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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
姫乃と椎菜、本気を出したらすごいんです♪
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椎菜VS王子

 五月にバージョンアップされ、毎度のように、賑わいを見せている円形闘技場。

 さらに、言うなれば、痛み機能を追加しても、未だ、現実の身体に影響が出たというクレームや事案は上がって来てない。


 なぜか。

 それは、長いことゲームをプレイしていく上で、脳がこれは現実とは違う。傷付いても、本来の身体は傷付かないという下地が出来たからだ。

 この下地が完成しているならば、多少のリアルな痛みでも、《ノージーボ効果》が発動しないということではないか。と、《ハートバディ・ギア》の開発チームは言う。


 また、《KAMAAGE》運営側も良く考えていて、史上初、痛みを感じるフルダイブゲームということで、興味を持ち、今から初めるプレイヤー達は、その下地がないため、《ノージーボ効果》が起こる心配がある。


 その為、【ペイン機能】と称して、累計百回対戦しないと、解禁しない自由選択可能な機能として実装したのだ。

 また、【ペイン機能】ありと、なしのプレイヤーが、闘うのは、圧倒的に【ペイン機能】なしのプレイヤーが有利。痛みを感じないのだから当然である。


 なので、相手が【ペイン機能】をオフにしてる場合、キャラ決定と同時に、システムウィンドウが表示され、そこからこっちもオフにするか選ぶような仕様となっている。

 ――強制解除とはせず、あくまでプレイヤーの自主性に任しているのは、ハンデ機能ともして活用を目的にしているため――


 そんな今、人気大絶頂の《KAMAAGE》。だが、此度の円形闘技場は静まり返っていた。

 そう、ここは、聖ブルーローズ女学園のローカルネットにのみ接続された円形闘技場。


 そのため、外部からの観客は原則的に、不可能となっている。

 この円形闘技場の戦いをナマで観戦するためには、カフェオンライン部にある都合、九台の【ハートバディギア】を使わないと行けないのだ。


 また、生徒のなかには当然、フルダイブゲーム事態を初めて遊ぶ人もいる。そんな中で、誤って《ペイン機能》をオンにして、《ノージーボ》効果を起こしたら一発アウト。

 今年の冬開催されるという、《KAMAAGE》インターハイのために、導入した学校も自衛のため、廃止をやむを得ない。


 しかし、そこはさすがの運営。そうなるより先に、学園版の【ペイン機能】をなくした《KAMAAGE》がリリースされた。

 これにより《ノージーボ効果》の心配はなく、学校での取り扱いも廃止にならずにすんだのである。


 そんなことをつい知らずに、静まり返った円形闘技場の観客席に、転送された四つのアバター。

 そのうちの一つ、赤髪でツンツンヘアーの少年、【アレク】を操る三紅が無邪気にはしゃぐ。


「楽しみだね~。おー君と椎菜の試合。どっちが勝つかな?」

 それに、栗色の髪を持つ青年、【サーバル】を操る姫乃が気だるげに答えた。

「ったく、なんでオレまで……」


 続く実装されたばかりの茶髪のボブヘアーな少女、【ティーナ】を操るモカ。

「んー、どうでしょう。スノー様は確かに万能ですけど、このゲームはやったことないって言ってましたし、さすがに無理なのではないでしょうか?」


 王子が負けるムードを漂わせるモカに、続くは、アップデート以来、【ティーナ】と同様、チーム用の魔法として、評価が見直された【フィアット】を操る守晴が、その考えは否定する。


「いや、おそらくは、あたいと同等か、それ以上の強さを持っている。椎菜と同等に戦えよう。引き分け、あるいは……」

 その考えを三紅は肯定。

「うん、おー君は、姫乃の下位互換でもあるけど、上位互換なんだもん」


「けっ! オレに対する嫌味かよ……」

 姫乃が毒づく。

 続くモカは、不思議そうに問う。

「それって、どういうことですか? 錦織さん」

 得意気に答える三紅。 


「あー、それはね、確かにおー君は、ポテンシャル的に言えば、姫乃には勝てないけど、姫乃って、ほらめんどくさがりでしょ? その点、おー君はがんばり屋さんだから、その分、姫乃より強いって訳。だけど、姫乃が本気で取り組んだものには勝てないけどね」


「な、なるほど。それで下位互換だけど、上位互換ですか……。やはり、凄い、スノー様!」

 モカが小声で感心していると、守晴がいつも通り、抑揚のないようで、期待に胸膨らませている声をあげる。


「さすがは、我が友。いつか本気のお前と、闘いたいものだ」

「だから、闘わねぇっての!?」

 姫乃がツッコミを入れると、ほぼ同時に上空から二つの光の円柱が降り注ぐ。

「始まるみたいだね!」


  * * *


 円形闘技場に降り立った椎菜は、まず相手のアバターを確認する。

 相手はどうやら、初心者向けのデフォルトキャラである金髪少女の、聖女という、言葉が良く似合う容姿の、【アマネス】を使用しているようだ。


 この【アマネス】の魔法は、【HPゲージ】がゼロになっても、一度だけ半分まで回復する、というものである。

 他のキャラとは違い、魔法が闘いのカギとなる《KAMAAGE》に魔法が意図的に使えないので、頼れるのは、自分の戦闘力のみ。


 なので、純粋な戦闘力を養いつつ、対戦相手がどんな魔法を使うのか。どういう魔法が使えるのか、あるいは、使いたいのかを見付けるのには、適している。

 もし、これが普通のデフォルトキャラだと、魔法が使えるので、それを戦法に取り込んでしまう。


 そして、使いたいキャラを見つけた時、いざ変えた時、変な戦法のクセがついており、盆ミスが起きやすい。

 それを避けるために、運営はこの【アマネス】の説明書きに、初心者向けのキャラと書いているのだ。


 また、魔法が意図的に使えない為か、このキャラの筋力パラメーターは異様に高く設定されている。【アマネス】は中肉中背のアバターである。普通その様なアバターに装備できる武器は、軽鎧と片手剣、バックラー辺りが定石――だったの――だが、この【アマネス】、デフォルトキャラのままで、重鎧、両手槍、大盾を装備できるのだ。


 ま、装備できるからと言って、両手槍と、大盾を扱う時は、必ず両手でないとならないという決まりがあるので、扱う時は、常に片方だけなので、装備しても、過重量で速度が下がらないとは言え、装備しているバカは早々いない。


 しかし、椎菜はその事をもったいないと思っていた。

 何故たかは、この闘いで証明されることとなる。

 そう、王子は重鎧、大盾、そして【両槍ウミボタル】という名の、刃が両側に付いている両手槍を装備していたのだ。


 その行動は、初心者が最初にやりがちな、とりあえず、なんでもかんでも装備すると、いうバカな過ちか、それとも、椎菜と同じことを思って、装備しているのか。

 もし、前者ならば期待はずれ、後者ならば楽しみだ。どちらにせよ、闘いが始まれば分かることである。


 そこまでを椎菜は一瞬で考え、金髪少女に声をかける。

「へぇ、そのデフォルトキャラにしたんだ」

「おう。初心者向けって書いてあったしな」

「王子君って、案外堅実派なんだね!」


「まぁな。そっちは……。えっと、【シェシー】? だっけ?」

「うん。ボクの一番得意なキャラ! でも、ほんとに良かったの? 手加減なしで……。ボクはそっちのほうが楽しいから良いけど……」


 金髪少女は、気丈にあるいは、自信過剰に嘯く。

「ああ、いい。だって、お互い本気じゃなかったら楽しくないだろ? それに、強い奴と闘い還付泣きにまで一回叩かれたら、大概技術は盗めるしな!」


 それを聞き終えたサファイア騎士の心から迷いが消え、なんの迷いもなく頷き応じる。

「うん。そういうことなら、本気で行かせてもらうよ!」

 無邪気に言いはなったサファイア騎士は剣に手をかけると同時に静止。


 その数秒後、背中に槍、左前方の地面に突き刺さっている大盾から金髪少女は、大盾に手を掛けた。

 一秒後。

 両者の視界いっぱいに、【READY FIGHT!!】という文字が現れ、刹那消えると、ほぼ同士、サファイア騎士は剣から手を話し、一気に距離を詰めに掛かる。


 スタートと同時に全速力で動けるのは、さすがと言って良いだろう。

 その間、もちろん、お得意の氷柱トラップも【MPゲージ】を二割ほど使い作る。


 対し、金髪少女は、スタートダッシュは、失敗するのを、見越してのことか、大盾を持ち上げるのみで、その場から動こうとしなかった。

 相手を真っ向から迎え撃つつもりか。なんとも男前な戦法のよう……。


 否、違った。大盾を両手で力いっぱい持ち。さらに、その場で一回転。

 そして、その遠心力を乗せ、サファイア騎士目掛け飛ばす。同時に気合いを入れるのか抜くのか、分からない掛け声。

「どっ……こいしょーーー!!!」

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