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ようこそ! カフェオンライン部へ!  作者: 石山 カイリ
カフェ部は昨年廃部になりました♪
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昨年のカフェ部~inカフェ部

 時は少し遡り、二千三十八年十月十日。

 昨年の学校見学。

 毎年のように遠方からくる人達の事も考慮し三連休の中日に宛がわれたこの学校見学。

 そこに、三紅と姫乃もいた。


 二年前まではこの学校見学の日は、全部活は休みではあったが、理事長が変わってからは『ん。通常の部活風景も見て貰った方が想像つきやすいんじゃない?』等と言う鶴の一声で去年から希望部だけ事前に提出していれば普通に部活をやっていても言いようだ。


 しかし、そのため、案内役の先生が足りなくなると言う問題が発生した。

 そこで、駆り出されたのは、生徒会メンバーや、報道部員達である。

 報道部員達は学内新聞を作っているため、様々な部活に度々訪れることがある。その間、節度のある態度で取材しており、開部当時から今まで問題起こしたことがない。


 ついでに言うと、どこで調べたのか、時事問題をどこのメディアより早く出していることも少なくない。その事が買われ大手週刊誌の人達が直接スカウト。そのままトントン拍子で就職内定が決まった人もしばしばいるらしい。


 以上の理由からこの学校では生徒会、風紀委員と同等に報道部員達に対する先生の信頼が厚いのだ。

「はい! と言うことで、本日E班の担当を勤めさせて貰います。高等部三年。報道部部長。風見もえと……」

「「「ゆかいな報道部員達です!」」」

 風見の一歩後ろに立つ報道部員達、三人が息のあった言葉を続けると、一拍置いて、


「「「「よろしくお願い致します!!!」」」」

 と、もえを含む四人がこれまた息のあった深々とお辞儀をして来た。

 数秒間に渡り、たっぷりと頭を下げ終わると、風見は言葉を続ける。


「生徒会や風紀委員がご案内する班に比べますと至らない点が多々あると思いますが、精一杯勤めていく所存ですので皆様も暖かく見守って頂けたら幸いです。また、なにか、ご不明な点、もしくは体調が急変したお客様がいらしゃった場合、最寄りの報道部員にお申し出くださいませ。尚、予め断っておきますが、痴漢行為等の犯罪行為を見つけましたら、即刻手荒く対処致しますので、その際はお見苦しいところを見せてしまいます。ご理解願います。では、早速参りましょう」


 風見が長々と前置きの挨拶をし終わったと共に、身を反転させ、歩き出すと、三人の自称、ゆかいな報道部員達は邪魔にならないように、すぐさまバラける。

 三紅と姫乃は動き出すE班の最後尾にいた。


 一班を四十人前後で構成された風見率いるE班は、風見の流石とも思える流暢な説明を受けながら、教室棟、部室棟と見学が終わり、体育館の見学に始まった頃には、三紅も姫乃も飽きてしまっていた。

 ところがその事が解っていたかのように、風見は口角を上げた。


「はい! 飽きてきた方もいるようなので、体育館では特別にバスケ部の方達とワンオンワンを……」

 風見が言い終わる前にバッと、手を上げる三紅と姫乃。それに気づいた風見は苦笑。

「良いですね! では、そこの二人。前に出てきてください!」


 三紅と姫乃は、バスケ部とのワンオンワンを軽く済ませ――もちろん、やる気が無かったので負けた――いよいよ暇になって来たので、視線を見交わし、渾身の演技で体調不良を装う。

 すると、見事報道部員に「保健室に案内します」と言われ、二人は見事見学会から外れることに成功を納めた。


 と、ここまでは良かった、案内されたのは保健室ではなく、購買棟一階にある食堂横の《カフェ部》という名の部室札がついた部屋に案内された。

「へ?」

「えっと……」


 どういう状況なのか困惑していると、案内してくれた報道部員は、説明をするでもなく、「それでは、時間になったら迎えに来ますので……」とだけ言い残し、すたすたと歩いていく。

 どうしたら良いものかと固まる二人。しかし、それは次の瞬間、気まずい感情が込み上げてくると共に解消されることとなった。


「あら、いらっしゃい。あなた達も仮病人ね?」

 唐突にそう聞かれ肩を、びくつかせる三紅と姫乃。ぎこちない動作で振り向く。

 目に飛び込んできたのは、茶色のチェックワンピースを来た――おそらくユニフォーム――高校生と、高校生とは到底思えない大人びた印象の女性――おそらく隣接する女子大学生――が三名ずつ。


 それと、四十人は座れるであろう、オシャレなカフェさながらのイスとテーブル、カウンター。それ等にまばらに座り、ケーキやコーヒーを嗜んでいる多種多様な制服を着た女子学生――おそらく三紅と姫乃のように仮病で班をぬけようとした――約十名。


 その事を視認したのとほぼ同時、目の前に立っているユニフォームを着た高校生が微笑混じりの声で続ける。

「大丈夫。あたし達は去年から生徒会……。いや、主に風紀委員と報道員の指示で仮病人を匿っているだけ。ここの保険医さん。相当優秀だから、すぐに仮病だとバレるんだよ? 知らなかったでしょ?」


「は、はぁ。どもです」

 三紅が咄嗟にそう返すと、高校生はこちらにニコッと微笑む。振り向き様に声。

「ま、好きなとこ座ってよ。今日はプレオープンみたいなものだからケーキは一種類しかないけど。飲み物はある程度揃えてあるからさ……」


 言われるがまま近くのテーブル席に着席。

 その数秒後、お盆を片手におそらく大学生であろうウェイターがすたすた歩いてきた。

「お待たせしました。こちら本日のスペシャルケーキ【仮病したね♪ ケーキ】でございます」


 目の前に配膳されたケーキはチョコレートケーキで、ホワイトチョコのプレートに、《仮病したね♪》とチョコペンで書かれていた。

 姫乃と視線を見交わせひきつった笑いを見せるも、すぐさま大学生のウェイターが、軽い咳払いをした後に優しい声音で謝る。


「……。ごめんなさいね。うちの部。少々いたずらが過ぎるとこがあって……。でも、これも、あなた達の緊張を解くために一生懸命考えたことだから、身構えないで貰えたら助かる。かな?」

 肩をすくめながら言う大学生ウェイター。


 それならばと三紅と姫乃はほぼ同時に会釈しながら、お礼の言葉を口にし終える。

 と、大学生ウェイターは接客モードに戻ったのか、

「それでは、飲み物が決まりましたらお呼び下さい」

 洗練されたお辞儀を見せた後に、すたすたとどこかへ向かって行く。


 三十分後。

 三紅はアイスココアを、姫乃はグアテマラコーヒーのブラックをそれぞれケーキと共に堪能し終え、それぞれ、気になる先輩を捕まえ質問責めにしていた。

「あの、ここって。高校の部活ですよね?」


 やんわりとした質問で三紅は、なぜ大学生が混じっているのか。という疑問を最初に声をかけてくれた高校生ウェイターにぶつけた。

 すると、その疑問の真意を読み取ってくれたようで、高校生ウェイターは苦笑。


「ああ……。それは、ここの棟は大学との共同で使っていることもあってさ。その為、ここにある部も大学生と共同にすべきって無茶苦茶な理由を通したOBがいたんだってさ。それで、この部は大学と合同に切り盛りしてるって言うわけ。ここにいる先輩方は高一からカフェ部をやっている結構な古株らしいよ?」


「らしい、と言いますと?」

「いやさ、先輩方、全員大学四年なんだよね。あたし達高校三年で全員、高校から転入して来たからさ先輩方の高校時代知らないって訳」

「な、なるほど……。あ、あの。先輩達は大学はここの大学に進学するんですか?」


「んー、カフェ部も継続させて行きたいと思っているし。一応、そのつもりだけど。どうしたの?」

「い、いえ。ただ、私。カフェ部が気に入って、入部したいな。と思いまして……。それで、先輩方が他の大学に進学して、ここがなくなったらどうしようって……」


「ん。そっか。じゃあ、来年。楽しみに待ってるよ。ただ、正直、遊び感覚で入るのはオススメしないよ。ここの部のお客さんは全員顔見知りだけど、仕事量ハードだし。その分お金貰えるかって言われると、それは部活だから、貰えない。唯一の楽しみは浮いた部費と言う名の売上で長期休暇の旅行ぐらいで……」


「はい! 遊びなんかじゃありません!!」

 三紅が目を輝かせながらやや食いぎみで言うと、高校生ウェイターは満面の笑みで三紅の頭を優しく叩いた。

「ん。じゃ、楽しみにしてるよ!」


 この後、迎えに来たと思われた風見達に「仮病を使ったこと秘密にして欲しかったらカフェ部のメンバーとして、私達を労いなさい」という、半ば脅しじみたことを言われ、三紅はホールスタッフとして、姫乃はいつの間にかコーヒーを淹れてた先輩と仲良くなり、キッチンスタッフとして、夕方までコキ使われることになった。


 しかし、カフェ部の雰囲気に一目惚れしてしまった三紅は、やはりこの部に入りたいと思った。

 体験見学が終わり、姫乃にもその事を話したら、先輩が淹れたコーヒーがよほど気に入ったのか、昔から喫茶店を開くことを夢見ていることもあり、姫乃もまた同意件であったようだ。


  * * *


「なのに、どうして、カフェ部が廃部になっているんですか!?」

 時は戻り、現在。職員室。

 姫乃と三紅が講義するべく職員室のドアを引き開けると、その様な声が部屋奥から木霊して来た。

 次回は朝7時更新です♪

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