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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
姫乃と椎菜、本気を出したらすごいんです♪
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一年四組の新担任

 二千三十九年五月二十日の金曜日。

 その日、一年四組のホームルームは荒れた。

 いつも通りチャイムがなっても、席につこうとしない生徒達。


 その中で、ただ二人だけは席に付いている。

 と言っても、そのうちの一人は、めんどくさいから定位置から動こうとしないたけなのだが……。


「あー、めんどくせ……。授業なんてなくなんねぇかな」

 机に項垂れ、シャーペンでコーヒーを惹く動作をしながら、学生の本分を拒否するような発言をした姫乃。これに、隣の席に座り、ノートに予習だか復習だかをまとめている守晴は、正論をぶつけた。


「それが、あたいら学生の課せられた命だからだ」

「なぁ、前から思ってたけど、お前の委員長気質なんなん?」

「ん? 言ってなかったか? あたいがカフェオンライン部に入った時、理事長にお前の手綱をしっかりと三年間握っておけ。と、言われてな」


「はぁ!!!???」

 姫乃の声が教室全体に響き渡る。

 一瞬、どうしたのか。と言わんばかりに、一斉に姫乃と守晴を見る。

 しかし、いつものことなので、即座に各自だべりを再開。


 半秒後には守晴ま話を再開。

「さすれば、あたいと闘ってくれるそうだ」

「買収じゃねえか!? ざけんな!」

 その怒声と共に開く教室の前側の扉。

「ほーら、チャイムなってますよ。ちゃんと席についてくださーい」


 という声を発しながら、教室の中に入ってくる黒ずくめの服が印象的な女性。

 その女性を視認するや、生徒達はどよめき、唖然とする。

 それは、姫乃と守晴も例外出はなかった。


「な、なんで……」

 姫乃が声を溢していると、女性が教卓に到達したようで、そのまま平然に声を発した。

「席に……。ま、良いでしょう。では出席を見まーす――」


 女性は教室を見渡すと、言葉を続ける。

「――橋本さんがまだ来ていないようですね。どなたか理由をご存知な方は……」

 掃除用ロッカーの前に立ったままのグループ。そのうちの一人が手を震わせながら上げる。と、同時に言葉をつまらせながら弱々しい声。


「あ、あの……。橋本さんなら、寝坊したってさっき連絡が……」

 にこりと爽やかな笑みを浮かべた女性。

「そうですか。ありがとうございます。五十嵐さん」


「い、いえ……」

「あー、そう言えば自己紹介がまだでしたね。前の担任の山田教員が辞職しちゃったので、今日から新しい教員が来るまでの間、あなた達の担任を引き受けることとなった神坂詩野です! 短い間だけどよろしくね!」


 人間はあまりにも奇想天外なことが起こったら静まりかえるという性質がある。

 そのことはまさに今の教室を包む空気が物語っている。しかし、それと同時に、その静けさは、嵐が吹き荒れるカウントダウンでもあると言える。


 現に次の瞬間、姫乃が机に手を勢いよく叩き付け、立ち上がることにより、嵐が吹き荒れことになるのだから……。

「ざけんな!」

「はーい。姫乃さーん。座ってくださーい」


「ぁ?」

 姫乃は、前担任が怯み、声も上げられなくなった時と同様の……。いや、それ以上の剣幕で、神坂を睨む。

 しかし、神坂は清々しいほどの冷静な笑みを浮かべながら、平然に言葉を発した。


「はーい。姫乃さーん。殺気をしまってくださーい。これ以上は、チビる人も出てくると思うので」

「「「せんせい!!!?」」」

 神坂の『チビる』というワードに激しく反応する三人。


 その怒声とも恥ずかしさを隠すとも、取れる三つの声により、姫乃は「ケッ! わーったよ……」そっぽを向き剣幕を仕舞い込み、椅子に座る。

「濱田、佐野、緑川」


「「「ひゃい!?」」」

 キョドりながら姫乃の呼び声に答える先ほど大声を出した三人に、バツが悪そうな声。

「あー、悪かったな。そのチビらせてちまって、ほら、さっさとトイレで着替えてこい。替え持ってんのか?」


「「「だからチビってませんよ!!?」」」

 三人はほぼ同時に顔を真っ赤にして声を荒げた。

 それがきっかけとなり、ドッと笑いが巻き起こる。そんなノリが笑いに変えられてしまうのも、女子高の特徴と言えるだろう。


 笑いが落ち着いたのを見計らって、姫乃は頬杖をつきながら姫乃。

「それで? なんで、理事長が直々に担任をやりやがるんだよ?」

「あら、おかしなことを聞くのね。姫乃さん。姫乃さんが恐すぎるから誰もやりたがらないんじゃない。それで、仕方なくわたしがやることになったって訳」


「ま、まじか……」

 両手を広げ肩をすくめる神坂。

「そう、わたしも迷惑しているわ。ま、抜けたのが、結構な古株で年俸が高い割に、実績を上げていなかった教員だったのがせめてもの救いね」


 神坂の言葉を聞いた姫乃は、低く唸るような声で問い質す。

「おい。理事長、まさか、それが狙いで、オレのクラスを任せたんじゃねえだろなです」「さぁ?」


  * * *


 その日の六時間目。

 三紅、姫乃、モカ、椎菜、守晴ら雪那は例のごとく体育館に集められた。

「はい! ということで、今日は各自、自分にあった漕ぎ方を見つけてもらいます」


 椎菜の指示のもと、各自練習をし始めた数十分後。

「ほらほら、見て見てあたしこんなに速く漕げれるようになったよ」

 と、はしゃぐ三紅。どんどん速度を上げて行く。


 それを冷ややかな目で見る姫乃と守晴。守晴は闘争心剥き出しで見つめ、そして、車椅子経験者のモカと、有段者の椎菜は心配そうに見つめる。

「おー、それはすごいな」


 姫乃の心が籠っていない称賛の声に、三紅は素直に喜ぶ。

「でしょ~」

「それで? モカに椎菜、慣れない人が調子に乗ってしまうと、どうなるわけ?」


「ああ、それは――」

 椎菜が説明しようと口を開いた、まさにその時、タイヤの回転速度に手が着いていけなくなり、タイヤの回転に手を捲き込まれる三紅。


 捲き込まれた手は親指がブレーキに挟まり、爪の付け根の皮が抉れる。

「いった~い!」

「――ああなったり」

 三紅は指の付け根を気にしすぎて、猛スピードで走り続ける車椅子を止めるのを忘れ、そのまま、壁に衝突。


 その反動で、車椅子が前にウィーリー。体が放り出され、壁に顔面から激突。

「ああなったりします」

「うむ。参考になった」


 体育祭に向け特訓二回目。三紅の犠牲により、調子に乗らないことを学んだ、姫乃、守晴、雪那だった。


「勝手に変な地の文付け足さないでよ!? 姫乃!!」

「あ、わりわり」

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