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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
アザナの四人、ご来店になりました♪
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《KAMAAGE》エキシビションマッチ~第二幕

「ん?」「む?」

 【ヘカテー】と、【アデス】が、乾いた土の感触を足の裏で実感し、訝しむ。と、しばらくして二人は何かを結論付けたかのように、静かに微笑む。

 そんな二人の動作を待っていたのか、


「お待たせ……」

 と静かに苦笑したのは幼女。仮想空間でも分かるほどの闘気を静かに燃やしている。

 それに【微笑みの聖剣】は満面の笑みで――こちらは業火のように闘気を燃やしながら――、首を軽く振りながら答える。


「ううん。こっちこそごめんね。急にこんなことをお願いして、さ。それより、こんな早く集めてくれてありがと」

「ううん。そんなこと……。っていうか、【ヘカテー】さんも、【アデス】も、勝手に集まっただけどね」

 藤色の少女の称賛に幼女は、謙遜するように、頬をポリポリかきながら答えた。


「じゃ、ルールを説明するね。まず、時間は五分。つまり、タイムカウントは【300】からスタート。あとは、視界左上に自分の【HPバー】と【MPバー】その下に小さく連なるように表示されるのが味方の【HPバー】と【MPバー】。相手の【HPバー】と【MPバー】は、右端上部には表示されず、それぞれ頭上に表示されるよ。因みに、味方の【HPバー】と【MPバー】も頭上に表示されるよ。あとはほぼ同じだよ」


「うん、わかった。じゃ、早速始めよ!」

「うん。いいよ!」

 その言葉を交わし終えた後に、二人の戦闘狂は、短剣と剣にそれぞれ手を掛ける。

 既に、もう一人の戦闘狂【アデス】と、謎の人物【絶対零度の殺神】は既に無言で、武器に手を掛けている。


 その様子を一瞥したキザな青年と、天使がそのまま現界したかのように思るほどの愛くるしさ満天の紅髪の女子は、ほぼ同時にため息をつく。

「……。その前に一ついいかい?」

「あー。うん。あたしからも一つ伝えることがあるから、さ……」


「そうかい。それじゃぁ、ここはレディファーストと行こう。そちらからどうぞ」

 天使の微笑みとなり、頷く【紅の天使】。

「ありがと!」

「君は少々あざとすぎやしないか……?」


 青年の苦笑に、天使はなんのことだか。と言う顔をするも、それを口にすることなく、変わりに伝えることを発する。

「でね。あたしから伝えることは、この《KAMAAGE》はリアルな対戦を追及するゲームだから、味方の攻撃も当たるし、魔法も当たるから気をつけて、ということ。あとは、三人はもう気がついているみたいだから、これは試合が終わってから、公式ホームページで発表するね! あたしからは以上だよ。そっちの聞きたいことはなーに?」


「ああ、僕の聞きたかったことは、今さっき君の口から聞けたからね……」

「そう、じゃぁ……」

「ああ、じゃぁ……」

 二人は互いの武器にそれぞれ手を延ばす。そして――


「始めようか?」「始めようか!」

 ――二人は同時に、言い切り、刹那、武器に手を掛けた。

 そして、その半拍後。

 六人の視界と、円形闘技場の上空に、【READY FIGHT!!】という文字が同時に出現。


 ――フルダイブ型ゲーム機【ハートバディギア】の最大のヒット作と言っても過言ではない。《KAMAAGE》がリリースして早一年。

 今や、日本だけじゃなく世界が注目し、近々、世界大会が開かれるのではないか。と期待されている《KAMAAGE》。


 その新たなるステージを告げる、エキシビションマッチ、聖剣・殺神・天使VS幼女・青年・女子の三百秒間の世紀の一戦、ここに開幕かいまく――

 視界いっぱいの文字が消えて、最初に飛び出したのは、青年だった。


 この開始早々のスタートダッシュが出来るのも、並外れた費やしたゲーム時間の賜物だろう。

 その半秒遅れで桃色の髪の女子も飛び出す。

 青年より強い幼女とこのゲームの運営側の人間も当然、スタートダッシュば出来なくもないが、聖剣と殺神は微動駄にせず、挑戦者の動きを観察しているようだ。


 残りの幼女と天使はと言うと、動きはしたが、後退した。

 その光景を見た聖剣と殺神は、呑気に言葉を交わす余裕さを見せていた。

「へぇ、意外……。ちゃんと連携してくるなんて。ハァ……。面倒なことになりそう……」


「うん。だね。ボクもちょっとビックリ! これは思ったよりは楽しめるかも?」

 二人が別々の感情で称賛していると、背後から怒声にならないほど、可愛いげのある怒声が聞こえてきた。


「ほら! 二人とも、油断しない! もっと、機を引き締めて! それと、ゆ……。じゃなくて、聖剣! これはゲームだから、最初からフルスロットルで行ったら、すぐ魔力切れ起こすからね!!」


「わかってるわ。私の天使」

 天使は殺神の返答に、顔を赤らめ、

「だから、それ、恥ずかしいから止めてって言ってるじゃん!?」

「ハハハ……。本当に相変わらず仲が良いね。二人とも。ボクもわか――」


「じゃ、あたいは手筈通り、【絶対零度の殺神】を惹き付けておく。その間に、【紅蓮の堕天使】と、【微笑みの狂剣】をやっつけて……。悔しいけど、持って三分だから」

 そんな声を聞き、耳がピクッ、と動いた聖剣。聖剣の禁忌に触れたことに、たった一人しか気付いていない。


 気が付いた一人は嘆息。その瞬間、彼女の真横にいた筈の聖剣が一瞬にして消える。

 その敵陣の変化の半秒前、青年は真横を走る女子に顔を向けながら、キザに返答しようと口を開いていた。


「三分か……。上出来だ。では頼んだ、よっ!?」

 苦笑で締め括り、完全に振り向くと、青年は驚愕した。

 ほんの半秒前まで隣を走っていた女子が遥か後方に飛ばされており、今、彼の真横には藤色の翅を展開し、空中で突きの体勢で静止している、聖剣の姿。


 青年がそれを視認した刹那。これまでの子犬のように取りつきやすく、人懐っこい声から一変、聖剣のドスの聞いた圧のある声。

「――あれぇ? 【紅の天使】が忠告しなかったっけ? ボクはその名前が、大っっっ嫌い何だよね……。だからボクをその名前で呼ばないようにって……」


「って、言った側から!?」

 天使の突っ込み。

 その声で青年は皮肉にも、正常に戻り、ある考えが現実のものとなったことを実感し、思わず苦笑。


「なるほど……。獰猛な犬。まさに狂犬。これは微笑みの狂剣と言うのにピッタリだ」

 飛ばされた女子が、空中で、体勢を整え、着地した後にそう呟いた。

「だーかーらー! ボクをその名で呼ぶなーー!!!」


 聖剣は再び、全身全霊の突進を開始。そん中、青年と女子は、短くアイコンタクトを交わすと、青年は前へと走り込みを開始。

 作戦とは違うが、こうして二対二に持ち込むことは出来た。のは良いのだが……。問題はここからだった。


 青年が殺神へと近づくと剣を抜刀。殺神が槍を構える。も、青年は真横を素通り。

 殺神はひらりと、身を翻し、青年を追う。

「やっぱり、あなた達の狙いは私の天使。でも、させない。私が残っている限り、私の天使は傷付けさせない。背中ががら空き……」


 殺神の槍が、青年の背中に迫る。しかし、青年はどこか安堵の表情を浮かべていた――ああ、敵なら何をしてくるかわからないけど、味方なら手に取るように分かる。だから、君になら、安心して背中を預けられる――その瞬間、青年の行く一歩先に魔方陣が浮かび上がった。


 その魔方陣をなんの躊躇もなく踏むとほぼ同時。下から冷気が伝わる。いや、ただの冷気じゃない。例えるなら、相手を殺そうとする冷たさを纏う極寒の冷気。

 否。

 そう、これは、例えるなら、相手を生かそうとする、そんな思いやりの込められた、暖かみのある冷気。


 その冷気を噛みしめつつ、氷の土台柱が物凄い勢いで生え、青年はそれに乗り、急上昇。背中に迫った槍を回避することに成功する。獲物を失った槍はというと、突如生えた氷の柱に突き刺さる。

 その槍の衝撃に氷の柱は瞬間に亀裂が入り、刹那には冷気と甲高い音を撒き散らしながら瓦解。


 しかし、青年はそれより、僅か先に氷の柱からジャンプ。それを追おうとした殺神だが、後ろから物凄い速度で近づく、軽い足音に気が付き、振り返る。

 その動作の次の瞬間、


「セイヤッ!」

 と、軽い掛け声と共に短剣で斬り付けに掛かる幼女。その奇襲の一撃は、槍を手早く持ち変え、持ち柄のところで殺神により防御されてしまう。


 が、これにより、殺神の追撃からを抜けることが出来た青年は、天使までの距離を詰めんと過負荷ギリギリまで速度を上げる。

 だが、その次の瞬間、視界の隅に、片膝と片手を地面に付き速度を殺す様にしている幼女が入った。そのコンマ一秒後には、反対の視界の隅に入るは、靡いている蒼い髪。

「シィッ!」


 青年は短い気合いの声をあげ、咄嗟の判断で、方足で急ブレーキを掛け、その足を軸に回転。剣を振り上げる。

 それと同時に、胸へと迫っていた青い半透明な槍を上へと弾く。


 あと、コンマ一秒でも、反応が遅かったら、槍が青年の胸――心臓――に突き刺さり、青年は早々と戦線を離脱してしまっていただろう。

 【ヘカテー】は、いや、雪那は内心、驚きと戸惑い、果たして勝てるのか、という絶望感を一瞬だけ抱いたものの、今の攻撃にも対応出来たこともあり、自信により負の感情を無理やり上書きする。


「それに、僕が勝てなくても、誰かが勝てばいい……」

 青年は、自分に言い聞かせるように、呟きながら、凍てつくほどの殺意を放っている、殺神を凝視し続けていた。

「ね? 言ったでしょ? 私が残っている限り、私の天使きは指一本たりとも、触れさせないって……」

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