暗躍する理事長
「「失礼します!」」
三紅と姫乃が事業を聞くべく職員しつのドアを勢い良く引き開けると、ほぼ同時、中から声が聞こえて来た。
「先輩方は、大学生になっても続けると約束してくれました!! なのに、どうして、カフェ部が廃部になっているんですか!?」
バンッ!!!
と勢い良く机を叩く音で締め括る人影に職員室にいる全員が目を奪われ、三紅と姫乃が入ってきたことに気づいていない。
二人はアイコンタクトを交わした後に、ドアを内側から閉め、早歩きで尚も講義をしている人影の元に向かった。
教頭の机にいる生徒の後ろ姿は、一般的な女子学生と平均の身長であろうか。色白で肩の高さまでの金髪の髪の頭部はびょこんと――いわゆるアホ毛――跳ねている。
そんな生徒をどうにか宥めようと教頭は落ち着いた声音を発する。
「だから、言ってるでしょう? 個人情報ですからお答えできません……。って」
「答えになってません!!」
会話の一方通行と一方通行。しかしその言い合いは唐突に終わりを迎える。
「だったら、カフェ部が何故なくなったのか? はお話頂けますか?」
そう言うのは三紅。教頭も、金髪の学生もようやくこちらに視線を向け「は?」と声をこぼす。
すかさず、姫乃が言葉を紡ぐ。
「教頭先生。あなたの言うことは一理ある。だから、オレ達はカフェ部の先輩のことは詮索しない。しかし、学校としたら、何故、部がなくなったのか? の説明義務はあんじゃないです?」
敬語もどきの口調で問いただす姫乃。
教頭は黒淵眼鏡にハゲ散らかした見た目から、いかにも節度に厳しそうで気難しそうな雰囲気で醸し出している。
なので、姫乃の態度で機嫌を損ねたらどうしようかと少しばかり不安になった三紅であったのだが、それは無駄に終わった。
「ふむ。ようやくまともに話しが、出来る人が来ましたか……。失礼ですが、あなた達名前は?」
「はい。一年、錦織三紅です」
「同じく、一年、白雪姫乃。なんだよ。教頭のくせにに生徒の名前と顔も覚えてないのかよ?」
「同じく、一年の宮坂モカ。白雪姫さんの意見に同感です。教頭先生のくせに生徒の名前と顔も覚えてないなんて……」
姫乃と北欧風の顔立ちでやや青みがかった黒色の瞳が特徴的なモカの鋭い言及に、教頭は眼鏡を曇らせ、苦笑。
「これは手厳しい。言い訳するようですが、私も歳。あるいは、こんな小中高大と四つの学校が合同な学園の教頭じゃなかったら生徒の名前と顔を覚えることなど雑作もないんですがね。さて、話を戻しましょう。カフェ部がなぜなくなったのか? でしたね?」
「はい。そうです」
これ以上、姫乃達が余計なことを言うまえにと、三紅は素早く首肯。
「では、三人揃ったことですし、着いてきなさい」
意味深な言葉と共に、文字通り重い腰を上げ、三人をどこかに案内しようとする教頭。
しかし、そうはいくかと、姫乃とモカが立て続けに反抗する。
「おいおい。まず、こちらの質問に答えるのが先だと思うんですけどね」
「そうです、白雪姫さんの言う通りです。ここで話して下さい。今すぐに!!」
教頭が肩をすくめる。
「これは手厳しい。私もそうしたいのは山々なんですが、『デコボココンビと金髪の外国人の一年が、カフェ部について同時に尋ねてきたらわたしの部屋に通しなさい。わたしからカフェ部のことは話します』と、理事長が……」
理事長を持ち出されたら、ただの学生三人は引き下がるしかなく、先導する教頭の後を無言で着いて行き、理事長室へと入った三人。
教頭はというと、案内するや深々と頭を下げた後に部屋を退室。
モノクロな家具が並び、広い部屋内部に必要最低限なものしかおいていない殺風景なイメージとは裏腹にここの理事長室内部はひどく私的流用されていた。
壁には藤色という奇抜な髪色をした世界を渡り歩くスーパーモデル高坂柚季の記事やポスターのスクラップ。インテリアはこれまた、高坂柚季が手掛けた奇抜なインテリアと、公式ファングッズや、さらには一時期問題にもなった高坂柚季、非公式グッズ――脱着式フィギュアや、盗撮写真集――で埋め尽くされていた。
これでこの部屋の持ち主が、年若い女性だということがなお、驚きだ。それも、高坂柚季にも劣らない容姿の持ち主の、だ。
服装はザ・会社員でも、高坂柚季の着たブランド服でもなく、上は、黒色のフリル付きノースリーブ。下は黒のマチ付きミニスカートに黒のロングブーツ。
そんな黒髪を腰まで伸ばした理事長は、立ったままパソコンを操作すること数分。
ようやく、仕事が一段落したようで、眼鏡を優雅に外した後に、緊張で縮こまっていた三人を一瞥した。
ニコッとえみを浮かべ刹那、声。
「ごめん、ごめん。呼び出したうえに待たせちゃって……」
「い、いえ……」
三紅が声をなんとか振り絞り喉から押し出しながらかぶりを小さく振る。
教頭の前では、強気だった筈の姫乃とモカは、今や見る陰もなく縮こまってしまっている。
さっき知り合ったばかりのモカはともかく、姫乃はさっきの教頭との会話から分かるように、一応敬語もどきは使えど、そこに上下関係などほぼない。
なのに、そんな姫乃が一言も言えずにいる。それほどまでにこの理事長には何か底知れない空気がある。
その様な思考を巡らした三紅は、生唾を音を立てながら、喉に流し込む。
そんな状態の三人にもう一度ニコッと笑みを浮かべる理事長。
「そんなに緊張しなくていいよ? っていっても無理か。んー、じゃ、本題に入る前にこちらの自己紹介を……」
「い、いえ、神坂理事長あなたのことは存じ上げてます」
声を震わせながらなんとか言語化に成功する三紅に、理事長の神坂はイタズラな笑みで応じる。
「そう? なら、これは知ってる? わたしがこの学園の理事長に着任したのはコネだってこと……」
「「「ッ!?」」」
思いもよらない、唐突な爆弾発言で三人はほぼ同時に絶句。その反応を楽しんだ神坂は可愛く舌を出す。
「ほら、知らない。わたしね。社長代理とはちょこっとした知り合いで、ある程度のわがままは聞いて貰えるんだよね。ま、それだけじゃなく、会社に対する貢献度もそこそこあるから、役員達はわたしに頭が上がらないってわけ……」
「いったい、あんたなにもんなんです?」
姫乃が、ようやく神坂に噛みつく。
「さぁ? それより、緊張は解けたみたいだけど? 姫乃さん、三紅さんに宮坂さん。ん。やっぱり、ショック療法が一番効率良いか……」
くすっと笑いで締め括る神坂。
対し、モカはどうでもいいことに突っ込みを入れる。
「待ってください! 白雪姫さんと、錦織さんは下の名前なのに、なんであたしだけ名字なんです!?」
「そこかよ……」
「あら、仕方ないじゃない? 三紅さんと姫乃さんは名字で呼ばれるの嫌かるって聞いてるから、ね?」
ウインクを三紅と姫乃に飛ばす神坂。
「あんた、ほんとになにもんなんです?」
「さぁ?」
姫乃が再度噛みつくも、神坂がそれを軽くあしらう。それで毒気が抜かれた姫乃はため息を漏らす。
「……。もう良い。それより、オレ達に話したいことがあったんじゃないです?」
「そうそう。あまり、時間もないし、パパッと話しを進めましょうか。わたし忙しいから」
「じゃ、じゃぁ、今までのぐだぐだのやり取りはいったい……」
「無論。あなた達の緊張をほぐすための時間――」
三紅が呟いたことまで真摯に答える神坂。
三紅当人はと言うと、未だ底が知れない神坂の地雷を踏んでしまったのでは。と、一気に背筋が凍り付く。
「大丈夫。そんなに緊張しなくていいから。わたし、ちょっとやそっとじゃ、怒らないから、安心して」
「は、はい」
三紅の返事に再度、微笑を浮かべると、神坂は今度こそ本題――カフェ部について――に入った。
「まず、あなた達三人を読んだ理由はね。ま、率直的に言えば、頼まれたから……」
「頼まれたから、ですか?」
三紅が小さく呟くと、神坂がそれを首肯しながら言葉を紡ぐ。
「二月に廃部届けを持って来た元、カフェ部の部員達に、もし、あなた達三人全員が入学式初日にカフェ部のことに着いて尋ねて来たら、全て包み隠さず話すこと。それから、『約束を守れなくてごめんね』と伝えてってね」
今回はここまでです♪
次回は昼1時更新です♪
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