陣営紹介
今回、諸事情によりチームを再分類された。
椎菜・モカ陣営。
純粋無垢で危うい印象の椎菜と、身体の使い方が下手なモカは、その守りたくなる印象から、運動部が多く集まった。
「みんな。今日はボクなんかのために集まってくれてありがとう! ボク頑張るからね! だから、みんなも頑張ろうね!」
「椎菜さーん! あたし頑張るからね~!」
「椎菜さん! こっち向いて~!」
椎菜の激励を飛ばすと、アイドルのライブ挨拶みたいに、黄色い声援があちらこちらから上がる。
それが落ち着くと、椎菜が再び声を張り上げる。
「それと、料理の仕込みをしているモカからの伝言! みなさんに、事前に配った特別メニューチケット。もし勝利したら、期待してって、さ! だから頑張ろうね!」
「おおおおーー!!」
さすがは、運動部員達で、特別メニュー、と聞くと目の色が変わり、大気が揺れ動かさんばかりの気合いとやる気に満ちた声が飛ぶ。
* * *
守晴・雪那陣営。
ここは、打って変わって、守晴と雪那の熱から、集った体育祭勝利ガチ勢。
「雪が顔になる以上、必ず勝利、とは言わないけど、手を抜く事は赦さないわ……」
「もちろんですわよ! ワタクシ達運動部の部長ならびに服部長、エース達はここで勝たないと、面目立ちませんわ! もっとも一番倒したい相手が仲間だなんて残念で、溜まりませんけど、手加減抜きの勝負。という公約がここだけでしたから、仕方ありませんわね。ここはいったん休戦と行きますわよ」
と、相変わらず競泳水着な水泳部部長の西園寺を筆頭に、見方の守晴に敵対心剥き出しの、運動部の部長、エース達。
「ああ、協力感謝する」
「勘違いしないで欲しいですわね! この闘いが終わったら次はあなたですわよ! 首を洗って待ってなさい! 良くって!?」
「ああ、挑戦いつでも待ってる……」
不適な笑みを交わす守晴と、西園寺。
そんな、チームワークが少々不安のある血の気の多い集団である。
* * *
残す、三紅・姫乃陣営。
これは見るでもなく、姫乃がいる時点で、この陣営は、エンジョイ勢や、どうでもいい人達の集まりである。
なので、他二つの陣営のように、堅苦しい集会なんて開かない。
ただ、流れ作業でそこにいるだけ。
因みに生徒会、風紀委員、報道部はお目付け役として、例年通り別れてはいるものの、三紅・姫乃陣営は運が良いのか、悪いのか一番緩い報道部がお目付け役として、付けられている。ので、士気系統でとやかく言われる心配はない。
内乱や欠場者多数でない限り、口出しはされないという、最高の場所だ。
しかし、以外に頭の硬い三紅はその限りではなかった。
「ほーら、姫乃。せめて挨拶しよう」
「やだよ。めんどくせ」
「もぉ! 先輩達に面目たたないから……」
「あぁ、良いって良いって、三紅ちゃん。私達は最後の騎馬戦と、後夜祭メインで参加だからさ……」
一人の文化系の先輩が、士気がまったく感じられない口調で答える。他の先輩達や同級生もうんうんと頷く。
それに、三紅がそれじゃ、あたしの今までの苦労は!? と、言わんばかりに涙目で声を張り上げる。
「先輩達!?」
これでは埒が明かないと、思った姫乃はため息まじりに提案をする。
「じゃぁ、先輩ならびに同級生方、うちの三紅がうるさいんで……」
「うるさいとか言わないで!?」
姫乃は、興奮ぎみの三紅の喉元を手で猫を宥めるようにしながら、言葉を続ける。
「オレは正直、椎菜に勝てれば、チームとして負けようが勝とうがどうでも良いと、思ってる。おそらく先輩方もそうだと思います。んで、ここからが提案……」
先輩や同級生達は、姫乃の話三割、で聞いていた。つまり、ほとんど集中して聞いていなかった。
残り七割は、姫乃の手により、なだめられ、ごろごろ喉を鳴らしている三紅のことに集中していた。ほとんどが、ヨダレをたらしながら、あるいは生唾を音を立てながら呑むという行為をしていた。
「て、提案?」
そう誰かが粒やくと、姫乃は口元をニヤリと、緩ます。
「ああ、提案だ、です。正直に言うと、オレも部費が掛かっている騎馬戦には、部長代理として、正直勝ちてぇと思ってるです。だからここで、少しでも疲れさせるため、正直裏でいろいろ動いた」
「ず、ずいぶんぶっちゃけるじゃない……。た、例えば?」
「つっても、モカが記念品として、チーム全員に特別メニューチケット配ってたから、チーム優勝したら、メニューを豪華にしたら面白いんじゃね? って提案しただけだがなです」
「へ、へー……。やるじゃない。でも、残念。ここにいる人達を疲れさせようとしても、そうは行かないわよ」
「わーってるよ。だから提案って言ってんだろです。もし、試合で一位になれば、ソイツにはうちのマスコットの三紅を一度だけモフれる権利を与えるってのは、どうよ?」
「……。へ?」
言葉を遅まきに理解する三紅。
その半秒後には、反論を試みるも、時既に遅かった。
「おおおおーー!!」
という、謎の士気が強まった。
こうして、全ては姫乃の手の上で幕を開けたのである。