分。そうは思わない?」

「けっ……! つまる所、オレ達はあんたの手のひらの中で踊らされてたってことかよ……!」


「あら、人聞きが悪い。わたしはこうも言ったよ? 人がどう思うかはその人自身しか解らない。ってね」「どうだか……」

 姫乃が肩をすくめながら締め括った。それとほぼ同時に、ようやく、思考が正常に戻ったのか、モカが声を荒げた。


「ち、ちょっと待って下さい!!」

「……。今度はなんだよ?」

 ため息混じりに姫乃がそう応じると、白い肌が血の気が引き更に白くなったような顔をしかめながら、姫乃の顔を見つめる。


 刹那、声。

「し、白雪姫さん、あなたはまだやるとは言ってませんよね?」

 姫乃は眉間を寄せ暫しの沈黙。そんな姫乃を見て、モカと椎菜の表情が曇る。


「姫乃、意地が悪いよ……」

 三紅が口をやや尖らせながら言うと、姫乃のガマンが限界に達したのか、プッと吹き出した。

「やるに決まってんだろ? オレはコーヒーが淹れれたらそれでいいんだよ。に、してもお前達は本当に良いのかよ?」


「と、言いますと?」

「モカはどうか知らないけど、三紅はカフェ部の雰囲気に惚れて入部したいって言ってたろ? 理事長がこの春休み中改装業者入れたって言ってたろ? 雰囲気もがらっと変わってるぜ。きっと……」


 姫乃が横目で神坂を見て、その答えを言うように促すと、その表情は気まずそうなものだった。

「み、三紅さん。すみません。姫乃さんの言う通り、改装して、カフェ部は少しばかり変えてしまった。ですが、家具や食器は変えてない。これは本当」


 三紅は少しばかり残念な顔をしていたものの、すぐに元の可愛い笑顔を取り戻した。

「い、良いですよ。本当は少し残念ですけど……。でも、ゲームカフェにするならどうせ、内装もちょっと変え無いと行けなかった訳ですから。ただ、どうせなら、自分達で考えたかったな。と思いますけど。それに私はみんなの憩いの場になっていたカフェ部の雰囲気に惚れたんで……」


「そうですね。あたしも錦織さんと同意です。それに、あたしは色んな料理を試してみたいだけですし」

 三紅の言葉に被せるようにして、自分の意見を述べたモカ。

 ようやく、入部届けに五人の名前を書き終わり、新部申請を神坂に任せて、理事長室を出た頃には夕方になっていた。


  * * *


《       新部申請書

部 活 名:カフェオンライン部

希望教室:購買棟1F空き部屋

構成部員:大学1年 芥甘那  ⭕

     高校1年 白雪姫乃

     高校1年 神坂椎菜

     高校1年 錦織三紅

     高校1年 宮坂モカ

担当顧問:神坂詩野》

今回はここまでです♪

次回は夜8時更新です♪

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