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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
姫乃と椎菜、本気を出したらすごいんです♪
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椎菜VS王子~後編

 迫り来る大盾が、サファイア騎士の視界を遮る。

 避ける? 氷柱で突き上げる?

 いや、どっちにしろ後ろから相手が迫っていたら、その攻撃には反応が遅れる。 


 んー。相手の戦法が分かったら、作戦が立てやすいんだけど……。いや、一回見たんだけど――

 というのは、この試合をする前に、王子は守晴の申し出で手合わせを受けている。


 その為、王子の闘い方はたいてい検討は付いている。

 しかし――でもなぁ、リアルとゲームの闘い方って違うことが多いんだよね。    

「よし、ここは……」


 サファイア騎士は小さく呟き、急ブレーキを掛け、脚で踏ん張る。

 真正面から飛んでくる大盾を受け止める。

 鈍痛ダメージで、微量【HPゲージ】が削られるも、それまでに留まる。


 サファイア騎士を、一メートルほど交代させたところで、大盾に掛かっていた運動エネルギーが、小さくなる。やがて、ドスンという象の足音にも似た音を立て、乾いた地面に落ちる。


 大盾から視界が解放され、相手を探そうと辺りを見回そうとするも、それは稀有に終わった。

 なぜなら、重装備少女は、背中から両の先端に刃が、付いている槍を取り出しているのみで、スタート位置から一切動いてなかったのだから。


 この事で五割がた確定。やはり、リアルでの守晴戦同様、王子の戦い方は、相手が仕掛けて来た攻撃を受け流し、そこからカウンターを浴びせるものだと。

 五割。というのは、闘いの場で決め付けは油断に繋がる。


 決め付けて闘っていると、相手の思いがけないカウンターにあい、敗北に繋がりかねない。それが椎菜が《KAMAAGE》ナンバーツープレイヤー、【ヘカテー】との闘いから学んだことである。


 故に、椎菜は決め付けはしない。あらゆる可能性を踏まえ、常に行動している。

 とはいえ、王子がカウンター型だと言うことに、もう少し確信が欲しい。

 そんなわけで、サファイア騎士は、めったにしない心理戦で揺さぶりをかける。


「ふーん。動かなかったんだ……。やっぱりキミってカウンター型?」

 そんな、ド直球な言葉に、片手で槍を柄の中腹で掴み、縦に持っている重装備少女は、いたずら混じりの笑みを浮かべる。


「いんや。あの姉ちゃんには、あの闘い方が良いって判断しただけだ。俺はオールラウンダー型だ。そうでなくちゃ、姉貴に勝てねえからな……。動かなかったのは、そっちの出方を伺うためだ」


「へぇ、なるほどね」

 やっぱり凄いな。姫乃は……。ボクもいつか本気で闘いたいな。等と言わんばかりの笑みを浮かべるサファイア騎士に、ジト目で言葉を続ける、重装備少女。


「あとなぁ。どこに地雷があるかわからないのに動くバカがいるか? そりゃ姉貴や、あの姉ちゃん、もしくはお前のように超感覚があれば、地雷が発動する前に逃げることが出来るかもしれねぇけど、俺には無理だぞ」


「へえ、なるほどね」

 今の言葉で、セットした氷柱トラップがバレていることが分かり、悔しがるでも、強がりでもなく、ただただ楽しそうに笑う。

 と、動きを再開。


 剣に手を掛けながら、再び距離を詰める。

 対する重装備少女。今度は手に持つ槍を投げることなく、堂々と迎え撃つようだ。

 やはり、本人の口からもあったように、サファイア騎士がセットした地雷を気にして、上手く動けないのか。


 ともあれ、重装備少女が持つ【両槍ウミボタル】は、長さ的に言えば、剣の倍はあるが、両側に刃が付いているため、中腹でしか、持つことが出来ない。

 それ故、間合い的に言えば、剣と同程度しかない。それが分かっているからこそ、サファイア騎士は躊躇なく、自分の間合いまで、一気に詰め寄る。


 が、それは同時に相手の間合いに入ることを意味する。

 そして、両者が互いの間合い入り、一気に戦闘が激化する。

 かと、思えたが サファイア騎士が間合いに入ったタイミングで、重装備少女は、槍を地面に突き立て、それを軸に横に躱わし、サファイア騎士の後ろを取る。


 それを知覚したサファイア騎士は、MPゲージを一割ほど減らし、両者の間に薄い氷壁を作り出す。

 頑丈さには、少々不安はあるが、それでも勢いを少しは殺してくれるだろう。という思いで作った氷壁だが、一向に槍の追撃が来ないのを訝しみ、左に回り込む。


 と、重装備少女は振り返ることなく、サファイア騎士の軌跡を辿り、大盾の所に向かっていた。

 それは完璧な地雷避けと言っても過言ではない。


「本当に初心者なの!?」

 サファイア騎士が初心者離れした重装備少女の判断力に、短く喘ぐと、これ以上、足場を作らせまいと、自分が作った安全ラインの上を通り追う。


 足の速さの最大速度は同程度であるも、重装備少女は初心者で、まだ要領を掴んでなく覚束ない足取りだ。そのためだろう、サファイア騎士がすぐに追い付く。

 そして、サファイア騎士が再び間合いに入り、斬りかかる。


 しかし、それはまたしても敵わなかった。

 先に、重装備少女がノールックで、槍を後ろに引いたのだ。

 さすがの超感覚を持つサファイア騎士でもゼロ距離で、しかも攻撃モーションからの回避は、間に合わなかったらしく、右ドテッ腹に槍を受けてしまう。


 しかし、不幸中の幸いか、後ろに付き出すことで力が伝わらず、サファイアの鎧にヒビが入るだけに留まる。

 衝撃によるダメージで一点五割ほど【HPゲージ】が削れる。


 鈍痛ダメージで大きくゲージが削られると、ごく稀に【スタン】。つまり、アバターが動かせなくなる時間が生まれる。

 今回のサファイア騎士が一秒間動けなくなったのはそういう理由で、それを知らない重装備少女は大盾の所に走るのに、貴重な時間を費やした。


 大盾の所へたどり着くと、振り返る。同タイミングでサファイア騎士が、【スタン】から解き放たれる。

 とコンマ一秒の狂いもなく、空いた距離を一瞬にして詰める。


 その間、重装備少女はサファイア騎士の動向にも目を暮れず、槍を弄っていた。

「ええっと、どうやるんだ? こうか? 違うな。ああ、こうか……」

 重装備少女がしたかったことが出来たのは、あと半秒で仮想の右腕とさよならする時であった。


 【両槍ウミボタル】の、柄が伸び……。いや、違う。二つの短槍に分離したのだ。

 その短槍で剣を見事に防いだ。

 それを知覚したサファイア騎士が苦笑。

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